ネットTAM


3

アートをビジネスにするということを問い続ける

アートにかかわる人たちがアートを続けるためにどのような方法があるのか? ネットTAMでは今回「起業」に着目し、実際に会社を興し、さまざまな事業形態でアートを持続させている方々に、"アートの興し方"についてお話をうかがい、ヒントを探ります。

第3回は「創造力に国境なんてない」というビジョンとともに、世界中の現代アート作品を出品・購入できるグローバルマーケットプレイス「TRiCERA ART」を運営する株式会社TRiCERA CEO 井口 泰さん。言葉や距離の壁を取り払い、世界各地で創造される作品を全世界へと届ける仕組みをつくり上げ、アーティストのキャリア形成をサポートされています。同社のミッションは「アーティストの世界進出をサポートする」、「アーティストのキャリア形成を育むプラットフォームへ」。グローバルにアート市場の活性化を目指しています。

株式会社TRiCERA
本社所在地: 東京都港区西麻布4-2-4 The Wall 3F
設立(創業)年:2018年11月
資本金:333,000,000円
従業員数:正社員 8名
主な事業:現代アートの購入・販売が可能なグローバルプラットフォームTRiCERA ART、現代アートの二次流通市場であるResale、アートギャラリーの9s Galleryの運営
※2024年4月1日現在

現在、株式会社TRiCERAで実施しているアートによる事業とは

株式会社TRiCERAは3つの事業で構成されています。126カ国以上の作家約9,000人が10万点もの作品を発表・販売できるマーケットプレイス。コレクターが、次のコレクターにバトンをパスするように販売できるResaleのマッチングサービス、最後に若手作家の成長や展示活動などを支援するギャラリー事業「9s Gallery by TRiCERA」@西麻布。TRiCERAはチャネルを拡大し、流動性を増やすことでマーケットの活性化の拡張を目指しています。日本だけでも4万人以上いるといわれるアーティストのキャリア形成に上記が欠かせないと考えています。

なぜ起業したのか?

私の原体験として、幼少期の子役時代に感じた「芸術活動を続けることの難しさ」に、支援する側でチャレンジしたかったというものが大きいです。それまでは外資系有名企業などでキャリアを積んでおりましたが、私が培った経験を活かして、アーティストおよびアート業界の一助となれるのではないか? と考えました。また、30歳を過ぎてから新しい挑戦を探していたのもありますし、起業する数カ月前に生まれた私の第一子に、挑戦しているかっこいい姿を父親として見せていきたいと考えたのもあります。

起業したメリットとデメリット、そして今抱えている課題とは

メリットとしては、自分の挑戦したい分野に携われるので毎日がよくも悪くも充実します。これまでイチ企業の歯車でしかなかった“サラリーマン”としての感覚からは別世界です。日曜日の夜に憂鬱になることなんて一切なくなります(笑)

デメリットとしては、これはスタートアップあるあるでもありますが、とにかくプレッシャー(成長に対して)を浴び続け、かつハードシングスが起きる中で、前を向き続けないといけないことですかね。悪いことでもなく、人間的にもビジネスパーソンとしても成長できますが、過酷な環境を楽しめる人でないと厳しいかもしれないですね。Work Life Balanceという言葉自体もその存在を疑うようになります(苦笑)どちらかというとWork as Lifeですね。

2023年11月 福岡にて開催されたB Dash Camp での登壇の様子

これからやってみたいこと

今後、TRiCERAは海外拠点の設立やアジアのアートフェアへの参加をしていくことで、より認知と影響力を得ていこうと考えています。人員の規模も増強します。また、日本位においてもマーケットの健全化を進めていきたいと考えています。弊社で2024年2月に行った100/10などの自社イベントにも力を入れて若手アーティストの発掘からプロモーション支援も力を入れていきたいです。

これからアートとかかわり続けるためにどうするか?

欧米ではアートとビジネスが両立するかたちとしてマーケットが形成されています。アカデミア方面でかかわり続けるかたちも素晴らしいと思います。一方で、いかに“サステナブル”なかたちを確立するのか? ビジネスモデルを形成していくのか? アートをビジネスにするということはどういうことなのか? 私は自分自身に問い続けています。

関連リンク

アートとかかわり続けるために、なぜ起業したか? 目次

1
コロナ禍から立ち上げた文化芸術界に特化したジョブフェア
2
アートに触れるきっかけを圧倒的につくるミューラル(壁画)
3
アートをビジネスにするということを問い続ける
この記事をシェアする: