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徒然(つれづれ)なるままに



 毎年10、11月というのは、私たちの業界は目が回るほど忙しい季節。「芸術の秋」、「コンサートシーズンたけなわ」といえばカッコいいですが、いったいどうしてこんなにコンサートがあるの?と業界人が自問自答する時期でもあります。なんでこんなに一日、いっときに集中するのでしょうかね?「お客様が減っている」と日ごろ実感しながらも、この時期だけは別物なのかなぁと首を傾げざるを得ない不思議な季節です。

 今年も11月は、ベルリン・フィルとウィーン・フィルが同時期に日本でコンサートを開催。その直前にはアムステルダムのコンセルトヘボウ管弦楽団も来日。世界ビッグ5のうちの3つが同時期に東京にいる!という状態。その他にもオーケストラ、オペラ、ソリスト目白押しです。こうなると、コンサートや、外来アーティストとの打ち合わせ・・・と私自身も大わらわ。行きたいコンサートと行かなくちゃいけないコンサート。それに自分の企画のリハーサルと本番。音楽浸けの日々で耳も相当疲労します。そんな中で抜群の存在感を見せたのが、ヤンソンス指揮するロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏会(11月7日サントリーホール)。現代音楽の牙城で、同時にオリジナル楽器の一大拠点でもあるアムステルダムは、まさに音楽のおもちゃ箱のような都市。メッカです。そんな街にあって、コンセルトヘボウのオーケストラは今回、まさに自分たちの歴史と伝統と格式に100%の自信を持ち、微動だにしない信念に基づく、自分たちの美学を披露してくれました。ビロードのように美しいこのオケ固有の音、確信に満ちた解釈、はちきれんばかりに充実した演奏。ひたすら圧倒されました。「自分たちの存在意義がここにあり」というこれほどの自信と確信はどこからくるのでしょうか?ヤンソンスとの相性もばっちし。相乗効果で新たな最盛期を迎えることでしょう。これは歴史を刻んで来たものだけがもつ伝統の強みなのか??・・・オーケストラにこれだけのオーラを感じたのは久々でした。

 柔らかい秋の日差しの中、この日は充実感いっぱいの気分でホールを後にして新宿へ。ヴィスコンティの「山猫」をはしごして観ました。学生の時に観て以来久々の鑑賞でしたが、自分の視点の変化がとても面白かったです。ここに描かれた「黄昏のヨーロッパ」はしたたかに生きている。それも凄い生命力を持って。全然たそがれてなどはいないじゃんと昼間のコンサートと重ね合わせ、思い巡りました。今日は最高のワインが似合うんだけど!と、安いワインを口にしながらしたり顔の夜。とても贅沢な休日を過ごしました。う〜ん、満足。思い出すだけで快感!

 こんな時期、東京にいて本当に悩むというか辛いのが、街中の音の洪水ですね。なんとか、もう少し静かにならないですかねぇ。駅のアナウンスからショップの中、飲食店までどこに行っても音にあふれている。おかしいなと思うのは、お店に流れているBGM。あれってお店の人の退屈しのぎなのかなぁなんて思っちゃうくらい、扱っている商品とあわないこともしばしばですよね。外国の演奏家もよく言いますが、ホントに耳が疲れます。飛行機や新幹線の発する音すらシャットアウトして快適に音楽が聴けるという、BOSE社が開発した凄いヘッドホンがあるらしいのですが、だれが試した方いますか?使用感を教えてください。いま興味を持っています。騒音、雑音から逃げたい...!そんな私が最近逃げ場にしているのがゴルフ場。静寂感がとても心地よいです。軽い運動も手伝って、からだを慰めてくれます。8年ぶりに再開したのですが、今度は「スコア」という新たな悩みが少々発生(笑)。

 今月、私のいるトッパンホールでは、アルタイの国民的英雄、ボロット・バイルシェフと巻上公一さんの共演というコンサートがありました。せっかく2日間もやっていたのに、私はちらっと覗いただけで、別の行かなくてはいけないコンサートとアーティストとの打ち合わせにホールを後にしたけど、彼もすごい才能でした。全部聴きたかったな、ウーン残念。そう、この仕事をしていてつくづく思うのは、この世界には、時に頭抜けた才能というのがあらわれるんですよね。彼らとの出会いは大きな楽しみです。12月3日にトッパンホールでリサイタルをするチェロのジャン=ギアン・ケラスもその一人。トッパンには早くも4回目の登場となります。今回は、「1970年代―4人の作曲家、そして冷戦」というサブタイトルで、70年代の世界を回顧してくれます。広くアートを好きな方へお薦めのコンサートです。「現代音楽なんて」という固定観念を取り払って、彼のしなやかな感性と卓越した技巧を堪能してください。彼の感性がもっとも見事に表現される世界が、この辺の曲なんですから。彼がやりたい、彼の気にいっていることを活かすのが大切です。それが出会いの始まりですよね。こんなすごい才能、若いときからチェックしていたら絶対面白いのに、なぜかまだチケットがあります。人って不思議ですねぇ。もう少し時が経ってヨー・ヨー・マのようになっちゃったら、「チケットが取れない」って大騒ぎするんでしょうね、きっと。

 最後に、名古屋のしらかわホールが10周年を迎え、21・22日の両日バースデーコンサートを開催しました。メセナ活動としてホールを運営する先輩ホールでもありますし、室内楽ホールとして名古屋でひたすらがんばっている同士でもありますが、4、5年ぶりに伺った今回のコンサートの充実ぶりにはびっくり!地元出身のヴァイオリニスト島田真千子を企画者に迎え、今井信子、豊嶋泰嗣らと若い日本人たちが出演したコンサートでしたが、4日間の朝から晩までリハーサルを好きなだけやって作り上げたアンサンブルは、「音楽をしたい!音楽好き!楽しい!」という雰囲気が出演者から溢れていて、とてもフレッシュな感覚のコンサートでした。日本の才能も楽しみですよね、人材豊富ですから。プロデューサーとして羨ましかったのは、泊り込みのリハーサル。東京のホールではなかなかこれできないんですよね。レッスンが入ったり、学校の会議が入ったり、別のコンサートのリハーサルが入ったりと、ひとつのことに集中しきれないというか、アーティストたちを放っておいてくれない状況がいまの東京にあります。これは大きな問題です!これを超えないといけない!なんて思いを新たにしながら名古屋を後にしました。ケラスとの再会ももうすぐ。いっぱいオーラを吸い取って、新たな企画をひねり出し、お客様に楽しんでいただきたいものです。

(2004年12月1日)

今後の予定

■トッパンホール主催公演
2004年

12/3日(金) 19:00
「ジャン=ギアン・ケラス 無伴奏チェロ リサイタル 1970年代 — 4人の作曲家、そして冷戦」
ジャン=ギアン・ケラス(チェロ)/ 御喜美江(アコーディオン)

12/8(水)
〈トッパンホール エスポワールシリーズ 4〉「岡田 将 Vol.1 ―リストへの憧憬」
岡田 将(ピアノ)

12/14(火) 12:15
〈ランチタイム コンサート Vol.14〉「阿部 麿(ホルン) 20世紀のチェコに光をあてて」
阿部 麿(ホルン)/ 遠藤直子(ピアノ)

12/23(木・祝) 19:00
〈トッパンホール クリスマスコンサート〉「矢部達哉+古川展生+田部京子のクリスマス U+FF5E ~パリに遊ぶU+FF5E ~」
矢部達哉(ヴァイオリン)/ 古川展生(チェロ)/ 田部京子(ピアノ)/ 西山まりえ(チェンバロ)

2005年

1/7(金) 19:00
〈トッパンホール ニューイヤーコンサート〉「大山平一郎指揮 チェンバー・オーケストラ 宮本文昭(オーボエ) / 豊嶋泰嗣(ヴァイオリン)」
大山平一郎(指揮) / チェンバー・オーケストラ / 宮本文昭(オーボエ) / 豊嶋泰嗣(ヴァイオリン)

1/22(土) 18:00
〈エスポワール スペシャル 2〉「ルノー・カプソン ヴァイオリン リサイタル」
ルノー・カプソン(ヴァイオリン) / パウル・グルダ(ピアノ)

1/26(水) 19:00
〈シリーズ〈ブラームスをめぐって〉第3夜〉「堀米ゆず子 ―無伴奏,デュオ,そして室内楽」
堀米ゆず子(ヴァイオリン) / 四戸世紀(クラリネット) / 堀米もも子(ヴァイオリン) / 川本嘉子(ヴィオラ) / 木越 洋(チェロ) / 酒井 茜(ピアノ)

1/29(土) 15:00
「鈴木雅明 J.S.バッハ平均律クラヴィーア曲集 第2巻 全曲」
鈴木雅明(チェンバロ)

2/8(火) 12:15 (受付開始日12/14)
〈ランチタイム コンサート Vol.15〉「半田美和子(ソプラノ) きらめく愛の歌」
半田美和子(ソプラノ)

2/14(月) 19:00
「クリスチャン・リンドバーグ ―超絶のトロンボーン」
クリスチャン・リンドバーグ

関連リンク

次回執筆者

バトンタッチメッセージ

熊倉純子様

西巻です。お元気ですか?今年の芸大の講義もすべて終了してしまいました。なかなか楽しかったですが、熊さんとは一度もお会いできなかったですね。これはちょっと誤算。いろいろと相談したいこともあったのですが…。そういえば、今年こそ…と思っていた「取手アートプロジェクト」も行けず仕舞いでした。そんなこんなで、TAMが終わって会う機会も極端に減った気がします。忙しいということは、きっといいことなのだろうけど、たまにはゆっくり飲みましょう。次回のコラムよろしくお願いします。では、また。
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