ネットTAM

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大阪セッション

まちとアートの練習問題

―芸術化する現場のフィールドワーク
開催日: 2004年1月 24・25日
開催地域: 大阪
会場: 應典院
ジャンル: 総合
参加者数: 114人
コーディネーター: 應典院寺町倶楽部  秋田光彦

お寺でTAMを開催したのには、訳がある。仏教は、すべての関係性に気づき(縁起)、関係性に生きる(慈悲)教えである。アーツと社会の架橋の行方に、ともに生きて、支えあうような関係性の成熟を見て取る。それが、講座の底辺に秘められた私たちの願いであった。

2日間の大部分は、空堀、新世界、寺町という大阪の3つのまちについて、それを識り、歩き、学び、分かち合う、という参加型のグループワークで進行した。ゲストの多くは、芸術の専門家というより、さまざまな職業人である。建築家あり、社会福祉法人理事長あり、菓子屋の社長あり。まちとひとを通じて、私たちがさまざまな関係性の上に生きている、というごく当たり前のことを当事者の語りを通して、伝えることを目的としていた。またグループの世話役を務めたリーダーたち11名も大学生、社会人院生、新聞記者や都市計画家など、應典院の呼びかけに応じてくれた、非専門家の人々だった。誰もが一人称でアーツとの親密な関係性を語り始める時、自分の内部に目に見えないものの価値を浮かび上がらせる。私は、そこに宗教と相似した感覚を覚える。

80名の受講者にとって、今回の企画が懇切丁寧なものであったとは思えない。参加意識、自発性、対人関係、協調性、問題解決等々、数々のポジティブな「基礎体力」が求められた。しかし、対話、交流、協働など新しい関係性構築の能力が必要とされる今、アーツから、新しい社会参加(表現)へのモチベーションを提示することも、今回の講座のねらいであった。

TAMで得た私たちの収穫は大きい。アーツを社会につなぐため、私たちの次のプロジェクト「アーツによる若年者の雇用能力開発」が動き始めている。生き方にかかわるアーツマネジメントとは、個人のエンパワーメントを育むものでなくてはならない、と思う。

[應典院寺町倶楽部 秋田光彦/04年8月]

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