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認定NPO法人の要件 その2:その他の要件

1.その他の要件

認定NPO法人を取得するための要件は、以下の8つです。

1号基準: パブリックサポートテスト(以下、「PST」とします)をクリアしている
2号基準: 活動の対象が会員などをメインとした共益的な活動ではないこと
3号基準: 運営組織及び経理について適正であること
4号基準: 事業活動について、一定の要件を満たしていること
5号基準: 情報公開が適正にされていること
6号基準: 所轄庁に対して事業報告書などを提出していること
7号基準: 法令違反、不正の行為、公益に反する事実等がないこと
8号基準: 設立の日から1年を超える期間が経過していること

 このうち、1号基準のパブリックサポートテストについては、前回詳しく見てきました。それ以外の要件を見ていくことにします。

2号基準 活動のメインが共益的な活動ではないこと

 ここで問われるのは、「次の活動の合計が50%未満であること」です。

(イ) 会員のみを対象とした物品の販売やサービスの提供
(ロ) 特定のグループや特定の地域などに便益が及ぶ活動
(ハ) 特定の人物の著作物に関する普及啓発等の活動
(ニ) 特定の者の意に反した活動

 通常は、事業費の合計金額のうちに(イ)~(ニ)の合計金額の割合が50%未満であるかどうかで判定します。
 事業費以外の合理的な指標を示すことができる場合にはその指標を使っても構わないことになっています。

<例8>
 NPO法人甲は、世界の民族音楽の普及活動を行っています。
 年に2回コンサートを実施していますが、コンサートは、一般には告知されておらず、会員やその家族のみが招待されています。
 NPO法人甲の実績判定期間の事業費合計は500万円、このコンサートにかかった費用は150万円です。他に共益活動はありません。

 コンサートは会員とその家族という特定の者のみを対象とした活動ですので、共益活動 に該当します。
 事業費合計が500万円で、コンサートの費用が150万円ですので、150万円÷500万円 =30%になります。ほかに共益活動はありませんので、50%未満であり、2号基準はクリアということになります。

3号基準 運営組織及び経理について適正であること

 具体的に問われるのは、以下の点です。

(イ) 役員及びその親族等が役員総数の1/3以下であること
(ロ) 特定の法人の役員または使用人である者等が役員総数の1/3以下であること
(ハ) 各社員の表決権が平等であること
(ニ) 公認会計士等の監査を受けているか又は帳簿の記帳や保存等が青色申告法人に準じて行われていること
(ホ) 費途が明らかでない支出があったり、帳簿に虚偽の記載があるなど不正な経理がないこと

 などです。

 (イ)と(ロ)は、特定の親族や特定の法人などの影響下にあるNPO法人を排除しようとしているものです。(ニ)と(ホ)は、帳簿が適正に記載され、管理されていることを担保する規定です。
 特に(ロ)の要件で問題になるケースがありますので、例題で見ていきたいと思います。

<例9>
NPO法人甲は、役員が10人います。その10人の役員のうち、4人が、先日設立した一般社団法人Cの役員も兼ねています。

 (ロ)の、「特定の法人の役員または使用人である者等が役員総数の1/3以下であること」という場合の「特定の法人」とは、例8ですと、一般社団法人Cが該当します。この「特定の法人」には、株式会社でも、他のNPO法人でも、任意団体でも該当します。
 NPO法人甲の役員10名のうち、一般社団法人Cの役員も兼ねている者が4名おり、1/3を超えていますので、この時点で認定要件をクリアできません。
 対処方法としては、役員を増員する、あるいは、一般社団法人Cの役員を兼ねている役員を、役員から外す等が考えられますが、この要件は、「実績判定期間中」に満たしている必要がありますので、役員構成を変えたとしても、要件をクリアできるのは、役員構成を変更した後の事業年度が実績判定期間となる、2~3年後となります。

4号基準 事業活動について一定の要件を満たしていること

 ここで具体的に問われているのは以下のことです。

(イ) 宗教活動及び政治活動を行っていないこと
(ロ) 役員や社員、寄付者等に特別の利益を与えていないこと
(ハ) 実績判定期間において「特定非営利活動に係る事業費/事業費の総額」の割合が80%以上であること
(ニ) 実績判定期間において「特定非営利活動の事業費に充てた額/受入寄付金の総額」の割合が70%以上であること
<例10>
NPO法人甲は、理事長が所有するビルの一部を賃借して家賃を支払っています。家賃相場は12万円であり、理事長に支払っている月額の家賃は20万円です。

 家賃が相場以下である場合には「特別の利益」にはなりませんが、相場よりも高い家賃を支払っている場合には、「特別の利益」に該当することになります。この例の場合は、相場より高い家賃を理事長に支払っていることになりますので、認定要件をクリアできない こととなります。

5号基準 情報公開が適正にされていること

 もともとNPO法自体が公益性の判断を役所に委ねず、その担保として大幅な情報公開を義務づけて、役所による選別ではなく、市民による選別を期待するという法律です。認定NPO法人は、さらに詳細な情報公開が要求されます。
 具体的には、次に掲げる書類について閲覧の請求があった場合には、正当な理由がある場合を除き、これをその事務所において閲覧させなければなりません。

(イ) 事業報告書等、役員名簿、定款等
(ロ) 各認定基準等に適合する旨を説明する書類、欠格事由に該当しない旨を説明する書類
(ハ) 寄附金を充当する予定の具体的な事業の内容を記載した書類
(ニ) 前事業年度の役員報酬又は職員給与の支給に関する規程と
(ホ) 収益の源泉別の明細等定められた書類
(ヘ) 助成金の支給及び海外送金に関して税務署に提出した書類の写し

6号基準 事業報告書等が所轄庁に提出されていること

7号基準 法令違反、不正の行為、公益に反する事実等がないこと

8号基準 設立後一定期間を経過していること

 設立の日以後1年を超える期間が経過している必要があります。
 従って、NPO法人を設立してすぐに認定NPO法人として申請をすることはできません。

<例11>
NPO法人甲は、今年(平成24年)の9月1日に設立したばかりです。決算期は3月決算です。認定NPO法人としての申請はいつからできるでしょうか?

 平成25年3月31日の時点では1年を経過していませんので申請をすることができません。平成26年3月31日時点では設立後1年を超えていますので、他の要件を満たしていれば、平成24年9月1日~平成26年3月31日を実績判定期間として申請をすることができます。

2.欠格事由

 8つの要件を満たしていても、次のいずれかの欠格事由に該当するNPO法人は認定等を受けることができません。

(1)役員のうちに、次のいずれかに該当する者がある法人
イ: 認定又は仮認定を取り消された法人において、その取消しの原因となった事実があった日以前1年内に当該法人のその業務を行う理事であった者でその取消しの日から5年を経過しない者
ロ: 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ハ: NPO法、暴力団員不当行為防止法に違反したことにより、若しくは刑法204条等若しくは暴力行為等処罰法の罪を犯したことにより、又は国税若しくは地方税に関する法律に違反したことにより、罰金刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ニ: 暴力団又はその構成員等
(2)認定又は仮認定を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない法人
(3)定款又は事業計画書の内容が法令等に違反している法人
(4)国税又は地方税の滞納処分の執行等がされている法人
(5)国税又は地方税に係る重加算税等を課された日から3年を経過しない法人
(6)暴力団、又は、暴力団若しくは暴力団の構成員等の統制下にある法人

3.認定等の有効期間等

 認定の有効期間は、所轄庁による認定の日から起算して5年です。また、仮認定の有効期間は、所轄庁による仮認定の日から起算して3年です。
 認定の有効期間の満了後、引き続き認定NPO法人として特定非営利活動を行おうとする認定NPO法人は、その有効期間の更新を受ける必要があります。
 仮認定の有効期間の更新はありません。

4.まとめ

 認定NPO法人になるためには大きく4本の道があります。
 1本目は、絶対値基準で認定NPO法人を目指す道です。3,000円×100人基準とも言われているもので、平成23年6月30日に新たにできました。
 2本目は、相対値基準で認定NPO法人を目指す道です。これは、従来からあった道で、さらに、細かくいうと、原則用と小規模法人用にわかれます。
 3本目は、条例の個別指定により、まず住民税の寄付金控除の対象となる法人になったうえで、所得税の控除が受けられる認定NPO法人を目指す道です。
 4本目は、まず仮認定NPO法人になったうえで、3年以内に絶対値基準、相対値基準、条例個別指定のいずれかのPSTをクリアして認定NPO法人に移行する道です。この道は、平成24年4月1日以降にできた道であり、さらに、原則として設立5年以内の法人にのみ認められている道です。ただし、平成27年3月31日までは、すべてのNPO法人が仮認定を受けられるため、この間は、すべてのNPO法人に開かれた道です。

 ただし、この4本の道はすべて、PST以外の他の要件を満たしていることが大前提です。
 仮認定法人についても、PST以外の要件はすべて満たしている必要があります。
 つまり、直接認定を目指す場合にも、仮認定を経由して認定NPO法人を目指す場合にも、条例個別指定を受けたうえで認定NPO法人を目指す場合でも、PST以外の要件は満たしていることが大前提です。しかし、PST以外の要件をクリアできない法人は意外と多いです。だから、いずれの道を考える場合でも、認定を目指すのであれば、まずはPST以外の要件を満たしているのかをチェックし、もし満たしていない要件があった場合にはどうすればいいのかを考えるのが先決です。

(2012年9月11日)

寄付税制入門 目次

1
寄付税制とは
~個人が寄付をした場合の優遇措置
2
寄付税制 その2
~法人、相続人が寄付をした場合の優遇措置
3
認定NPO法人の要件 その1:パブリックサポートテスト
4
認定NPO法人の要件 その2:その他の要件
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