認定NPO法人の要件 その1:パブリックサポートテスト
寄付税制を受けられる法人と必要条件
寄付税制は、どんな法人に寄付をした場合でも受けられるものではありません。寄付税制を受けられる法人は、NPO法人であれば、認定NPO法人、社団・財団法人であれば、公益社団法人、公益財団法人です。社会福祉法人は、すべての法人が寄付税制を受けられます。
ここでは、認定NPO法人になるためには、どのような条件を満たす必要があるのかを見ていきます。
1.認定NPO法人とは
認定NPO法人とは、NPO法人のうち一定の要件を満たしていると都道府県または政令指定都市が認めた法人です。認定NPO法人になるためには、実績判定期間(※以下2(1)参照)において、以下の要件のすべてを満たしている必要があります。
1号基準: | パブリックサポートテスト(以下、「PST」とします)をクリアしていること |
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2号基準: | 活動の対象が会員などをメインとした共益的な活動ではないこと |
3号基準: | 運営組織及び経理について適正であること |
4号基準: | 事業活動について、一定の要件を満たしていること |
5号基準: | 情報公開が適正にされていること |
6号基準: | 所轄庁に対して事業報告書などを提出していること |
7号基準: | 法令違反、不正の行為、公益に反する事実等がないこと |
8号基準: | 設立の日から1年を超える期間が経過していること |
このうち、最大の関門は、1号要件の「PSTをクリアしていること」というところです。
PSTがどのようなものかを、以下で見ていきます。
2.パブリックサポートテスト(PST)とは?
パブリックサポートテスト(PST)のパブリックは「公衆」「一般市民」、サポートは支援、テストは「審査」、つまり、「一般市民からの支援度を審査する」のがPSTです。「公益性が高いかどうか」を「一般市民から支援されている度合いで審査しよう」というのが基本の考え方です。
PSTには、「絶対値基準」「相対値基準」「条例個別指定」の3つの基準があります。
(1)絶対値基準
絶対値基準は、実績判定期間[*1]内の各事業年度中の寄付金の額の総額が3,000円以上である寄付者の数の合計数が、年平均100人以上であるか、というものです。
実績判定期間中のすべての事業年度で、3,000円以上の寄付者の数が100人以上いれば問題なくOKですが、そうでない場合でも、次の場合には、この基準をクリアすることになります。
実績判定期間内の各事業年度中の 寄付金の額の総額が3,000円以上の寄付者の合計人数×12 |
≧ | 100人 |
実績判定期間の月数 |
寄付者の数をカウントするには、氏名と住所(団体であれば名称と主たる事務所の所在地)が明らかである必要があります。
また、寄付者本人と生計を一にする人を含めて1人としてカウントします。 NPO法人の役員及び役員と生計を一にする寄付者は、寄付者の数から除外されます。
NPO法人甲は、絶対値基準で認定NPO法人の申請をしようと考えています。
NPO法人甲の正会員は、会費5,000円で約100人、賛助会費は、会費3,000円で約200人います。
正会員、賛助会員はそれぞれ、絶対値基準の3,000円×100人基準にカウントすることができるでしょうか?
正会員の会費については、寄付金とされませんので、3,000円×100人にカウントすることはできません。一方、賛助会員の会費については、定款や規約等から実質的に判断して明らかな贈与と認められる場合には絶対値基準の3,000円×100人にカウントすることができます。不特定多数の者に無償で配布される機関誌等を受け取っている程度であれば対価性はないものとして、寄付金として扱っていいこととされています。ただし、無償の機関誌以外の特典がある場合には、その特典の程度によってきます。
(2)相対値基準
相対値基準は、実績判定期間における経常収入金額のうち、寄付金等収入金額の占める割合が5分の1以上であるかどうか、というものです。
実績判定期間における 寄付金等収入金額(寄付金・社員の会費) |
≧ | 1/5 |
経常収入金額(総収入金額から国の補助金等を引いた金額) |
分母の「経常収入金額」は「総収入金額」から次に掲げる金額を控除した金額です。
- 国、地方公共団体、一定の独立行政法人、地方独立行政法人、国立大学法人、大学共同利用機関法人、わが国が加盟している国際機関(以下「国等」とします)からの補助金等
- 国等からの委託事業の対価
- 資産の売却による収入で臨時的なもの
- 1,000円未満の少額寄付金
- 匿名寄付金
- その他
分子の「寄付金等収入金額」は、「受入寄付金総額」(寄付金、助成金など任意性があり、直接の反対給付がないもの)から、「基準限度超過額」、「1,000円未満の少額寄付金」、「匿名寄付金」を引きます(この金額を「A」とします)。さらに、一定の要件を満たしている場合には、社員(議決権のある会員)の会費収入も足すことができます。また、分母から引いた「国等からの補助金等」については、分母からはひかずに、分子に足すこともできます。ただし、分子に足せる社員の会費収入や国等からの補助金等は、Aの金額と同額までとなります。
NPO法人丙は、相対値基準で認定NPO法人の申請をしようと考えています。
総収入金額は3,000万円、その内訳は以下の通りです。
正会員の会費: | 500万円 |
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寄付金収入(助成金を含む): | 300万円(基準限度超過額はないものとする) |
国からの委託事業収入: | 1,000万円 |
事業収益: | 1,200万円 |
① | 経常収入金額 3,000万円(総収入金額) − 1,000万円(国からの委託事業収入) = 2,000万円 |
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② | 寄附金等収入金額 300万円(寄付金収入)+300万円※(正会員会費収入)=600万円 ※300万円(寄付金収入)<500万円(正会員会費収入) ∴300万円 |
③ | パブリックサポートテスト ①/②=600万円/2,000万円=30%≧20% ∴PSTクリア |
(3)条例個別指定
都道府県あるいは市区町村が条例で個別に指定した場合には、個人住民税の控除の対象になることができるようになりました。つまり、国の認定とは別に都道府県または市区町村が独自の基準で個人住民税の寄付金控除の対象になるNPO法人を指定できるわけです。
そして、この条例で個別に指定されたNPO法人については、所得税の控除の対象になる認定NPO法人の要件を見る場合において、PSTの要件は満たしているものとして扱われることになりました。なお、PST以外の要件については、すべて満たしている必要があります。
パブリックサポートテストのまとめ
次のいずれかの要件を満たしていればパブリックサポートテストをクリアしたことになる。
絶対値 基準 |
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相対値 基準 |
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条例 個別指定 |
都道府県あるいは市区町村が条例で個別に指定 |
平成24年4月1日から「仮認定制度」が導入されます。「仮認定制度」は、PST(絶対値基準、相対値基準、条例個別指定)をクリアしていなくても、他の要件を満たしていれば、認定を与える制度です。仮認定の有効期間は3年間で、1回限り適用されます。
仮認定の申請をできる法人は、原則として設立後5年以内の法人に限りますが、法施行後3年以内(つまり、平成27年3月31日まで)に限り、すべてのNPO法人(他の7つの要件を満たしていることが条件です)が仮認定の申請をすることができます。
仮認定法人は、個人や法人が寄付した場合の優遇措置は、認定NPO法人と同様ですが、相続人が相続財産を寄付した場合の優遇措置及び、法人自身が受ける優遇措置である「みなし寄付金」については適用がありません。
認定NPO法人 | 仮認定NPO法人 | |||||||||
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要件 | 8つの要件をすべて満たしている | PST以外の7つの要件を満たしている | ||||||||
有効期間 | 認定の日から5年間 | 仮認定の日から3年間 | ||||||||
申請可能な法人 | すべてのNPO法人 | 設立後5年以内の法人 ただし、法施行後3年間はすべてのNPO法人 一度仮認定を受けたNPO法人は再度仮認定申請はできない |
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税制優遇 |
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本認定の①、②については同じ ③、④については適用なし |
※詳細についてわからないところがある場合には、認定NPO法人を目指す人のためのQ&Aサイト「認定NPO法人への道」でご質問ください。
認定NPO法人への道「Q&A」:http://npoqa.jp/top.php
(2012年9月11日)