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文化政策に関する最新レポート

秋口から特に12月、1月前半にかけて、筆者の勤める企業メセナ協議会のライブラリーには学生さんが頻繁に訪れる。卒業論文、修士論文等の総仕上げ時期。最後の追い込みで、資料を探しに来られるのだ。

アートに関する論文を書く皆さんに、ぜひ紹介したい参考文献がある。第6回リレーコラムを書いてくださったニッセイ基礎研究所の吉本光宏さんが最近発表された、文化政策に関する論文だ。

▼「再考、文化政策--拡大する役割と求められるパラダイムシフト~支援・保護される芸術文化からアートを起点としたイノベーションへ」 (ニッセイ基礎研所報vol.51/Autumn 2008)

80ページにわたる一大論文(執筆のため、久しぶりに睡眠時間を相当削られたそうだ!)の最後は、以下のような内容で締めくくられている。

これまでの文化政策やメセナは、芸術や文化は社会に支えられるべきものだ、という認識に基づいて推進されてきた。しかし、そうして支えられた芸術や文化が、逆に私たちの市民社会を変革する原動力となって、多様な分野でベネフィットをもたらし、同時に社会的なコストを軽減していく。そんな「アートを起点としたイノベーション」が実現しうる時代が到来しようとしている。芸術文化のクリエイティビティを活用し、文化政策を起点に日本を刷新していく、そうしたパラダイムの転換がこれからの文化政策には求められているのである。

「アートを起点としたイノベーション」という言葉に、アートにかかわる仕事をしているものとして、"考える勇気"をいただいた気がした。

論文執筆中の皆さん、ひたすら考え抜いてください!無事の提出をお祈りしています。

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