私は「美術手帖」という組織のなかで、企業や団体とアートプロジェクトを企画することを仕事にしているが、近年、構想を練るうえで自然や生態系にヒントを求めることが増えている。地球が誕生し46億年が経つなかで繰り返されてきたトライ&エラーには、生存するための経験と智慧が詰め込まれている。そこから私たちは何を学び、次の世代に、またあるいはさらに次の世代に、渡すことができるのだろうか。壮大なバトンリレーのひとりのランナーとして、少しでも歩みを進めることに貢献したい、という祈りだ。

近頃、稜線を撮り溜めているのも、そのこととつながっているのかもしれない。特に、街にいてふとビルの間に間に覗く稜線が好きだ。やれ目的地に向かってせかせかと歩いていたり、下を向いてスマホをいじっていたりするなかで、何かの折に目線を上げたときに、視界に入る。すると稜線は、過信しがちな人間の世界が小さく限られていることを、自分の現在地がずっと先で自然とつながれていることを示し、やさしく抱擁してくれるのだ。加速化する情報の急流で溺れかけているときに、無我夢中で手を伸ばそうとして、思わずスマホで撮り溜めている。

これらから得ている学びも、また次のプロジェクトに実装され、バトンを継いでいくのだろう。