近年、舞台芸術業界でもハラスメントが大きな問題となっている。

私自身は現在40歳だが、キャリアが浅い20代の頃には、演出家が灰皿を投げたとか、俳優を足でけったとか、深夜3時にダメだしでファミレスに呼び出されたとか、そういう光景を見たり、聞いたりしていた。だからこそ、そんな環境でキャリアを積んできた自分自身の感覚・アンテナの鈍さに恐怖を感じてもいる。

特に舞台芸術のクリエーションの現場では「作品のため」という、関わる人なら当然思っているであろう、作品を良くしたいという純粋な気持ちを人質にとられ、人の尊厳を踏みにじるようなことが起きやすい構造がある。

だからこそ、アートマネージャーは、積極的に古い価値観をアンラーニングし、知識と感覚をアップデートする必要性があると強く感じている。

特に知識を学ぶことはとても重要で、社会に出てしまうと、誰かが「今あなたにはこれが足りないからこの本を読みなさい」と言ってくれることなどなく、自分に今何が足りないのか、考え方が偏っていないか、知識が古いままになってないか、自分で自分を教育し続けないとならない。

往々にして、自分に足りないものに気付くのは、自分が失敗をしてしまった時である。そうなる前に、そうならないように適切に知識を付けたり、周囲に助言を求めたりできればいいのだが、何も起こっていない(ように見える)ときには、そこに気付くことはとても難しい。

だからこそ、20代の学びとは違って、40代の学びとは、自分自身の至らなさや、認めたくないことを認めざるを得ない、痛みを伴うことでもあるのかもしれない、そんなことを感じている。

そして次世代に引き継ぐべきではない習慣や価値観には、やはり勇気をもってNOと自分の世代が言っていかなくてはならないと改めて感じている。