2021年12月。期せずしてコロナ禍での制作となった編著書『危機の時代を生き延びるアートプロジェクト』を出版した。このようなタイトルになったのは、タイミングはもちろん、震災から10年を射程とした事例の中に、課題や災いへ向き合いながら前に進むための知恵や術、人の生き様へ作用するアートの本質を改めて見出したからだ。

一方で住まいを秋田に移し、近代建築の改修による小規模多機能型文化施設「秋田市文化創造館」の立ち上げやオープニング特別事業にも携わった。アートプロジェクトを含めて、生きることの傍にある、広義の文化創造とそれを支える環境や拠点のあり方が当面のテーマになりそうだ。

コロナは未だに収束せず、ロシアのウクライナ侵攻、参議院選挙と安倍元首相の銃撃事件など不安を誘うニュースに心をかき乱される日々が続くが、そんな時こそ身の回りに目を向けたい。いわゆるアートセンターはもちろん、劇場、公民館、レストハウス、コワーキング、まちやど、喫茶、銭湯、寺子屋、廃校、屋台、アーツカウンシル、メディア、メタバース…『危機の時代を生き延びるアートセンター』の価値を紡いでいきたいと考えている。