私は、2006年4月に指定管理者制度が施行された公共ホールで、指定管理者民間企業社員として、現在へと続くキャリアを始めました。
2012年、設立まもないアーツカウンシル東京にアーツアカデミー調査員として傍らで関わり、その後、地方都市かつ文化首都である那覇に移住して、沖縄アーツカウンシルのプログラム・オフィサーとして文化芸術の担い手支援を実践のなかで学びました。
並行して、フリーランスでアーティストの創造活動に参加し、各地の公共ホール、芸術祭等での仕事もしてきました。

この経験をもとに、地元・長野県で信州アーツカウンシルの設立準備から携わり、始動3年目です。

ただ「アーツカウンシル」と言っても多くの人には分からないので、「ホールや美術館のような『館』の“外”で行われている文化を支援している」と説明することもあります。

いま、地域の文化財団が存在意義を示すには、「アーツカウンシル」機能を「取り戻す」必要があると、私は思います。

多くの自治体文化財団には「文化振興」がその名に入っており、その趣旨で設立されていますが、公立文化施設の開館を契機に設立されたケースが多く、2000年代に施設の指定管理者として位置付け直された結果、建物の管理運営、建物に人を集めることを目的とした事業に、専心せざるを得なくなったのではないか、と解釈しています。
気がついてみると、財団の役割が地域の文化振興であることを主張できるような活動環境ではなくなってしまい、リソース不足により館の外での「文化振興」活動をすることを二の次にせざるを得なくなっているようです。

人口減少を前提としたこれからの社会を考える時、今の文化財団の役割は更新される必要があります。

稼働率や館に集めた人数の多さで業績をはかるのは、ますます合理的ではなくなります。
情報環境や生活スタイルが変化する中で、文化が身近な暮らしが送れるよう、新たな発想で環境を整備していくことが必要です。
地域で社会活動を支えていた人口の多い世代が高齢化するなかで、次代の新たなチームワーク・連携体制を形成することをサポートする役割が求められます。

地域で仕事をしていると、文化芸術の担い手がいろんな風に生きているのを知ることができます。行政も文化施設も、建物の中、事務所で働く人の価値観で地域をみていないでしょうか。人の暮らしは絶えず変化していることを意識して、アートマネジメントの専門性もアップデートしていかなければならないと思います。