9年前、ネットTAMリレーコラムの衣替えをお手伝いした流れで、新リレーコラム初回を担当した。未来を託したくなる方々に「イチゴーゴーゼロの夢」(1550億円あったら何をしたいか)を綴っていただいた。刺激いっぱいな5人の夢にしびれた。ボールを遠くに投げて大きな世界観を描ける人は、やっぱり頼もしい。

翻って、あなた自身は1550億円あったら何をしたいの?
いま、9年後の自分に問うてみる。
2024年の年明けに、自分は未来に向けて何を思い描くのか――。

私が理事を仰せつかっている公益財団法人小笠原敏晶記念財団では、元旦の能登半島地震を受けて緊急助成プログラムを立ち上げた。通常の現代美術助成に加えて伝統工芸分野からも復旧・復興の助成申請を募っている。能登や北陸圏の文化的背景から、どのような助成の枠組みがよいかを思い巡らせることとなった。
長く芸術支援に関わるなかで、2011年の東日本大震災や、2020年の新型コロナウイルス感染症の緊急支援にも向き合った。試行錯誤するなかで、非常時の芸術・文化には何が必要でどのような緊急支援ができるのか、アーティストの非常時の困りごとは何かを普段から考えるようになった。

緊急助成は予め計画が立てられるものではないし、個別事情も大きいので、仕組みづくりが難しい。特に予算化の難しさがある。ただ、これまで非常時の芸術・文化助成を何度か体験してわかったことは、日頃からの備えが不可欠だということ。防災・防疫的な備えではなく助成の備え。非常時に発動できる緊急助成の器を作っておくこと、体制を整えておくことが大事なのだ。

NYのアドルフ&エスター・ゴットリーブ財団の「Emergency Grant」など、海外には緊急助成のすぐれた先行事例がある。自然災害や疫災だけでなく、火災や緊急の医療ニーズにも対応している。東日本大震災時にジャパン・ソサエティー芸術監督・塩谷陽子さんから教えていただいて以来、日本の芸術・文化領域にも緊急助成プログラムが展開できたらと真剣に考えている。

もし私に1550億円あったら、芸術・文化分野が直面する想像もつかなかいような将来の緊急事態や、アーティストが日常で思いがけず直面する緊急の困難に備えて、ゴットリーブ夫妻のように、安心の器を作ってみたい。Emergency Grantを一緒に妄想してくれる仲間にも出会いたい。