コロナ禍での数々の行動制限により、生身の身体と接すること、ライブでの身体表現の価値をあらためて実感した人も多いに違いない。
しかし日本ではそんな身体をメディアとしたダンスの創作&上演環境が、アート界の中でもひと際、貧困状態にある。専門教育の不在、創作環境の不在、上演劇場の不在、観客不在など、マイナス面を考えたらいくらでもあるが、それを嘆いていても益々悲しくなるだけだ。

そこで3年前に創設したDance Base Yokohama(DaBY)は、「ダンスを拓く」ことをミッションとして、作品の創作を中心に、ダンス環境の様々な課題を少しでも解決すべく、いくつかの事業をスタートさせた。
なかでも、「創作→発表→再演」の持続可能な循環を意識して、愛知県芸術劇場と官民連携により2年前に立ち上げたプロジェクト「パフォーミングアーツ・セレクション」は10月の東京芸術祭への参加までで11都市で開催、この間に日本全国の劇場との連携により数千人の観客に観ていただくことができ、ダンスの裾野の広がりを感じている。

そしてさらに私がやっておきたい仕事は、日本でダンス専用劇場を創設すること。稽古場をもつ専用劇場があれば、さらに安定した環境で創作を行い、そこでの上演が可能となる。レパートリーとなった作品は再演を重ね多くの方に観ていただけると共に、アーティストやスタッフの仕事に繋がる。そこに観客が集い、新たなコミュニティが誕生する。専用劇場が果たす役割は大きいに違いない。

知恵を絞って、生きている間に、その夢を叶えたいと思っている。