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助成申請のための事業づくりと事業終了後

事業づくりの考え方

芸術文化は、市民に感動をもたらして人生を豊かにするもので、ひいては地域や社会全体を活性化するものです。最近はその効果や機能に注目し、社会課題解決にアートプログラムを活用する取り組みも増えています。助成財団は、芸術文化活動が生み出す価値を評価して支援を行います。さらに、一過性のものではなく、助成先団体が継続して価値を生み出していくことを期待しています。助成申請のための事業づくりでは、芸術文化活動を通じて価値を生み出すこと、助成金を活用して団体や活動の発展につながる仕掛けを盛り込むという視点が重要となります。

芸術文化活動が生み出す価値は、申請書を書くときに考えるのではなく、普段の活動の中から意識して発見し言語化していく準備が必要です。公演やイベントなどのアンケートに始まり、参加者の行動や意識の変化の観察、関係者へのヒアリング、中長期的な参加者や地域の変化の調査などを普段からしっかり行い、活動の価値を確かめておきましょう。そういった振り返りやまとめが価値を生み出す事業を考えるヒントになり、申請書に記載したときの説得性を高めていきます。活動と価値の関係を整理すると、①NPOは人に活動を提供する、②活動が人々に作用して価値に変換される、③人々にもたらされた価値が地域や社会に対して影響する、④新たに社会に対する価値が創出されるという流れになります。申請書では事業内容を整理し、③と④の箇所までつながっていくものとしてしっかり記載しましょう。

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(NPOの活動から地域や社会に価値を生み出す)

芸術文化の活動には、舞台芸術創造活動や公演、芸術家や活動の担い手の人材育成、子どもの芸術体験、地域におけるアート活動と市民参加、伝統文化の継承、活動拠点の整備や運営、アート分野の環境整備や調査研究、アートによる社会貢献や地域活性化、社会課題解決など多岐に渡ります。同じ芸術文化の支援といっても、対象となる事業内容は助成プログラムによって多種多様です。しかし、事業内容や活動は違っても、価値を生み出し、持続的な活動を目指すことは、助成プログラムや個々の助成事業に共通する目標となります。

事業終了後を意識した事業づくり

助成事業では、助成対象期間内に成果を出すのは当たり前のことですが、事業終了後も、①持続的に成果を出していく、②継続して実施できる仕組みをつくる、③事業のノウハウを提供し他の団体や地域に貢献することが重要です。そのためには、事業を実施して終わりではなく、団体として、知見や経験を蓄積しノウハウ化していくことと、事業プロセスを通じて次の5つの資産を形成していくことが必要です。この資産が助成事業後の団体の発展にとって大事な要素となります。

【ヒト】協力者、支援者、参加者、組織内外の人材養成
【モノ】Webサイト、テキスト、備品、施設、設備
【仕組み】低コスト化、事業収入、ノウハウ移転で収益
【ネットワーク】助成機関、自治体、企業、教育機関、他分野のNPO、専門家
【ノウハウ】アートプログラムの専門性、組織マネジメント

さらに、助成事業終了後のあるべき姿として、次の3つの視点があります。限られた助成金では、すべての項目を満たすことは難しいかもしれませんが、これらを意識して事業を行うことは助成金を一過性のものではなく、団体の発展のために活用することにつながります。

  1. 団体や活動が強化されているか?
  2. 成果の再現性があるか?
  3. 事業が仕組み化されたか?

なお、ここで挙げていることは事業実施の際だけでなく、事業計画づくり、申請書作成のときから考えて事業計画に盛り込んで申請していきましょう。

インターネットの活用と情報発信

少し視点を変えて、助成申請におけるインターネットの活用についてご紹介します。20年前は助成プログラムの募集要項も紙ベースでしたが、もはやWebサイトに掲載するというかたちにすっかり変わっています。また、インターネット申請のみを受け付ける助成プログラムも少しずつ増えています。

一方で、申請団体も自団体のことを正しく理解してもらうには、助成申請書の内容とともに、団体のWebサイトの情報が重要になっています。現在は、助成財団の担当者も、審査の中で申請団体のWebサイトをチェックするのが当たり前となっています。団体は、助成申請する前にはWebサイトの内容を整理し、自団体の魅力がしっかりと伝わるようにしておく必要があります。また、助成実績や協働実績をWebサイトで公開することは、団体の信頼度向上や実力のアピールにつながります。

次に、助成金が採択となった際は、積極的に情報発信を行うことを意識しましょう。外部から見えにくい、わかりにくい芸術文化活動において、活動情報を発信し、取り組んでいる芸術文化の意義や価値を可視化し、活動の見える化を進めることは必要不可欠です。特に公益活動である助成プログラムでは、なるべく多くの人にとって有益な活動となることが求められていますので、情報発信によってイベント等に参加できなかった方に活動の価値を届け、事業から得られたノウハウなどを広く公開することも大事な取り組みです。

また、助成事業を知ってもらうことは、団体を知ってもらうきっかけになります。市民がみなさんの団体を知るのは、団体そのものの広報ではなく、やはり活動の広報が入り口となります。まずは活動に興味関心を持ってもらい、その後で、その運営母体の団体に興味を持ってもらう流れとなります。助成事業という、普段とは違う状況を上手に活用することで、団体そのもののアピールにもなります。

あらためて助成金の活用

最後に、あらためて助成の意義を伝えたいと思います。助成金には経済価値にとどまらない多くの付加価値があります。単なるお金として助成金を獲得するのではなく、助成金を機会として捉え、活用することが大事です。この3回のシリーズで、お金以外の助成金の価値や意義を考え、助成の可能性を感じてもらえれば幸いです。

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(ネットTAMの助成金情報で助成プログラムの情報収集から始めよう!)

おすすめの1冊

参考リンク

実践編「芸術文化助成」 目次

1
助成金の活用という視点
2
助成申請をする
3
助成申請のための事業づくりと事業終了後
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