ネットTAM

出会うことからはじまる

TAMスタジオ2023 連続ゼミナール
「ここからはじめるアートマネジメント」を終えて

次代のアートマネジメントについて考える場として通年で開催されるTAMスタジオ。昨年は田村かのこさんによるファシリテーションのもと、アートマネジメントに現役で携わっている実践者の人々が集まり、今必要な場とは何か?を考えながら、トークセッションを通じた学びの時間と、参加者同士の継続的なコミュニケーションから生まれた発見や自身の現在地をかたちにするプログラムが開催されました。それぞれがさまざまな現場で日々奮闘する実践者同士が集う場において、一人ひとりを最大限に尊重しながらも、いつでも連帯が図れるような、安全につながる場づくりが内製されていきました。同志のような横のつながりがつくられた前回のTAMスタジオからバトンを受け取った私は、次代のアートマネジメントをさらに開拓するため、参加対象者をアートマネジメントに興味関心のある学生に絞り込み、アートマネジメントの領域にこれから一歩を踏み出すきっかけづくりとなるよう「連続ゼミナール ここからはじめるアートマネジメント」と銘打った学びの場を設計しました。

プログラムでは、対面でのトークセッション2回をメインとし、その前後でオンラインのミーティングを4回開催しました。どの回でも、一方的に話すだけではなく、参加者同士の横のつながりがつくられるよう、全員発話する機会をつくったり、グループ内で対話の時間をつくったりと、隣あるいは目の前に座る"スタジオメイト"と能動的に交流が生まれるように心がけました。トークセッションでは、アートマネジメントの実践者として、文化政策の研究者である戸舘正史さんとアートマネージャーの堀切春水さんをお迎えしました。戸舘正史さんには「アートマネジメントを志す心構え」というテーマで、アートマネジメントの社会的な位置づけについて、目の前のことから他者を考えてみることや公共性から文化芸術を考える視点を提案いただきました。堀切さんには所属されているBEPPU PROJECTで取り組む、アートを通じた地域づくりのさまざまな先駆的事例や、かつてご自身が企画者となり、子育てをしながら生活するまちで行ったアートプロジェクトの活動を「生活と地続きに展開するアートマネジメント」と題してご紹介いただきました。どちらのセッションも参加者の心をつかむとても充実した回となりました。詳細なレポートがあがっていますのでぜひ読んでいただければと思います。

そして参加者は、秋田/東京/神奈川/埼玉/京都/福岡から、大学1年〜4年生、修士〜博士課程に在籍する大学院生を含む20名。大学の専攻も人文社会学系から文学部や教育学部、美術・芸術学部系と幅広く、それぞれの興味のあるジャンルも音楽や演劇、アート、ダンスと多岐に渡りました。すでに学内やプライベートでアートプロジェクトやキュレーションを行う者や、研究者としてアートマネジメントの領域に問いをもつ者、アーティストとの作品制作に参加したり、自ら表現者として活動したりと、アートマネジメント実践の主体者として周縁から渦中に身を置きながらTAMスタジオへ参画していました。つまり、グラデーションはあるもののアートマネジメントにほぼ足を踏み入れているひとばかり。これには最初の自己紹介を終えた後、正直面食らったわけですが、どの回も一貫してスタジオメイトの存在に耳や目を向け交流する学びの姿勢が印象的でした。

初回のトークセッション終盤でのこと、みんなで車座になり感想を発表する際、トークセッションの感想だけでなく、今の自分が直面している就職活動の悩みやサークル内で起こったもやもやした出来事などを話すと、それに対して返答をしたり、発言せずとも深く頷いたり、リアクションを返し合うような様子がみられました。また、1回目のトークセッションと2回目のトークセッションの間に数カ月時間が空いたこともあり、久しぶりに集まったオンラインミーティングでは、自身の活動を発表する時間を設けました。大学のサークルでの取り組みや卒業論文を発表したり、今制作しているプロジェクトや作品について、自分が今考えていることを紹介したり、この春からどんな進路を目指すかの決意表明など、数カ月間の間に行ったそれぞれの個人の学びを共有し合いました。その発表の中には、初回のトークセッションから学んだことを受けて自身で行動したことなども含まれていました。その後に開催された対面トークセッションでは、参加者同士が久しぶりに会ったにもかかわらず休憩時間にもリラックスした様子で雑談し合う姿がみられました。

そして一番心に残っているのが、最終ミーティングの目前、一人の参加者からある提案があったことです。それは「スタジオメイトが修士研究として制作したアートプロジェクトの10年後を追ったドキュメンタリー映画をみんなで鑑賞したい」というもの。提案してくれた彼は、スタジオメイトの修士発表会へ出かけ、この映画を見てすごくよかったのでみんながどう見てどう感じるか聞きたいということでした。私自身、この展開はまったく予想にしていなかったので、とてもうれしく感じました。残念ながら時間の都合上、みんなで同時に見るということは叶わなかったけれど、事前に映画をそれぞれが鑑賞したうえで感想を発表するという時間を最終ミーティングで設けることができました。またこの他にも私が知らないだけで、スタジオメイトがお互いの現場へ訪れるような出来事が起こっていたかもしれません。

アーティストの表現やアートプロジェクトが多様に広がりをみせていく中、ますます今をともに生きる他者や未来を生きる誰かを想像し、それぞれの切実さをもって行動することが求められていると感じます。TAMスタジオを通じて出会ったメンバーが年齢や大学を超えてつながり、刺激し合いながら次のアクションとして応答する。そんな彼らの等身大の循環に立ち会えたことに、新たなアートマネジメントが展開される可能性を感じずにはいられませんでした。時間にしたらたった一時ですが、この場に集い、お互いの現在地を共有した仲間が確実に存在したことが、心の拠り所となる日がきっと来るはずです。何より、私自身がさまざまな立場でアートと社会のつなぎ手となった彼らと、どこかで出会えることが今から楽しみでなりません。そして、これからもアートマネジメントの社会的意義について考え続けていきたいと思います。

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