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30秒で、"ワタシは、だーれ?"

自己紹介は、すべての基本

 人と話をするとき、よく知っている人と知らない人とでは、当然緊張のレベルや親近感が違います。たとえ短い時間の会話でも、その人のことをよく知っていれば、その人が何を言いたいのか、なぜ今そんなことを考えているのかが、よく分かることでしょう。初めての人に対して、そういう親しい雰囲気をつくるためには、上手な「自己紹介」が効果的です。
 では、ここで初対面の人を想定して、

 「30秒であなたの自己紹介をしてみてください。」

 上手にできましたか。15年、20年、30年と自分の長い人生で獲得した多くの資質の中から、自分という人間の特徴や性格や魅力を端的に伝えるのは、そう簡単なことではありません。実はこの、たった30秒の中に、コミュニケーションが上手になるための最も重要な「コツ」が隠されているのです。
 30秒しかないからと、早口に自分のいろんな性格をまくしたてた人がいるとしてみましょう、それを聞いた人はそのうちのいくつを正確に記憶できるでしょうか。仮に記憶できたとしても、聞いた人のうちで、ある人は"まじめ"というコトバが印象に残り、別の人は"でも意外に、おっちょこちょい"というコトバが強く印象に残るかもしれません。人柄のイメージが結果として分散してしまう訳です。これを防ぐにはどうすればよいのかは、もうお分かりですね。

 伝えるべきことは、1つに絞る!

 これこそが、広報や広告、SNS等のメディアには関係なく、最も重要な、効果的で効率的なコミュニケーションの大原則(コツ)なのです。

自己紹介から自分たちの団体(活動)の紹介へ

 自分のことをいちばん知っている自分であるはずなのに、自己紹介のテーマを1つに絞り込むことは簡単ではありません。まして団体の活動やプロジェクトの紹介となると、さらに難しくなります。一見、同じ志や想いや夢を共有して活動に参画しているように見えるスタッフの間でも、いざ、その活動内容を1行で表現するスローガンのようなものをつくろうと皆で話し合ってみると、意外と意見がバラバラでまとまらないケースが多くあるはずです。活動の歴史が長い団体ほど、立ち上げ期のメンバー、中堅のメンバー、最近参加したばかりの新人スタッフ等の間で、その意識のズレが大きくなったりしているものです。
 ですから、半年に1回、1年に1回でもいいから、自分たちはどういう志や想いでその活動をしているのかを確認するミーティングを持ちましょう。そして、それがきちんと実現しているのかいないのかも、検証してみましょう。その当たり前のことがきちんとできていること=すなわち伝えるべきことが1つに絞り込めて、発信すべきメッセージが明確になっていること。それこそが、内に対しても外に対しても、いちばん大切なコミュニケーションの出発点なのです。

(2013年6月7日)

おすすめの1冊

明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 佐藤尚之
アスキー新書

私たちに、新しい時代のコミュニケーションへの意識変革を促す本。

アートプロジェクトの広報入門 目次

1
30秒で、"ワタシは、だーれ?"
2
ところで、"あなたは、どんな人?"
3
いちばん、"お願いしたいことは、ナーニ?"
4
どうすれば、"多くの人に、伝わるの?"
5
大事な動詞は、"askとthank!"
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