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美のリゾート文化の創出に向けて

 那須高原山麓横沢地区にわずか6部屋の二期倶楽部をオープンしたのが1986年のことでした。1997年に14部屋を増築、その後2003年にスパに特化した東館(NIKI・CLUB&SPA)を敷地内に増設。さらに2006年、20周年記念事業として庭内に野外劇場「七石舞台かがみ」と、隣接地にゲストハウス「観季館」も完成いたしました。続いてガラス工房、焼物工房を併設した、長期滞在型施設「アート・ビオトープ」をプロデュース。二期倶楽部の真向かいの土地に計画し、二期倶楽部のゲストでもある某投資家に所有いただいき、二期倶楽部の提携施設として位置づけ、私どもで運営管理しています。
 これで、オーベルジュ「にき倶楽部1986」(本館)、スパホテル「NIKI・CLUB&SPA」(東館)、カルチャーエリアのモニュメントでもある七石舞台、そして多目的空間が加わり、当初より思い描いていたカルチャーリゾートの基礎がようやくできあがりました。

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20周年記念:七石舞台「かがみ」。

 今年、私どもは24周年を迎えます。改めて振り返ると、日本人の観光のスタイルは、団体活動型の旅から個人の時間を楽しむ旅にと、随分と変わり、今ある多くの"スモールホテル"はその変化に合わせて成長してきた20年ともいえます。二期倶楽部もこのニュートレンドの中で、業績を伸ばしたのだと認識しています。その一方、アメリカ経済の破綻により世界規模に影響を与えた経済不況は、"100年に一度"の恐慌といわれ、消費者のモノ離れに歯止めが利きません。

 そんな時代に、私たち宿泊業に携わる者も"ホスピタリティ産業"の持つ真の文化的価値に目を向け、実践することが大切だと、つくづく思っています。実は、ゲストもリゾート文化に今まで以上に深い関心を寄せているのです。それは、従来あった、単に、温泉に入っておいしい食事をいただくという、ラグジュアリーな感覚を求めて優雅な非日常を体験するといった単純なものではすでになく、例えば、食べる体験の中に、素材や産地、その生産状況への関心、地球環境への共感、人間同士の親密なコミュニケーションといった、驚くほど多面的な文化創造の契機と興味を込めて、深い関心を寄せているようです。

 自然への愛着と普段の営みそのものを慈しみ、愉しみ、真の精神的欲求が込められるようなユニークな自己開発の場となっています。私ども二期倶楽部は、NPO法人アート・ビオトープと連携し、2008年よりサマー・オープン・カレッジ「山のシューレ」を開催させています。2009年夏は「環境・身体・言葉」をテーマに、各界で活躍しているクリエイターを招き、座学からワークショップまで行い、会期の5日間で1,000名近い方にご来場いただきました。2008年に比べて1.7倍にも増えたのです。こうして着実に来場者数が伸びていることをみても、文化芸術的刺激によって、改めて五感を解放する、どうも現代人はそのようなことに活路を見出しているように思えるのです。

 アグリツーリズムやヘルシーツーリズム等々のニューツーリズムが注目されている中、サマー・オープン・カレッジ「山のシューレ」が那須ロイヤルリゾートの重要な文化コンテンツになることを夢みて、さらに横沢地区を文化の聖地バイロイトやスイスのアスコーナに倣い、育て上げる大きな構想を描き、今夏(2010年7月30日〜8月3日)の山のシューレの準備に奮闘中です。


写真で見る山のシューレ

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AIR(Artist in Residence Program)で滞在いただいた金恵貞さんによるドローイングワークショップ。
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オープニングシンポジウムでは、4名の講師によるトークセッション、オスカーシュレンマーのお孫さんラマンシュレンマー氏による基調講演そして夜の交流会。
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神宮前の伝説の「バーラジオ」尾崎浩司氏によるバーは、山のシューレ開催中のみ営業。

(2009年12月19日)

今後の予定

  • 2010年4月16日(金)~17日(土)で、「野に遊ぶ」と題して、二期倶楽部敷地内で、茶会を開催いたします。
    二期倶楽部のリニューアルオープニングをかねたイベントで、日本茶から中国茶、ハーブティまで、さまざまなお茶のシーンをお愉しみいただきます。
    http://www.nikiclub.jp/html/newsList22.html
  • 7月30日~8月3日は、第三回「山のシューレ」言葉・身体・環境 II です。
    今年も多方面からアプローチし、深めて参ります。開催までのプレイベントも計画しています。皆さまどうぞお気軽にご参加ください。
    http://www.schuleimberg.com

関連リンク

次回執筆者

バトンタッチメッセージ

第1回「山のシューレ」では、同時開催特別展として、オランダより86展の作品を展示する、「アウトサイダーアート展」を開催いたしました。
関連講座として、伊地知裕子さんに講師としてお越しいただきました。伊地知さんは、社会の中のさまざまな人、特に社会的ニーズを抱える人たちを対象にアートを通して自分自身を表現できる、という考えのもと、さまざまな参加体験型のプログラムを、港区を拠点に展開されています。コミュニティ・アートと称するその取り組みは、すでに15年余におよび、また内容は、大変興味深いものです。
ぜひこれまでの軌跡と考えを、語っていただきたいです。
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