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アートの奇跡

生きる! その一瞬の可能性 アートとともに

 突然だけれど、生きる! ってどういうことだろう。
 私はまだまだ本当の"これだっ"って答えは見つかっていないのだけれど、最近、「あーーっっっ!!」と思ったことがある。ちょうどアート、芸術を介して。
 結論に辿り着くまでちょっと私的な話になってしまうけれど、どうぞお付き合いください。

 忘れもしない昨年12月のこと。日本ではベートーベンの第九の演奏が全国で盛んに行われているが、ある日、歌って合唱で参加をする機会があった。こんなこと言うのは少し勇気がいるが、私は正直第九のどこがよいのかよくわからなかった。なのでそれに参加することも、あまり気が乗らなかった。
 なんとか無事終わってくれれば...。

 それが ------------。

 いざリハーサルが始まった。 冬の日の朝のすがすがしい温かな日差しの差し込む、木の造りの部屋。そこにまるでその美しい光と溶け合うような強烈なエネルギーを持った歌声が、放たれた。なんだか宙に浮いていきそう・・・。曲が進む。信じられないくらい美しい!! 体が溶けてなくなりそう・・・! そこで歌っているみんなが、みんなで、天に昇っていくよう・・・。人間て、音楽って  何? 人間て、こんなにすばらしいものだったの?・・・!!!
 押さえられない涙、言葉にならない感覚。そしてその時、わたしは本当に心の底から、一点の疑いもなく、「生まれてきてよかった」、そう思った。生まれて初めて。
 ここに来てこんな経験をするなんて。こんな今日があるなんて、まったくの予想外に。こんな未知な感覚があるなんて。そして、音楽というのは・・・。

 それ以来私は"生きる"ということについて、新たに考えたり気づいたりした。
 人間知らないうちに何かある"小さな循環"の中に、はまってしまってはいないだろうか。自分が思っている以上に。
 小さな循環。例えばこんな↓感覚。
 毎日や日常ってこんなものだろう。
 地球がまわっていることも当たり前。
 明日は今日とそんなに変わらず巡ってくるものだろう、とか。
 何かがいつもうまくいくか失敗するかの二元性に心がとらわれていたりだとか。
 心当りないだろうか。

 でも、生きるということは、"どの瞬間瞬間も"、ホントはもっと無限の可能性に溢れているのだ、いるはずなのだ。手を止めて顔を上げて ---- ちょっとした何かとの出会いによって、それまで感じたこともないようなことを突然感じたり。その可能性に溢れているのが人生であり、また、誰かが自身のどうしようもない程のエネルギーを込めて込めて結晶させた作品というのは、それに触れた人にとって"起爆剤"になりうるのではないだろうか。もともとそこにあったものに気づく、自分の中の忘れかけていた本能や情緒を思い起こす、時にはまったく新しい価値観に目覚める...など。
 だから、みんなちょっと立ち止まってみたりして、いろんなもの自然やアートに触れてみること、まったく不確定な時間や未知の自分に出会うことを、許したり期待してみたらどうだろうか。

 今、その一瞬は、無限に広がっている!!
 アートとともに? 見知らぬ誰かとともに? 通い慣れたその道とともに。

アーティスト、スタッフ、マネジメント ~ 創る過程 ~

 これまでコンサートや演劇、ミュージカルなどいろいろと参加させていただいてきた中でいつも感じてきたことなのだけれど、それぞれの立場で、もっともっとこう思う! こうしたら? というようなことを、心から伝え合っていく必要があると思う。要となるようなことや、何かが共有できないまま、想いがぶつけ合えないまま制作が進んでいる感がある。これまたこう言う私も、「あー、またここまでしか伝えられなかった。緊張してうまく伝えられなかったー」という繰り返しだ。自分が本当に嫌になってくる。けれど、どんな時でも心を開いて、もっと魂と魂をぶつけ合わなきゃ、本当にアートと呼べるようなものは、できないと思う。心から伝え合うこと。
 アート、アートマネジメントの現場、創る段階でまず、もしそれができたら、そうなったら...、みんな、より幸せになると思う。伝え合えた結果、それぞれのよさが出し切れた!感じ合えたって深い喜びを生み出し、体験し、そしてそれが、観客、参加している人みんなに伝わっていく、みんな心のどこかでそれを受け止め、幸せになるのではないだろうか。

アートマネジメント ~ 企業が支援してくださってのある体験 ~

 私がピアノ演奏で出演させていただいているお店、音楽ビヤプラザライオンといういろんな音楽の生演奏をやっているビヤホールであるが、あるメンバーの方の発案で、オリジナルの乾杯の歌を作ろう! ということになった。そしてお店の賛同、援助を得て、歌詞を公募し、結果約250もの多くの応募をいただいた。
 全国津々浦々、いろんな職業の方がたまらなく心に響くいい詞を書いて送ってくださった。本当にすばらしい詞が多くて、読んでいて涙がこみあげてきた。みんなお互い顔も知らない名前も知らない、住んでいる場所もバラバラ。なのに、ここに描かれている"何か"はつながっているのだ、きっと。そして、そこで見事に大賞に選ばれたのが、安保真さんという方の作品で、感動的なサビの部分 --

   乾杯 すてきな君のために
   乾杯 愛する家族のために
   乾杯 ここにいるみんなのために
   乾杯 今日の僕のために

 みんな何気なくよくやっている「かんぱ~い!!」のあの瞬間が、こんなにもすてきに浮かび上がった!! 言葉となって歌詞となって生み出され、いま、呼吸している!
 実際、企業が賛同してくださったことによって。支援してくださったことによって。

 企業というのは、その社会的役割、存在の仕方からしても、アートマネジメントということを試みた際、"多くの立場、多くの人につながる"ことができる。そうして多くのすばらしいアートを生み出すことができる。体験し、そう確信した。そして、その中や周りに何か"輪"のようなものができたと感じた。また、そこにそれまではなかった新たな空気、エネルギーの流れが生まれるのではないだろうか。

 私もさらにパワーアップしてその"輪"をより豊かに大きく紡いでゆける存在でありたいと思う。

 アートの可能性を信じて。
 自分の中の強烈な"熱いもの"を信じて。
 みんな、どこかでつながることができることを信じて。

(2009年4月24日)

今後の予定

世界の、えも言われぬ程美しい音色の楽器を色々と探し歩き、心と体にずっしり響いてくる音楽が作りたい。

おすすめ!

本文でご紹介した安保真さんは、本職は墨絵画家でいらっしゃった!
安保さんの作品を見ると、うわあっ! て気持ちが動きますー。
どう動くか?? 7月に札幌三越にて個展が開催されるそうです。

次回執筆者

バトンタッチメッセージ

画家であり、アートマネジメントの分野でもとても行動力があり、精力的に活動されている金丸さん。
自身の立ち上げたアーティスト集団「C-DEPOT」の代表でもあります。
かつては大学時代クラブ活動でお世話になりました。
最近偶然見かけた金丸さんのメッセージ「動物と人間がもっと仲良くできたら」とその作品に感動しました〜。
次回、よろしくお願いします!
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