アートマネジメントのインターン現場レポート ~世田谷パブリックシアター 2025(3)
今夏、夏休み期間中に世田谷パブリックシアターでインターンをする学生から寄せられるレポートをご紹介しています。第3回は『キャプテン・アメイジング』コースの3名のレポートです。
※インターンの詳細はこちらから
【Bコース】[長期]『キャプテン・アメイジング』コース
津田塾大学 学芸学部国際関係学科国際日本コース 4年
梶本真由さん
稽古期間を通じて、上演にかかわるすべてのセクションの方々が気持ちよく、それぞれの役割を果たせる環境を整えることが、制作の大切な役割であることを実感しました。日々のていねいなコミュニケーションや細やかな気配りが、稽古の円滑な進行につながっていることを、制作の皆さんの姿から学ぶことができました。
多くのレクチャーの機会をいただいた中で、最も印象的だったのが、「世田谷パブリックシアターの役割を考える」ということです。舞台芸術の世界において、創造発信型の公共劇場であるこの劇場だからこそ届けられる作品、観客の存在があることを知りました。また子どもたちが参加するワークショップにもかかわらせていただいたことで、子どもたちと舞台芸術の橋渡しとなるといった公共劇場の重要な役割を体感することができました。
本番期間には、インターン企画としてフォトスポットの運営を担当しました。観劇後のお客さまから熱のこもった感想を直接うかがう場面もあり、「作品を届ける」ということのおもしろさを知ることができました。フォトスポットは設置方法や装飾、案内の仕方など、インターンメンバーとともに日々改善を重ねたことで、公演を通して多くのお客さまに楽しんでいただけたのではないかと感じています。
今回初めて演劇制作の現場にかかわらせていただいたことで、多くのことを感じ、考え、そして学ぶことができました。この期間で得たことを将来への糧にして、今後の⾏動に活かしていきます。

早稲田大学 3年
岸茉那美さん
学生団体で演劇の創作にかかわる機会があったことで、プロの現場ではどのようなセクションが集まって一つのカンパニーがつくられているのか、自分の目で見たいと感じ、本インターンシップに参加しました。
稽古場や楽屋での作業といったいわゆる「裏」の仕事に加え、ロビーでのフォトスポット運営を通して観劇前後のお客様のお顔をきちんと見ることのできる「表」の仕事を両方体感できたことで得られた学びが多くあったように感じています。
稽古場では出演者と演出家だけではなく、技術スタッフも一堂に会して作品を模索している姿がとても印象的でした。本番期間に入ると空気感も変わり、非常時対応の打合せやお客様がいることを想定しての場当たりが行われるなど、創作の過程が段階的に現実味を帯びていく様子を間近で体感しました。
幕が上がり、これまでの制作過程を見てきた一員としてお客様のお顔を見ることができたのも忘れられない瞬間となりました。
総じて、自分にとってこの期間中行った現場での実務はもちろん、スタッフの方からうかがったお話や築いた関係性が、今後の演劇とのかかわり方を見つめるための大きな指標になったように思います。

立教大学 現代心理学部 映像身体学科 3年
杉本円佳さん
劇場における制作は、稽古場や劇場の「空間づくり」を担う重要な役割であることを実践から理解しました。これは単に環境を整えるだけでなく、多様な工夫によって成り立っていました。
中でも可視化・スピード・対話という3点が快適な場を生み出す要因であると感じました。スケジュールをはじめとした重要な情報は必ず大きく掲示することで、スムーズな活動を支えていました。その際には公演のロゴやカラフルなイラストを用いるなど、印象に残る、かつ雰囲気づくりにも寄与する工夫が施されていました。また常に各方面へアンテナを張り、何か不足が生じた際には即時に動き出すことで滞りない稽古・本番の進行に努めていました。そしてなにより携わる出演者・スタッフの皆さまとの頻繁な対話を通して、それぞれに必要な対応や道具を正確に把握されていました。徹底的に人を知るこの取り組みこそが、全員にとって過ごしやすい空間を創出するのだと感じました。
実際に行った業務の中で印象的だったものとして、ロビーのフォトスポット製作が挙げられます。劇中のキャラクターを模した仮面をはじめとした小物をつくり、終演後の企画として設置しました。
お客様の思い出としてたくさん写真に収められる様子を見て、些細なことでも本公演に貢献することができた実感がありました。

世田谷パブリックシアター担当者コメント:法月智美
『キャプテン・アメイジング』制作コースには3名のインターン生が、6月の稽古初日から本番までの約1カ月半、ご参加いただきました。
ケータリングの準備や稽古場・楽屋の片づけなど創作環境を支える日々の細かな業務から、SNSでの情報発信、当日のロビーで実施するフォトスポットの企画など、幅広い業務を体験していただきました。
長期間に渡り創造の最前線で活動したことにより、どのような過程を経て一つの作品ができあがっていくのか、また各セクションのスタッフがどのような役割を担っているのか、演劇作品の創造過程を間近で体感し知っていただくことができたかと思います。
ロビーで実施したフォトスポット企画では、当初はなかなかお客様に足を止めていただくことができませんでしたが、配置の仕方やお声がけの方法など、インターン生同士で意見交換をしながら試行錯誤していくことで、最終的には多くのお客様に楽しんでいただける人気スポットとなりました。自ら企画し準備したものが、お客様に届き楽しんでいただけることを身をもって体験できたことは、皆さんにとって大きな自信につながったのではないかと感じております。
この約1カ月半で得た多くの経験・出会いが、舞台芸術分野をはじめ皆さんが目指す進路のきっかけやヒントにつながっていけば幸いです。そしてそれぞれの希望する道でご活躍されることを心から願っております。
(2025年9月18日)
