ネットTAM

キャリアバンクインタビュー 第2回
高山健太郎さん(株式会社artness代表取締役)

アートジョブフェアを開催するKAIKA 東京にて

ネットTAMの「キャリアバンク」は、芸術文化分野の求人情報を集積する掲示板です。求人情報を集積し広く公開することで、アートマネジメント分野における人材の流動性を高め、全国各地の芸術文化活動を人材面から活性化することを目標に設置しました。

「キャリアバンク」を実際ご利用いただいている方々にインタビューし、アートマネジメントにかかわる雇用状況や環境の「今」をお伝えしながら、あなたにとってのキャリアバンクそしてネットTAMをお聞きします。

第2回は株式会社artness代表取締役の高山健太郎さんにお話をうかがいました。高山さんのアートの始まりは、ベネッセ・アートサイト直島の地中美術館のボランティア。それからさまざまなプロセスを経て、日本初となるアートジョブフェアを今年開催することになりました。

現在のお仕事は何をされていますか?

「GO FOR KOGEI 2022」の共同キュレーターや「ART JOB FAIR」の立ち上げなどアートプロジェクトのキュレーションやプロデュースを手がけています。

これまでされてきたアートのお仕事について教えてください。

ネットTAMさんがスタートした2004年から私のキャリアがはじまりました。2004年に地中美術館にボランティアとして働き出し、アルバイト、契約社員、正社員を経て、2011年まで直島、豊島、犬島の美術館の立ち上げや運営に携わりました。その後、2013年にディレクターとして民間アート会社ノエチカの立ち上げにかかわり、石川県で工芸のまちづくりや工芸に特化したアートフェアの立ち上げに携わりました。38歳で独立し、2021年にアート会社artnessを立ち上げました。

キャリアバンクを利用したきっかけや仕事との出会いについて教えてください。

雇用側と求職側の双方の立場でキャリアバンクを利用してきました。福武財団では、アートプロジェクトの求人募集側で利用し、退社した後は、キャリアバンクで仕事を探しました。結果、仕事探しでは縁が結ばれなく、人伝ての紹介により石川県で働くことになりました。

企画・主催される「ART JOB FAIR 2023」はどんな催しですか?

アートジョブフェアは、アートの仕事や仲間に出会える日本初のアート業界に特化したジョブフェアです。2023年1月28日(土)、29日(日)にアートストレージホテル KAIKA 東京にて開催します。

文化芸術の担い手を求めている全国各地のアート団体10社が出展し、齋藤精一さん等、多彩な講師が出演し、アート業界のキャリアアップに役立つ8つの講座も開催します。

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アートジョブフェアのロゴ

なぜ「ART JOB FAIR 2023」企画したのか、きっかけを教えてください。

新型コロナウィルス感染症によって、文化芸術の活動の自粛や中止、延期はアーティストだけではなく、芸術表現を支える担い手の雇用や育成にも大きな影響をもたらしたと感じています。

偶然参加した、アーツカウンシル東京が主催する「芸術文化創造活動の担い手のためのキャパシティビルディング講座」で出会った演劇や映画や音楽の他領域の担い手と話す中で、私は現代美術が主な活動領域でしたが、“文化芸術領域全般で人生設計がしづらい”、“キャリアアップやスキルアップがしづらい”といった共通した課題を知りました。

コロナ禍の自粛期間中、課題解決を図る方法を考え続けた結果たどりついたのが、アートの仕事や仲間に出会えるジョブフェア「ART JOB FAIR」です。「アートの働き方に光をあてる」をテーマに、求人情報をオープンにし、誰でも参加できる透明性の高い、文化芸術の担い手のリアルな出会いの場をフェアというかたちで開催します。

希望の職種や人材を見つけることが難しいアート業界だからこそ、お互いがリアルに出会い、長く話をすことで共振できる相手と出会えるのではないかと考えています。またさまざまな領域や職域の人が参加することで、キャリアアップ、スキルアップの方法が多面的に表出できるのではないかと考えています。

キャパシティビルディング講座で出会った仲間も初回のアートジョブフェアに出展してくれることになりました。人と人のマッチングだけではなく、文化芸術の働き方の社会的価値を高め、底上げをしていくような場を育んでいきたいと考えています。

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講座の様子(写真提供:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京)

「こんな仕事があったらいいな」、「あんなことをやってみたい」と思うアートのお仕事を教えてください。

20代、30代のころは、アートの仕事のやり方を教わり、さまざまなプロジェクトに携わりながら、スキルアップやキャリアップをしてきました。独立し40代を迎えた今は、アートの仕事を自分でつくることが挑戦です。独立と同時にコロナ禍で、生活や社会に大きな変化が起こりました。あったらいいなと思うけれど、誰もチャレンジしなかったことなど、自分がなすべきことは何かを自問自答しながら日々取り組んでいます。

あなたにとってキャリアバンクとはどんな存在ですか?

アートジョブフェアを立ち上げるにあたり、「アートジョブ」をどこまで含めるべきか悩んでいたときに、前述のキャパシティビルディング講座のファシリテーターをされていて、以前ネットTAMのご担当でもあった若林朋子さんに相談でき、キャリアバンクでは「Art related jobs=アートにかかわる仕事」としていると聞いて、大変参考になりました。

文化芸術を支える人に光をあてつづけたキャリアバンクがあるからこそ、アートジョブフェアができたのだと考えています。このインタビューを通して、2004年から一貫して全国各地の担い手を支援していることを知り、日本の文化芸術になくてはならないセーフティネットのような存在だと思います。

キャリアバンクに対するご要望をお聞かせください。

キャリアバンクだけではなく、アートジョブフェアもそうなのですが、文化芸術活動の全般的な課題や要望として、全国各地にアートジョブがどれだけあるのか、そこで働く人はどれぐらいいて、どういう人なのかなど実態が数字で計れないことが今の一番の課題です。アートジョブフェアを継続し、認知を広めていくためにも、全国各地の文化芸術活動や労働環境の実態把握が求められていると感じています。

最後にお聞きします。あなたにとってネットTAMとはなんですか?

セーフティネット。

ありがとうございました

ART JOB FAIR 2023

  • 会期:2023年1月28日(土)11:00 - 18:00、1月29日(日)11:00 - 18:00
  • 入場無料(ウェブサイトでの事前オンライン受付)
  • 会場KAIKA 東京by THE SHARE HOTELS(東京都墨田区本所2-16-5)
  • 主催株式会社artness
  • 協賛株式会社ロフトワーク、三菱地所株式会社
  • 後援公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
  • ウェブhttps://artjobfair.jp/

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高山健太郎さん(株式会社artness代表取締役)
1982年大阪市生まれ。2004年公益財団法人福武財団に入社 。直島、豊島、犬島の美術館の立ち上げやアートプロジェクトに携わる。2013年にディレクターとして文化事業会社ノエチカの創業に携わり、「KOGEI Art Fair Kanazawa」や「KUTANism」など石川県の地域文化である工芸のまちづくりやツーリズムなどに8年間携わる。2021年アート事業会社のartnessを創業。「GO FOR KOGEI 2022」特別展共同キュレーターや「ART JOB FAIR」などアートプロジェクトのキュレーションやプロデュースを手掛けている。

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