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アートマネジメントのインターン現場レポート~世田谷パブリックシアター(5)

先日より連載の2022年度 世田谷パブリックシアター夏休み大学生インターン。

プログラムの最終日には、世田谷パブリックシアター・シアタートラムの2つの劇場を支える各分野のプロフェッショナルによるレクチャーと、劇場ツアーが行われました。アートマネジメント・劇場運営の基礎から応用まで、<学芸> <企画制作> <広報・営業> について、舞台芸術の最前線の現場で働くスタッフから直に学ぶ貴重な機会となりました。

今回でインターン連載も最終回、レクチャーの感想と合わせて、学生の皆さまがインターンを通して感じたこと学んだことについて、ご紹介いたします。

(第1回はこちら:インターン概要&第1日目活動レポート
(第2回はこちら:第2日目活動レポート
(第3回はこちら:第5日目活動レポート
(第4回はこちら:『流星スプーン』本番 活動レポート

山本結:ステージ編『せたがや 夏いちらくご』&『流星スプーン』コース
(立教大学 現代心理学部映像身体学科)

私はこのインターンシップを通して、子どもがパフォーマンスをどのように知覚し、どのように変化していくのかというパフォーマンス科学における学びを実践的な経験から深めたいと思い、参加しました。

Cコースとして『流星スプーン』と『夏いちらくご』の 2つのプログラムに参加し、両者とも子どもを対象にするキッズプログラムでありながら、本質には大きな差や違いがあることを実感しました。

『夏いちらくご』では、子どもの視点や知覚の幅の広さを利用し、そしてそれを広げ、より高めていく効果を生み出していると考えました。子どもがわからない言葉があるときは、知覚する幅を広げ、噺家の細かい仕草や表情にフォーカスをします。大人とは異なる感性や知覚、捉え方にアプローチでき、子どもの想像力や視野の多様性を高めることが可能であるからこそ、キッズプログラムとしての役割を果たしていると考えました。

『流星スプーン』は、役を演じることがすべての子どもに求められます。セリフを発するだけではなく、役を自分と切り離して捉え、舞台上で体現し表現することは、自我の認識に強く結びつくと考えます。また舞台美術を動かすなども含めて作品をつくるという点に、他者をサポートするために、自分はどのような行動をするべきなのか、その行動を体現することが求められるという経験は、自分とは異なる他者の存在を意識する力を育むと考えました。

この経験を通して、子どもへのアプローチ方法の多様性を学びました。子どもを対象とする場合、限定的な側面や観点において、効果や機能を高めるのではなく、成長して変化できる可能性を多くの方向に持つからこそ、プログラム自体の柔軟性と幅広さが求められることがインターシップ全体を通しての発見であり、これからも学びや研究に活かしていきたいと感じました。

藤崎春花:ステージ編『流星スプーン』コース
(早稲田大学 文学研究科)

今回のインターンを通して、劇場という広い空間の中で演出家を筆頭にスタッフそして出演者がどれほど、お互いを信頼し、作品との距離感を縮めていけるのかが大切であることを学びました。だからこそ、現場にかかわる一人ひとりの仕事の責任が重いこともわかりました。このような学びを通して、私はこのインターン期間で、今まで自分に足りなかった「その場で自分ができることは何か」と瞬時に考える力を磨くことができたのでないかと思っています。

インターン最終日に行われたレクチャーでは、実際に劇場で働くさまざまなセクションの方のお話を聞き、世田谷パブリックシアターが日々どのように運営されているのかについて具体的に想像することができました。公共劇場だからこそつくることができる作品、事業があることを再認識し、そこに大きな魅力を感じました。

今まで、子どもの教育にとって芸術文化は力になるということを理論的には学んできましたが、『流星スプーン』ではその教えが実践の場で一致する瞬間に立ち会うことができたと感じました。最初の方は、演技に戸惑いがあった子どもたちも、稽古を通して、表現に正解がないことを学び、のびのびと取り組むことで、終演後は自信に満ちあふれた表情をしていたのも印象的でした。そのような子どもたちの成長の場に少しでもかかわれたことがうれしかったです。

普段の劇場では、見ることのできなかった、人、もの、ことに出会ったことによって、劇場がより開放的で、そこで働いている人、製作をしている人だけでなく、訪れるすべての人のものであるという認識が強くなったように感じます。劇場の外だけでなく、中の魅力を沢山知ることのできたおかげで、間違いなく世田谷パブリックシアター、劇場という空間がさらに好きになりました。そして、いつか劇場で働きたいという気持ちが強くなりました。

中山穂春:ステージ編『流星スプーン』コース
(桜美林大学 芸術文化学群 演劇ダンス専修)

エントリーシートに「地域と人と身近である劇場で創作する現場を体感したい」と意気込み、このインターンシップに挑みました。

実際にインターン生として『流星スプーン』にかかわってみると、舞台での可能性を信じた事業であると強く感じました。芸術監督である白井晃さんをはじめ、そっと見守りていねいにつくり上げる各部署のスタッフの皆さんとともに劇場で時間を過ごすことで、皆さんの創作に対しての思いを少しだけ体感することができたと思えました。そして制作としての作品とのかかわり方を学び、公共劇場としての世田谷パブリックシアターの強みをより考えるようになりました。自由度の高い劇場という特徴や地域を理解したうえでの公演ラインナップに、舞台芸術の可能性をさらに感じたときに、ジェンダー、障がい、貧困、戦争。こういった問題を生み出してきてしまった社会と呼ばれる公の中でこの先も生きていかないといけない。言葉とか、景色とか、感情とか、何もかも越えて自分自身が体感したものを信じ続けたいという気持ちが強くなりました。こぼれ落ちてしまわないように、学び続けたいと考えます。

劇場が開けた場所となるように、挑戦し続けられる場所となるように考えていきたいと思います。

この劇場で見たもの感じたものがすべてではないことを知っています。しかし、この劇場で見たもの感じたものは紛れもない事実です。事実が存在する数日間の時間をわたしはこの先も大切にしていきたいと感じました。

パブリックシアター職員によるレクチャー

パブリックシアタースタッフによるレクチャー

パブリックシアター見学

パブリックシアター見学

パブリックシアター楽屋見学

パブリックシアター楽屋見学

シアタートラム見学

シアタートラム見学

搬入口見学

搬入口見学

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