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アートの力、社会的価値>船、山にのぼる

昨年3月に開催した「トヨタ・アートマネジメントフォーラム2007」では、<アートの力、社会的価値>を総合テーマに、アートの可能性を多様な切り口で可視化・言語化することを試みました。参加申込者からも多数のコメントが寄せられ、テーマへの関心度の高さを実感しました。

びわ湖ホールや大阪など、行政の文化予算について考えさせられることが多いこの春、改めてこのテーマを真剣に議論する必要がでてきたように思います。

しばらく前、「船、山にのぼる」というドキュメンタリー映画のチラシをいただきました(25日まで東京・渋谷で、26日から大阪で上映)。ダムに沈みゆく村で、クリエイティブ集団phスタジオメンバーらが住民の協力を得て、伐採される木材で巨大船(いかだ的)をつくり、それを山に登らせるまでの12年間におよぶ活動の記録です。

船がどうやって山を登るの?!という素朴な疑問と、この世知辛いご時世にあって12年という長期プロジェクトであることに興味を持ち、私は昨年10月に開催された完成試写会に参加したのですが、むしろ、映画のなかでインタビューされていた、一般の住民のおじいさんの言葉が、半年前のフォーラムのテーマを思い出させて印象的でした。

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▲「船、山にのぼる」公式サイト

確かおじいさんは、ふるさとの村がダムに沈んでなくなってしまうという事実は辛い寂しいことだけれども、こうした(アートの)プロジェクトがあることで気持ちが前向きに明るくなる、というようなことをおっしゃっていました(記憶違いでしたらすみません)。

「ダムで沈みゆく村」にアートが問いかけてきたことに対して、工事関係者や建設省(現国土交通省)も協力してくれたそうで、ちょっと驚きました。アートならではの力が動かしたのでしょうか。もちろん、プロジェクトメンバーの優れた手腕と綿密な段取りあってのことなのは言うに及びませんが。

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「アートの力、社会的価値」は言葉にすると嘘っぽくなる、という意見も一理あると思います。でも、言葉で説明できないと、アートの存在すら危うくなることもある。特に、アートマネジメントの現場は、自分の言語をもち、事例を集め、いつでも説明できるように準備しておく必要があるのではないでしょうか----「船山」チラシを見てそんなことを思いました。

【参考情報】
灰塚アースワークプロジェクト
灰塚ダム管理支所「アースワーク宣言」 (>「灰塚ダムができるまで」のページ)

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