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『現代アートビジネス』

ギャラリスト小山登美夫さん著の『現代アートビジネス』が、アスキー新書より刊行された。編集部よりご紹介いただき、早速読んでみた。

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現代美術業界の仕組みを知るのに格好の一冊である。現代美術業界とマーケットのシステムが丁寧に解説されている。

帯句には、「奈良美智、村上隆を世に出した仕掛け人が語る、アートとお金の関係とは?」とあるが、著者の真意はアートとお金の話よりもむしろ、業界の不透明さを払拭したい、多くの人に現代美術をもっと自分に関係あるものと感じてほしい、日本の現代アートマーケットをもっと成熟させたい、という切なる願いの表出にあるように思う。ちょっとした現代美術好景気といわれている今だからこそ、と。

現代美術を遠いものと思っている人たちには楽しみ方のコツを、メディアや政治家、経済界、美術館関係者らには、世界と比べた日本の現代美術業界の課題(危機)を発信している。

現代美術マーケットの最前線にいる著者の語りは、さすが臨場感がある(ギャラリスト小山氏が生まれるまで的な第1章、奈良さんと村上さんの対極論などはやはり興味深い)し、平易な文章でつづられているのも何よりだ。

101TOKYO」等の新たなスタイルの参入も含め、東京では今春「アートフェア」が盛り上がったが、そこにいたるまでをざっと俯瞰できる「日本アートフェア興亡記」も、変遷をずっと見てきた著者ならではだ。

GW中の読書におすすめです。

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