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現場目線が光る、金沢市職員の「アートマネジメントとまちづくり」考

トヨタ・アートマネジメントフォーラムの終了後間もない2007年3月15日、トヨタ自動車東京本社に金沢市から視察グループが来訪。トヨタの社会貢献活動、トヨタ・アートマネジメント、企業メセナ協議会についてお話しする機会がありました。

ご一行は、金沢市の文化政策部門ではなく、さまざまな部署の方が参加する職員研修ゼミナール「アートマネジメントとまちづくりゼミ」(金沢美術工芸大・角谷修先生がご指導)の方々。 企業局ガス課・維持管理課・営業開発課、福祉健康局生活支援課・福祉健康センター、総務局監理課、大学事務局、都市整備局区画整理課、市民局市民参画課・市民センター、教育委員会生涯学習課、財団経営管理課----まずは、みなさんのご所属に驚きました。

アートマネジメントとおよそ縁遠い部署の方々が、こうしてはるばるアートマネジメントのことで視察に来てくださっている。コレハスゴイ。気合が入っている。なんだか武者震いしたことでした。鋭い質問をいただきつつ、あっという間にプレゼン時間は過ぎ、精力的に東京での視察をこなすご一行はトヨタを後にされました。

そして先日、研究報告書が届きました。

ゼミ代表の木村さん曰く"役所の報告書らしからぬ赤"の表紙が印象的。読み始めると・・・表紙以上に心動かされたのは、その中身です。こんなにたくさんの現場に足を運び、多くの関係者に話を聞かれたんですね!角谷先生の方針「机上の空論ではなく現場感覚を重視。自ら体験することを前提に積極的にイベントやワークショップ、講演会等に参加する」を、12名の職員の方々が実践されたことが伝わってきます。職員研修ゼミとは思えない現場主義に脱帽。

現場に赴いて見聞きしたことや調べたことを、自分たちのまち金沢に照らして、率直に考えておられます。各章、各項目に、皆さん独自の分析・考察が、皆さん自身の言葉で入っている、ここが何よりすばらしい。かっこいい専門用語が並んでいるのに無味乾燥な研究報告が多い中、この報告書の行間からは「アートとまちづくり」を現場目線で理解しようと試みたあとがじんわりと伝わってくるのです。大事なのは、専門的なことをどれほど知っているかではなくて、どれだけ自分の言葉で真剣に考えたかということなんだなあと、気づかされます。ああ、こういう風に考えることができるんだと、ページを繰るたび何度も思ったことでした。フォーラムテーマもしっかり考えてくださっています↓

・・・・・今回のゼミの取材の中でも、もっとも強く感じたもののひとつが、アートが媒介するいろいろなものの「つながり」である。・・・・・アートを媒介にざまざまな分野のものを上手く連携させる、いわば「アートの横串を刺す」力ということになるだろう。・・・・トヨタ・アートマネジメントフォーラムのテーマ、「なぜ、いまアートなの?」----その答えの一つには「アートはいろいろなものをつなぐ力を秘めているから」ということができるだろう。  (第3章「アートの力と社会とのかかわり」P62)


専門部署でない方々が考えた、わがまち金沢のアートマネジメントとまちづくり。いろんな部署に、こうしたことを考えた方々が散らばっている金沢市はなんとも心強い。これこそが、文化的なまちの層の厚さだと思うのです。

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赤い表紙の報告書  

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裏表紙(拡大してます)の中央には・・・

※報告書はあくまで職員研修の一環で、文化関係部署以外の方々が、金沢市役所という視点から離れ、政策研究という視点で作成。金沢市の文化施策とは調整することなくまとめているので、市の文化施策とはイコールではない、とのことです。 また、本報告書は増刷の予定はなく配布は難しいそうです。希望者は、企業メセナ協議会資料室にて閲覧いただけます。

※金沢市には、職員研修の一環でゼミナールと研究グループがあるそうです。角谷ゼミ以外にも、 「<歩行空間を活かしたまちづくり>を考える」「震災に遭う前に金沢市の復興計画を考える」「ブログやモバイルマーケティングを使った情報戦略」といったゼミが。そのほか、自主的に研究を進める研究グループとして「まちづくりと一体となった交通戦略」「金沢固有の特徴を踏まえた町屋等伝統建築物の耐震改修法」「福祉行政と自治体行政計画」「化学物質の環境リスク」「道州制時代における金沢市のあり方」「市政協働の新たな展開について」 があるそうです。 10周年を迎えた角谷ゼミは、「文化施設の活性化とまちづくり」「市民連携とまちづくり」「にぎわいの連携とまちづくり」等、必ずテーマにまちづくりとつくのが特徴だそうです。他部署の人とも交わりあえる学びの場があるなんていいですね。

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