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浜松セッション

アートマネジメント・こと・はじめ

―地域にとって、美術は何ができるか―
開催日: 2002年11月 15・16・17日
開催地域: 浜松
会場: 静岡文化芸術大学
ジャンル: 美術
参加者数: 60人
コーディネーター: 静岡文化芸術大学 谷川真美

浜松セッションでは、コーディネーター自身が浜松という土地に赴任して持った個人的な実感から企画を始めたこともあって、正面から「地域」の問題にぶち当たるといった感じの、良くも悪くもシリアスなものになった。他のジャンルのアートよりも取り組みがやや弱い、と県内でも自認されている美術分野での開催ということも、より企画を難しくしたといえるかもしれない。

地域によっては、すでに広い意味でのアートイベントが数多く開催され、その実施結果に関して様々な問題が出ているようなところもあるだろうが、いっぽうで、アートイベント自体を開催するにあたってのノウハウの蓄積も、スタッフの共有知識もまだなく、それでもアートへの愛情を持ち、自分のいる地域の現状をなんとかしたいという熱意を持っている人々が散在しているというところもある。いうまでもなく我々の地域は後者であり、そういう意味ではパネラーらと一般の講座参加者の間で、まず認識を共有することの難しさがあった。しかし、さまざまなレベルで抱えている「この現状をなんとかしたい」という切羽詰った感情だけは、すべての参加者に共通であった。それまで一度もこのような美術セッションが行われたことがなかった同地での開催が、新しく「アートマネジメント」の入り口に立つためのきっかけになったという参加者もいたことが、あえていうならこのセッションの意義だったのではないだろうか。

このような地域においては、アートに関してすでに何らかの実務についている者同士は、絶対数が少なく日々の仕事に追われるために、ネットワークを有効に活用することも難しいのが現実だが、それでも、セッションでの経験を布石として、草の根的な活動が徐々にお互いにつながりを持ちつつあるところもあり、より長期的なスパンでの活動を促すためにはさらなる研鑚の機会が必要だろう。TAMの投げた「石」の責任を改めていま感じているところである。

[静岡文化芸術大学 谷川真美/04年8月]

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