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浪岡セッション

映画祭メチエ

―新しいアートマネジメントを目指して
開催日: 2001年11月 21・22日
開催地域: 浪岡
会場: 青森県浪岡町中世の館
ジャンル: 演劇
参加者数: 46人
コーディネーター: なみおか映画祭実行委員会 長谷川孝治

TAMで初めての「映画」アートマネジメント講座は、様々な可能性を孕みつつ終了した。正確には「映画祭」のマネジメントに関する講座である。

映画祭の技術とは、作品の選定・組み合わせ・映画そのものへの深い理解に他ならない。しかも、映画に対する愛を欠いていては成立しないのである。107年間の映画史は、作られつつある映画と消えつつある映画の攻防の歴史であった。映画祭を作り上げるということは、常に新たな映画史観を構築することである。

本講座がなみおか映画祭の現場で開催されたことは決して故なきことではない。そこには映画を見せる側と見せられる側の攻防が展開されていたからだ。それは、映画祭スタッフの映画史観と観客のそれがぶつかり合う場だと言い換えることができる。受講者は、ギリギリまで到着しないフィルムを忍耐と確信を持って待つ映画祭スタッフの姿、古い映画を保存する修復者の姿、映写技師の姿、未見のフィルム群に刻々と白熱していく観客の姿を目撃したはずだ。映画祭が成立する瞬間に立ち合うことは、そのまま本講座最大のセッションであった。

世界では、少なく見積もっても毎年3000本の映画が製作されている。映画祭を作り上げるとは、今まで製作されてきたおびただしいフィルム相互のシークェンス(組み合わせ)を考え抜き、実行することに他ならない。誰かにとって重要な映画は、別な誰かにとって必ずしも重要であるとは限らず、しかし、個人的事情を越えて屹立する映画は確実にあるのである。

もしも、TAMで映画をテーマとしたセッションが何処かで継続されるとしたら、次の課題は作られつつある優れた映画をどのようにしたらサポートできるかを考えることであり、その製作の現場に映画祭が積極的に荷担することであるだろう。デジタルムービーの普及は従来の映画製作のしきたりとバジェットを変えてきた。バラバラに存在するのではなく、横断的に繋がること、映画祭開催のメチエ(技術)を獲得することは、演劇や美術や音楽を繋ぐためのスキルを獲得することでもある筈だ。

[なみおか映画祭アソシエート・ディレクター 長谷川孝治/02年9月]

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