ネットTAM

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青森セッション

ミューズたちの新世紀

―新たな芸術環境を醸成するためのセッション
開催日: 1999年10月 30・31日
開催地域: 青森
会場: 青森市国際交流ハウス、聖パトリック教会
ジャンル: 美術
参加者数: 140人
コーディネーター: 青森県美術館整備・芸術パーク構想推進室 立木祥一郎

TAM青森の開催にあたり考えたこと。青森では県の美術館、青森市の現代アートセンターのプロジェクトが進行中。双方にすでにディレクターがおりソフトの計画のただなか。ほんとに進行中のプロジェクトは、どきどきと面白い。だから、TAMでもプロジェクト作るというプロセスをリアルに伝えたかった。同時にTAM青森を作るプロセスそのものが、まさにアートマネジメントを実践するスタートになるかもしれない。うまい教師より、不器用でも生きてることを感じさせてくれた反面教師のほうが重要だったなあという経験則。パワフルで生なプロセスを開示することが受講者にとっても説得力を持ちえるだろう。

そういうわけで、実在の埠頭倉庫で架空の大展覧会を行うことを想定して行われたシンポジウムと、それを実現するためのマネジメント・プロセスの間接的な解析という形でセッションをセットした。また、青森の実行委員会には、アートに手慣れたスタッフだけではなく、なるべく、これまでアートにコミットしていない新しい人材を発掘したいと考えた。アート以外の職能、燻製の達人とか、ネブタ中毒者とか、福祉行政のプロとか、アートに無縁だった人が、アーティストなどと一緒に議論しながら、アートに自分の力が有効というのを実証する。このことは、地域の創造力を喚起し、アートマネジメントの領域を広げることになるだろう。そして焦点が結論ではなくプロセスであるからにはTAM青森以後も培われた関係性、運動性は継続し、公開されることになるだろう。

受講数93人と講座当日の実行委員33人。予想をはるかにうわまわる盛況。大いに盛り上がった青森実行委員たちは、甲子園球児のごとく、すぐに次ぎなるプロセスに入りつつある。

県の美術館公開設計コンペは国内のコンペ史上最大の激戦となり43才の気鋭の建築家、青木淳氏がグランプリに。ソフト構築から基本設計というハードに着手している。市のプロジェクトは安藤忠雄氏で設計中。TAM青森の実行委員会は、TAM運営を評価され、あおもりNPOを中心に今年秋の青森市の国際AIRの事業制作を委託された。シンポジウムでテーマにした埠頭の倉庫は、この企画で展示会場となることを検討中である。

[青森県美術館整備・芸術パーク構想推進室学芸主査 立木祥一郎/00年7月]

TAM開催地のその後

「TAM/A」から


「青森には個性的な人、自然、祭り、縄文遺跡などアートの原石がいっぱい、宝庫といえましょう。でも、いくら宝庫でも原石が埋もれたままではなにもおこりません。原石をいかに掘り起こし、磨き輝かせるか。そのために、アートと人々、地域、行政などをつなぎ、アートを巡る環境を整備・活性化するアートマネジメントが必要です。今、青森では、県美術館・芸術パークや青森市のアーティスト・イン・レジデンス(AIR)工房の計画等々、アートが地域を元気にし、地域がアートを育むための機運が高まっています。いよいよ新世紀。ミューズ(美の女神)たちが軽やかに舞踏する地域づくりのための可能性を探ります」

     (トヨタ・アートマネジメント講座青森セッションチラシから引用)

 1999年10月30・31日の2日間、青森市国際交流ハウスセミナー室においてトヨタ・アートマネジメント講座 Vol.24 青森セッション(TAM/A)が開催されました。私たちあおもりNPOサポートセンター(ANPOS)の呼びかけに33名の方が実行委員として運営に携わり、参加者も定員の70名を越える93名の方が参加してくれました。

 今思い起こしてみると、この時の参加者や運営にかかわった方々が、その後の青森県にアートの流れを作り活動を続けてきました。

 翌2000年、ANPOS は青森市の委託を受け、国際芸術センター青森(ACAC)開館プレイベント、インターナショナル・アーティスト・イン・レジデンス・青森「Puddles」の運営にあたり、約1か月間のイベントを無事に終えることができました。

 翌年、国際芸術センターの開館にあわせ、レジデンス・アーティストのサポートを行う「AIRS」が立ち上がり、その中の有志が地域の方を巻き込み、「ナンシー関展」を開催しました。これもまた大成功でした。

 八戸市には八戸市民が創造的にアートに親しめる場をともに創りあげようと、2001年「icanof」が立ち上がりました。

 2002年には弘前市に青森県最初のアートNPOとして「harappa」が誕生し、「A to Z」等、地域に根ざした活動を続けています。

 青森市にはアート創作・サポート・企画運営活動を立案・支援するために、2004年「アルチザン」が誕生し、空間実験室・劇場拠点創造プロジェクト等を行っています。

 そして、今年の3月には2つ目のアートNPO法人「アートコアあおもり」が設立されました。

 今年7月13日、県立美術館がオープンし、あの時--トヨタ・アートマネジメントが開催された時--望んでいた「もの」が、かたちとしてすべてできました。ハードがそろった訳です。

 青森ではそれぞれの組織が、設立以来、怒濤のごとく活動を行ってきました。そして、今も続けています。1999年の TAM/A の頃を考えると、信じられないようなスピードでここまできたのです。上記のすべてに TAM/A に関係した方々がかかわっています。

 無ければ無いで「どうして」と思うのに、あればあるで、「大丈夫なの」「このままでいいの」と不安になります。当事者として、また、NPOという立場からアート活動をみたときに、果たして、社会を変えようとする理念を持っているのか。マスターベーションで終わってはいないのか。社会に発信できているのか。そんな心配が頭をよぎります。

 私たちはもう一度原点に戻り、アートの果たす役割やアートの持つ力を考えることの必要な時期にきました。そして、緩やかに、それぞれ組織が特徴をいかし、機能していけるような仕組みがこれからは必要です。人の心がどう変わっていくか、青森の未来像をどう考えているのかが大切になってきます(もちろん、商店街の活性化とアートの活性化の双方がいかに連携できるかも大切です)。

 TAM/Aから7年。お互いの経験や知恵を交換し青森の未来を語り合うことが必要です。私たちは、そんな思いで昨年全国アートNPOフォーラムを青森に誘致することを提案し、今年(2006年)の10月14日・15日に青森市の八甲田丸で「全国アートNPOフォーラム in あおもり」を開催することにしました。

 TAM/Aから現在までの検証、そして、未来へ。

 青森は今、熱く、燃えています。弘前では harappa が「YOSHITOMO+graf A to Z」を開催し、八戸では icanof が企画展「TELOMERIC vol.3」開催し、青森では ARTizan が「空間実験室」等を開催しています。そして、「全国アートNPOフォーラム in あおもり実行委員会」が、県立美術館が開館した7月からフォーラムの当日まで、アートを起爆剤とした4つの社会実験プロジェクトを中心商店街を舞台に行っています。

 青森の未来を、日本の未来を一緒に考えませんか。ぜひ、青森にいらしてください。温泉はもちろん、水もお酒も魚も美味しいですよ。

(2006年8月18日)

注目! 現地情報

全国アートNPOフォーラム in 青森
ストリートファイティング
〜創造都市における市街戦術〜
「青森の街を、どうしていきたいか?」

日時:2006年10月14日(土)-15日(日)
会場:青函連絡船メモリアルシップ 八甲田丸

14日の基調報告「青森におけるクリエイティブファイティング」(松林拓司:東奥日報社社会部次長)では、1999年トヨタ・アートマネジメント講座から続く、青森のアートの歩みが凝縮して報告される。[詳細

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