分科会F

「美術館と社会」実行委員会
美術館と社会
美術館の位置する社会を描く

「アートと社会」や「アートの社会的価値を考える」際に、現代(当該)社会に対する「アート」のあり方に関しては、多くの議論がなされてきました。消費社会とポップアートの関係性、マルチカルチュラリズムと国際展という形式など。ただし、「消費社会」であるとか「マルチカルチュラリズム」と呼ばれる、「アート」そのものが拠ってたつ「社会」に対するアートマネージャーの診断は果たして妥当なものだったのでしょうか?その見込みの甘さに、現在山積する美術館の抱える問題が生じた側面があったとは言うことはできないでしょうか。そこで、当分科会では、戦後日本の美術館をその存立してきた社会との関係性のなかで検証したうえで、むしろアートの基盤となる「社会」そのものを積極的に論じ、「アートと社会」という関係性そのもの中から零れ落ちる、アートにおける「社会」的なるものへと到達することをめざします。

■「美術館と社会」実行委員会
「美術館と社会」実行委員会は、今回のトヨタ・アートマネジメントフォーラム2007のために組織されました。現役の学芸員3名、アートNPOのマネージャー、博物館研究者からなるバラエティに富んだ団体となっています。展示の企画者として、教育普及プログラムをはじめとした美術館のコミュニケーション機能の担当者として、美術館が発する情報の媒介者として、そしてメディア研究の視点から美術館を眼差す研究者として、それぞれの異なる視点が交錯することで、美術館を社会との関係性において議論するうえでの、何らかの新しい視点が生まれることを私たちも期待しています。

パネリスト

住友 文彦 (すみとも ふみひこ)
東京都現代美術館 学芸員/NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ
「アート&テクノロジーの過去と未来」展(2005、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC])、「Rapt!:20 contemporary artists from Japan」展(2006、共同企画、メルボルン/シドニー)などを企画。

稲庭 彩和子 (いなにわ さわこ)
神奈川県立近代美術館 学芸員
横浜生まれ。ロンドン大学大学院(UCL)修了後、小学校勤務を経て、2003年より神奈川県立近代美術館に勤務。専門はミュージアム・コミュニケーション、日本美術史。著書は『博物館の学びをつくりだす』(共著、ぎょうせい、2006)など。

藤高 晃右 (ふじたか こうすけ)
Tokyo Art Beat 共同設立者
東京大学経済学部卒業。現在NPO法人GADAGO理事として、バイリンガルアート情報サイトのTokyoartbeat.com(2004年10月設立)を運営。前職はソニーエリクソン(株)にて、研究開発費管理、マーケティング業務を担当(2003年〜2006年)。

光岡 寿郎 (みつおか としろう)
東京大学大学院博士課程/ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ
博物館研究、メディア論。論文=「ミュージアムスタディーズにおけるメディア論の可能性」など。共訳=『言葉と建築──語彙体系としてのモダニズム』(鹿島出版会、2005)。

モデレーター

天野 太郎 (あまの たろう)
横浜美術館 学芸員
北海道立近代美術館勤務(1982-88年)を経て、1988年より横浜美術館次席学芸員として国内外での数々の展覧会企画に携わり、2005年には「横浜トリエンナーレ2005」のキュレーターを務める。美術評論家連盟所属。

アートの力、こう考えます!

「アートの力・社会的価値」を分けて考えることは難しい。アートそれ自体が、常に特定の空間的・時間的(これが一般に「社会」と呼ばれるわけだが)文脈に縛られることなく存在できない以上、アートの力は、ある一定程度までは社会構築的なものであるとしかいいようがない。アートを論じれば、同時代の社会が析出されるし、逆もまた真である。このセッションで「社会」をめぐるズレを論じること、それ自体が、「アート」について考える上での多様な視点を提供することになればと考えている。

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