分科会A

NPO法人芸術資源開発機構【ARDA】
高齢化社会とアート環境
シルバーパワーが社会を変える

人類史に前例のない高齢化社会に突入した21世紀。特に日本の高齢化率は世界でもトップで2025年には30%に達し、2050年に世界の60歳以上の人口は20億を超えると予測され、現在の若者は将来、世界的規模の高齢化社会を生きることになる。シルバーパワーを取り入れた社会基軸の構築、若者から高齢者をメイン・ターゲットとする消費経済動向、バリアフリーのまちづくり、年齢や障害を超えたユニヴァーサルデザインへの取り組みなど、すべての人々が生きやすいインクルーシブソサエティ(包括的社会)への移行は、アートにおいても緊急に取り組むべき課題であるはず。美術館やNPO活動のなかで、シルバーパワーはどのように取り入れられ、活用され、創造的発見がもたらされているのか?国内外の事例を紹介しつつ、高齢化を見据えたアートマネジメントについて討議する。

■NPO法人芸術資源開発機構(ARDA) [ホームページ]
○活動主旨
芸術は個人が人間らしく生きるために欠くことのできない社会的な役割を持っている。ARDAの活動の目的は、芸術という資源を開発して、新しい可能性を社会に活かすこと。同時代に生きる人々が直面している諸問題を活動を通して一緒に考えたい。特に、少子高齢化社会に突入した現在、高齢者施設と児童館へ「アート・デリバリー」を継続実施しアートの力を証明している。
○活動内容
1. アート・デリバリー/専門家派遣、コーディネート事業:芸術家を各種施設へ派遣して創造の時間を共有する。
2. アート・プロジェクトの企画・運営:展覧会、まちづくりプロジェクト等。
3. 普及・人材育成事業:トーク、講座、セミナー等を企画運営
4. アートの調査・研究事業
5. 政策提言事業
6. NPO,NGOとネットワーク、全国のアート系NPOと連携

パネリスト

川原 啓嗣 (かわはら けいじ)
国際ユニヴァーサルデザイン協議会 専務理事
1976年九州芸術工科大学卒業。77年同大学専攻科修了。80年英国王立芸術大学院(Royal College of Art)修了。現在、株式会社キッド・ステューディオ代表取締役および国際ユニヴァーサルデザイン協議会専務理事。06年より名古屋学芸大学大学院教授を兼任する。通商産業省グッドデザイン賞審査委員他各種公的審議会委員、異業種協業デザインネットワーク「東京クリエイティブ」商品開発コーディネーター等を歴任。国際デザインコンペティションなど受賞多数。産業機器、情報機器、住宅設備機器、医療福祉機器他多岐に渡る工業製品の企画開発に携わる。とりわけユニヴァーサルデザイン、サステナブルデザインなど社会的テーマに関わる商品開発コンサルティングを得意としている。

稲庭 彩和子 (いなにわ さわこ)
神奈川県立近代美術館 学芸員
1972年横浜生まれ。青山学院大学修士課程にて日本美術史を専攻し、並行して東京国立博物館美術課学芸部絵画室に非常勤勤務。その後、神奈川県の研修助成を得て大英博物館に2年間在籍しつつロンドン大学(UCL)でミュージアム・コミュニケーションを研究し修士号取得。2003 年より神奈川県立近代美術館にて非常勤勤務を始める。文部科学省委嘱事業文化体験プログラム「きょうの はやまにみみをすます」や、美術館キット「Museum Box 宝箱」などを企画担当。2006年度はアート系NPOや地域の自治体など外部組織と連携した地域向けプログラムや「線の悦び・デッサンの魅惑」展を担当。著書に『博物館の学びをつくりだす』(共著、ぎょうせい、2006年)。

三ツ木 紀英 (みつき のりえ)
NPO法人ARDA/アートプロデューサー
1970年生まれ。92年実践女子大学文学部美学美術史学卒業。97-8年渡英。帰国後、英国で日本人作家のレジデンシィや展覧会コーディネートをしながら、狛江市の児童センターや民間の高齢者施設、その他人々の生活に近いところで、アート・プロジェクトを展開。近年はパブリックアートの企画にもかかわり、ソフトとハードの両面から社会とアートの出会いの場を創造することを志している。2004年よりNPO法人芸術資源開発機構のアート・デリバリー事業、プロジェクトコーディネーターに。他に、「神田そばあーと」プロデュース(2001年)、神奈川県立近代美術館葉山の「きょうのはやまにみみをすます」企画協力(2004年)、a piece of space APSオーガナイザー(2004年〜)等。

司会

並河 恵美子 (なみかわ えみこ)
NPO法人ARDA 代表
35年続いたルナミ画廊(銀座)を1998年閉廊。その間、若手作家の育成、海外交流に力を入れ、さまざまな企画を実施。特にオーストラリア・カウンシル・グラント、西シドニー大学在外研修員助成等を受け日豪文化交流の基礎を築く。99年、国際セミナー「みんなで作る地域活動とアート・センター」を企画開催後、「ドキュメント2000プロジェクト」助成を得て初めてのアウトリーチ活動「高齢者ホームへ出張・展覧会とワークショップ」を実施。「立川国際芸術祭2000」芸術監督として、アジア太平洋環諸国22女性作家とまち、人を結ぶ。2002年、杉並在住の美術関係者とNPO芸術資源開発機構を設立。2003年文化庁・文化ボランティア推進モデル事業「アート・デリバリー講座」企画運営。2004年、日本ASEAN交流年にインドネシアで杉並在住作家とジョイント展「ARTSCOPE」を開催。2005年〜2006年、「アート・デリバリー:介護する人される人のための出張芸術講座」をファイザープログラム〜心とからだのヘルスケアに関する市民活動支援を受け、杉並と立川の高齢者施設で継続中。

アートの力、こう考えます!

高齢化社会は障害や年齢を超えたひとりひとりの個別のニーズに合う生活が求められる。アートを取り巻く環境も変わらねば。アートが持つ力とは目には見えない潜在能力と感性を呼び起こすこと。ささやかな出来事の積み重ねが社会を変えていく。人間に直結していること、生きることの尊厳へ通じる社会的な価値をシルバーパワーが内包する。それをオープンにすることで、異なる視点でアートやデザインが見えてくることに期待!

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