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金沢セッション

〈市民参加〉と〈公共性〉ってなぁに?

開催日: 1997年 12月6・7日 13・14日
開催地域: 金沢
会場: 金沢市民芸術村 ・ドラマ工房
ジャンル: 演劇
参加者数: 140人
コーディネーター: 金沢市民芸術村 青海康男

96年10月にオープンした金沢市民芸術村は365日24時間低料金で使用できる練習施設として、市民の大きな注目の中スタートした。特に市民による自主運営、ディレクター制度は、利用者の市民参加意識を高めている。がしかし、この施設の文化ボランティア活動の大きな期待とその課題は、日増しに具体的になりつつあった。

98年12月、4日間にわたる金沢セッションは、こうした現場と、それを取り囲む演劇人の意識や、新しい制作の概念へと視野を拡大し、これからの課題としてこの施設に求められるもの、さらには舞台芸術を発信する市民参加型公共施設の未来の姿を提示しようというストーリーで展開された。

遠く県外から、施設見学も含め参加された方も多く、演劇のためのドラマ工房であるにもかかわらず、受益者として居直る地元演劇人に対し、時には市民から批判の声も出るほど、最終日にはその抱えている課題の大きさと深さが赤裸々となるセッションとなった。

終了後、番外編開催の声も多くあり、こうして新しい制作の概念を具体的、実践的に学習する場へと、この講座はその後発展することになった。今年度6講座おこなわれる「アート・マネジメント・セミナー」の開催は、私たちにとって、2000年ドラマ工房発信の制作公演のインターンシップとしての一歩となるだろう。

[金沢市民芸術村・ドラマ工房ディレクター 青海康男/98年7月]

TAM開催地のその後

求められる「市民力」の時代


 あれからもう14年も経っていたんですね。あの現場を離れて8年ですか...地元の小さな演劇組織の事務屋でしかなかった僕が、当時、金沢市が「若者の文化発信の拠点づくり」を目的に作った施設、金沢市民芸術村のドラマ工房ディレクターとして関わって、振り返ればとんでもない所まで来てしまったものです。

 あの時の金沢演劇状況を振り返ると「トヨタ・アートマネジメント講座」の開催は、まるで「黒船」がやってきたような事件でした。少なくとも当時のディレクターや市民参加で集まったスタッフたちにとって、「黒船」が運んできた「アートを社会に開く」という理念は、開催後にさまざまなプロセスと4年の歳月をかけて、2002年に完成したドラマ工房創造発信事業「蜃気楼」公演に大きな影響を及ぼしました。しかしながら、過度の負担と言われ続けた「市民ディレクター制度」は、任期交代制によって、蓄積された専門スキルを地元に定着させることなく、現在でも懸命な個人のバトンリレーで続いているようです。

 05年から市直営の金沢文化振興財団が指定管理で運営する「金沢文芸館」でも、若干の市民参加運営があるようですが、市民からの発信力までには至っていません。いま一番金沢文化をけん引している「金沢21世紀美術館」は、設立当初04年に市民ボランティア運営をスタートさせたものの、数々の教訓から、現在では事業単位ごとの「美術館ボランティア」を専門職がしっかりコーディネートし、キュレーターによる良質なマネジメントが定着しているようです。このまちには「市民力」をはぐくみ、育てる土壌が決して豊かとはいえないことが「芸術村」から「21美」への変遷からもうかがうことができます。

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話題の「金沢21世紀美術館」。市民の参加で円形建物全体を囲む「朝顔プロジェクト」を実施。

 思えば現場を離れてからのち、公共に参加できない市民参加の実態を経験し、NPOという切り口で市民をコーディネートする支援組織の専従者を志願したのは、やはり芸術村で果たせぬ想いがあったからだといま、あらためて思います。

 自主的・自発な意思で組織をつくり、新たな公共を担う運営主体として市民にサービスを提供する仕組みを持つことは、NPO法人に限ったことではありません。少子高齢化で限界町会(自治会)へ向かう住民の新たな決起もまた同じです。2年前からはそうした地域課題のアドバイザーとして、週半分ほどですが市役所へ出向するはめになってしまいました。行政の力技が通用しなくなった今日、いよいよ人と人、組織と組織を結ぶコーディネートが忙しい時代になってきました。アートに限らず、「市民の暮らし」全体がいま、新しい公共のマネジメントを求めています。あらためて「トヨタ・アートマネジメント講座」との出会いに感謝しています。

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金沢市民芸術村アート工房と田んぼを持つNPO法人、それに近隣の児童館とのマッチングをプロデュースした「田んぼにアートなかかしをつくる」プロジェクトの完成作品(2009年8月)。
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金沢市の協働をすすめる「市民フォーラム」で、協働についての寸劇をプロデュース。協働の理解促進に寸劇が一役 (2010年2月)。

(2010年3月9日)

注目! 現地情報

企業とNPOのアートコラボ

北國銀行3階のアートギャラリーをNPO法人金沢アートグミが運営。金沢市民の台所、「近江町いちば」の入り口にあり、美術館では扱えない、不思議な作品が楽しめます。

NPO法人金沢アートグミ

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