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40周年の節目を迎えて



 名古屋地区の小劇場演劇のセンター的役割を果たしてきた七ツ寺共同スタジオは1972年に創設し、2012年には40周年の節目を迎える。その始まりの70年代には世界的にも政治闘争や学生運動は力を失ったが、60年代から続く反体制的なアンダーグラウンドのさまざまな表現活動が盛んだった。七ツ寺でも東西のアングラ演劇、暗黒舞踏、実験映像など幅広いジャンルの公演が催され、表現者相互の交流も活発に行われた。自由な表現活動を保証し、支援するというのが七ツ寺の今日まで続く原点である。

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七ツ寺共同スタジオ外観

 私はかねがね、演劇が総合芸術の名のもとに美術や音楽を支配するあり方に対して疑問を抱いていた。異なったジャンルを対等にかかわり合わせることで新しい表現のあり方を見いだせないものかという思いを強くしていた。そこで、2003年から2年間にわたって「アーツプログラム実践講座」なるものを手がけた。これは身体表現・美術・音楽の3ジャンルの表現をかかわり合わせるコラボレーションのコンセプトを受講者がつくり、上演発表するというものだ。実際には異なった表現・表現者が切り込み合って何かをつくることの難しさを実感した。

 2010年に「あいちトリエンナーレ」が開かれ、建畠晢芸術監督が美術と舞台芸術とのかかわりをテーマ立てしたので、七ツ寺では「往還 演劇と美術との出会いのためのインスタレーションと上演」プロジェクトを組んで参加した。なかでも、スタジオの天井の梁構造を反転させ床に造型した栗本百合子作品の中で、イギリスの夭折した劇作家サラ・ケイン作品を上演した場合は、美術の造型力が演出の内実を引き上げることになり、引力の役割を果たしたといえよう。オルタナティブな空間をいかした4つの展示、2つの上演のため、作品が入れ替わるごとにスタジオの空間が変貌を遂げていくさまはわれながら新鮮な驚きであった。

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スタジオの中の様子

 2013年には2回目の「あいちトリエンナーレ」の開催が決まっている。条件が整い状況が許せば参加したいと思っている。優れたコンセプトによる体験型インスタレーションなどの提案を歓迎したい。
 40周年を機に私もそろそろ引退する。目下の課題は記念誌をまとめることだ。1999年に刊行した25周年記念誌『空間の祝杯』は、1つの場所の歴史にとどまらない同時代史的な編集内容が高い評価を受けた。その後の継承を総括するものになる。存続についてご心配をかけている古本屋猫飛横丁は、当分続けられる見通しがたったのでご安心ください。
 老いてもなお眼や耳を研ぎ澄ましていたい。自由な、開かれた空間を持続させるために。

(2011年10月18日)

今後の予定

2012年1、2月に五反田団とハイバイが来演。2012年度中に40年史を編集刊行、40周年記念公演を企画検討中。スタジオの空間をいかしたアートプロジェクトもやりたい。

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次回執筆者

バトンタッチメッセージ

麩(ふ)まんじゅうのおいしい和菓子屋さんのお嬢さんであったあなたが、名古屋でのキュレーター修業を経て、京都造形芸術大学舞台芸術研究センターのスタッフとして活躍している姿を見たのは大変うれしかった。その後、お会いしたのはあなたがプロデューサーを務める松田正隆さん主宰のマレビトの会がスタジオで公演した時でした。あの時にお聞きした舞鶴でアートプロジェクトを展開するという話はどうなりましたか。外部に向かって何かを展開する経験の少ない私にとって非常に関心があります。近況をお聞かせ願えれば幸いです。
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