
1998年に、トヨタ・アートマネジメント講座vol.18「アートで人を育てよう!」を千葉で開催し、ギャラリートーク担当のボランティア・スタッフをはじめ、作品やアーティストと鑑賞者をつなぐ担い手の育成について考える機会を持ってから、早13年が過ぎました。当時、DIC川村記念美術館(今春「川村記念美術館」から改称)では、他館より一歩先んじて毎日のガイドツアーを行う専門スタッフを置いていましたが(ただし、ボランティアではなく有償スタッフ)、その後、千葉県立美術館や千葉市美術館が作品解説のためのボランティアを募り、学芸員の指導を受けたスタッフが活動を開始し、現在にいたっています。美術館で過ごす時間が増え、心理的距離が近づいたためでしょう。彼らは年々自主性を強め、その役割を多様化させています。
DIC川村記念美術館では「美術教育サポート」と銘打って、学校の先生と連携をとりながら、美術館の作品の前で子どもたちと対話によるギャラリートークを実施する仕事を同じスタッフが担当するようになりました。同様に、千葉市美術館でも学校団体の来館を支援する「鑑賞リーダー」が内発的に生まれ、ギャラリートーク以上に同業務の重要性が増しているそうです。また、浮世絵のコレクションに親しんでもらいたいと、多色刷り木版画のワークショップをボランティアスタッフが企画立案して行っています。
一方、佐倉市立美術館では、夏休みの子ども向け事業である、シリーズ企画「体感する美術」において、97年に市民からスタッフを公募したのをきっかけにボランティア活動がさかんになり、教育普及事業を主体的に企画・運営するIFS(=Inter-art Forum Sakura)を発足(現在は休止中)。その後のボランティアによる活動を美術館内に位置づけました。
以上はいずれも、美術館の学芸員の仕事、もしくは教育普及的な仕事にかかわるボランティアの動きですが、彼らとは別に千葉で育まれた人材として、WiCAN(Work in Chiba Art Network Project)にかかわる千葉大学の学生たちを挙げねばなりません。2003年、千葉大学教育学部教授(当時)の長田謙一氏の全面的協力を得て、千葉市美術館が立ち上げたこのアートプロジェクトは、以降毎年続けられていますが、アーティスト主導で学生がそこにかかわるという当初のかたちから、学生たちの発案をアーティストとともに具現化するというものにシフトしてきたといいます。その理由について、千葉市美術館の学芸員・山根佳奈氏は「アーティスト主体だと、どうしても制作のお手伝いになりがち。アートの仲介者をきちんと育てたいと思っている」と話してくれました。
いずれの活動についても、試行錯誤の時期を経て少しずつ道が開け、ゆっくりと社会になじんでいくものといえるでしょう。彼らの今後を温かく見守りたいと思います。
(2011年12月21日)




