TAM SEED

第7回
第7回 第7回

 神戸でトヨタ・アートマネジメント講座(TAM)Vol.4を開催したのは、阪神・淡路大震災の翌々年、当時私が勤務していた公立文化施設・神戸アートビレッジセンター(以下KAVC)の開館から1年を迎えようとしていた春(1997年3月)でした。

 震災の翌年に開館したKAVC(1996年4月開館)に準備室時代から関わっていた私にとって、TAMは、震災体験時に心の奥底に刻み込まれたさまざまな思いが、私のアートマネジメントの原点であることを確認させてくれた貴重な機会となりました。

 その後、仕事で悩み苦しむ度に原点に立ち返ることが常となり、2009年4月からフリーランスとして、神戸という地にこだわってアートマネジメントに取り組むことを決めたのも、所属施設の制約を受けることなく、地域で働く生活者の視点に立って、アートが社会に果たす役割をじっくりと見定めたいという強い思いに突き動かされてのことでした。

 昨今の神戸では、震災を契機に撒かれた小さな種が、厳しい社会の風雪の中で、辛抱強く根を張り小さな芽を出そうとしています。

 アート分野においては、1996年にメセナ奨励賞を受賞した海文堂ギャラリーをルーツとするギャラリー島田が、全国的にも珍しい草の根基金「神戸文化支援基金」を立ち上げたこと、港町神戸のラジカルな空気をまとった元町高架下(モトコー)に、アートを媒介に21世紀型の集いの場を標榜する宇宙空間「プラネットEartH」が出現したこと、また震災を契機に続々と誕生したアートNPOや文化団体の共同拠点として「ハーバーランド文化村」が機能し始めたことなど。

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北野坂に静かに佇むギャラリー島田
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大蛇の食道のようなモトコーの一角に現れたプラネットEartH

 私自身も、震災をきっかけにご縁を得た演出家・森田雄三さんの尽力で、神戸という地で生活者の視点に立った演劇プログラムを実施し続けた結果、現在「イッセー尾形と兵庫のステキな先生たち」という企画で、地方における演劇事業の意義を実感するに至っています。

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兵庫のステキな先生たちの記念撮影(前列右から3人目が森田雄三さん)

 思うに、阪神・淡路大震災を経た神戸が、その体験を糧として、10余年の歳月をかけて芽吹かせようとしているものは、困窮する現代社会の中で確かな光を放つ希望の灯なのではないでしょうか。

 間もなく15回目の「1.17」が巡ってきます。

 まさにその当日神戸で行わる演劇公演に、私の古巣KAVCでの劇団太陽族による「行くも還るも~湊川新開地に捧ぐ~」があります。この作品は、関西と小劇場にこだわりながら、社会からドロップアウトしてしまう人間を描いて、生きることの本質を問い続けてきた劇作家・岩崎正裕さんの手による"神戸の物語"です。

 画期的な震災の日に行われるこの公演が、神戸にともった希望の灯に、また一つ彩りを添えてくれることを大いに期待しています。

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木枯らし舞う新開地商店街で"行くも還るも"

(2009年12月22日)