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リレーコラム



第44回 豊かな生活者たち 国際芸術センター青森学芸員/ARTizanキュレーター 日沼 禎子

 1999年、国際芸術センター青森(ACAC)の準備室に勤務が決まり、故郷である青森に戻り仕事を始めてからもうすぐ10年が経とうとしている。よもや自分がUターンするとは思っていなかった。芸術の仕事を志していた多感なお年頃にとって、青森に留まることは未来を失うに等しかった。青森から脱出して早く自立したいと目論み、大学進学を東京に決めた。それが、いま、「青森はアートで熱い」のだというのだから、本当に驚きである。

 その熱い青森に、大きな転機が訪れたのは、99年に行われた「トヨタ・アートマネジメント講座Vol.24/青森セッション(TAM/A)」が大きな要因のひとつであったと私は思っている。県立美術館(2006年開館)、ACAC(01年開館)ともに準備室であった当時、行政が立ち上げようとする両事業を、市民の目線でどのように受け止め、積極的に関わっていくことができるかが議論された。そこには、行政、NPO、アーティスト、日頃文化活動に興味を持つ方など、ジャンルを超えたさまざまな分野の人々が集まった。また、アーティストきむらとしろうじんじんによる「野点」も企画され、対話によるイメージづくりのみならず実際のアートの現場も持ち込まれた。

 そこで出会った人々を中心として、やがて弘前ではレンガ倉庫を会場にした「奈良美智展」が市民ボランティアにより開催され、その成功がNPO法人「harappa」設立へとつながった。青森ではACACのプレイベントを地元NPOとの協働により開催し、その活動がACACのレジデンス・サポーター「AIRS」結成として引継がれることとなった。また、AIRSメンバーが中心となり、青森市出身の消しゴム版画家、ナンシー関の展覧会を市内の古民家で開催し、事業終了後、運営メンバーが中心となり「ARTizan」を発足。現在、市中心街の空き店舗をリノベーションし、若いクリエーターの発表の場を提供する「空間実験室」の運営を中心とした活動を行っている。このほかにも多くの個性的な活動が、TAM/Aでの出会いに後押しされるように生まれた。

 そのことは、もちろんTAM/Aというすばらしいきっかけが作ったものであることに違いないが、その出会いを大切に場を作り上げようとしてきたこの地域の人々の熱意、努力の賜物なのである。生まれてくるものに立ち会える喜び。さまざまな人々、世代の垣根を越え互いに横断しながら考え、自らが手を動かし場を生み出す醍醐味を、青森の人々は日常的に味わっている。なんと、豊かな生活者であることか。いや、豊かに生きようとしているからこそできる活動なのか。私は、いまあらためて太古から受け継がれた、この地が湛えるエネルギーを強く感じているし、きっと、多くの地域には、そうした熱さが宿っているはずなのだ。

 さて、熱い青森をさらにアピールしているのが、今年4月に開館した十和田市現代美術館。ここでひとまず、この熱はおさまるのか。あるいは、新しい人材や場が、さらにニョキニョキ生まれていくのか。後者への期待を寄せながら、この地域でもう少しがんばってみようかな、と思っている。

4名の選抜作家
工事前。元美容室の空間を、ギャラリーへと作り変える。

4名の選抜作家
ギャラリー部分、工事中。

4名の選抜作家
ご近所のこどもたちも、時々お手伝いにやってくる。

4名の選抜作家
休憩時間のひとコマ。どんな空間にするか。互いのイメージづくりにとって一番大事な時間でもある。

(2008年7月21日)

日沼 禎子(ひぬま ていこ)
国際芸術センター青森学芸員/ARTizanキュレーター

日沼 禎子さん


プロフィール
国際芸術センター青森学芸員。女子美術大学芸術学部卒業後、ギャラリー運営企画会社勤務、美術雑誌「アトリエ」編集者等を経て、2001年より現職。04年アートサポート組織「ARTizan」設立に携わり現在キュレーター、05年から主催事業である「空間実験室」実行委員会実行委員長を兼任。


今後の予定

空間実験室は、今年お引越しをしました。
2008年は新しい拠点にて、総勢40組(約50名)以上にもなるクリエーターによる、週代わりの展示、ライブなどが連日ノンストップで行われます。
・会期:2008年7月25日(金)〜12月3日(水)

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次回執筆者

次回執筆者は、ココラボラトリー主宰の笹尾千草さんです。

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