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某月某日
なんともはや、田舎のホールはあわただしい。下校時に子どもたちがやってくる。昼下がりにおばちゃんが連れ立ってくる。夕方にじいさんが一休みに来る。とりたてて目的がなくてもやって来る人がいる。ぼんやりとロビーのベンチに座ったまま。暇つぶしなんでしょうね。
人口1800人ばかりの北海道朝日町に300席の多目的ホールとバンケットホールなどを備えた複合施設として朝日町サンライズホールがオープンしたのは1994年。10年経てば町の中にホールが存在するのが当然の風景になるらしい。
有名な芸能人を呼んでくれよと住民の皆さんはミーハー気分だが、そんな簡単に事は運ばない。なにせ朝日町は北海道の陸の孤島とでも言うほど不便な場所だもの。今どきコンビニの一軒もない町なんて日本じゃないよ。
ねえねえ、有名芸能人もいいけどさ、自分が舞台に立てば気持ちのいい拍手がもらえるかもよ。病み付きになるかどうかは保障できないけど、かなりワクワクできることは請合ってもいい。大人がダメなら子どもから。町の小・中学生はしょっちゅう舞台に立つ機会がある。ホームグラウンドみたいなものだから、舞台に立っても緊張しない。馴れというのは恐いもの。至極当然といった面持ちで舞台に出て行く。
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中学校祭の舞台から
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中学校の学校祭(文化祭)もホールが請け負う。演劇や音楽の稽古にはプロのアーティストをアウトリーチもしましょ。地域の皆さんにも手伝ってもらいましょ。学社融合、地域に開かれた学校、協働事業。理論より実践が大事。まずはやってみる。狭い学校に閉じこもっていたんじゃ始まらない。先生がおもしろがれば子どもも楽しんで取り組むのは道理。舞台が楽しいと感じた子どももいずれは親になる。それからが楽しいことの起きるタイミングなんでしょう。気の長い話だけど待つしかないんだよなぁ。
地域に密着した公共ホールのあり方というものはそれぞれの地域事情で運営が違うものなんだろうな。どこかのホールの成功例が参考にできないというのは辛いところだけど、全てがオリジナルだと思えば他所様と比較されることもなし。やれることならばなんでもやれよと地域の皆さんに尻を叩かれながら今日も仕事に向かうとしましょ。
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住民参加劇の1シーン
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某月某日
「今日のやつはつまらんなぁ」と公演の途中で客席から出てくるおばちゃん。ん?なにかあったかなとそっと舞台を覗いてみるとたしかになんかおかしい。舞台と客席がちぐはぐな感じ。有名なアーティストだからといってすてきな劇空間を作ってくれるとは限らない。
○○ファンというわけではなくて、チケットも安いし、暇もあるからとついでのようにほとんど毎回の公演に足を運んでくれたおばちゃんがこの10年間に観た舞台は100本をゆうに超えてるはず。観客として素直なんだよね。アーティストが誰であろうがおもしろくない時には帰っちゃう。知ってるはずもないアルバン・ベルク弦楽四重奏の演奏には感激してくれたし、同性愛のつかこうへいの「ロマンス」には涙した。これは観客としてはまともな評価だと思うんだけどね。
評論家やマニアのような雄弁に伝える言葉は持ってないけど、おばちゃんが素直に口にする言葉が俺にとっての評価基準。次回の公演は来てくれるのかなと心待ちにしてる自分が恐い。
(2005年6月13日)
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