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Q&A その2

東京オリンピックに企業が協賛という立場以外で、主体的にかかわれる可能性とは?


 前々回告知した受付フォームにさまざまな質問をいただきました。皆さまありがとうございました。その中から2つの質問に対して、それぞれ吉本光宏さんからの回答を掲載します。

Q2:ロンドンオリンピックで実施された文化政策の中で、企業が主体的にかかわったプログラムはありますか? BMWの車両ペインティング以外の取り組みがあれば、教えてください。 今後東京オリンピックに向けて、文化事業が検討させていくなかで、企業が協賛という立場ではなく、その事業に主体的にかかわれる可能性はありますか?
※カルチュラル・オリンピヤードの傘のなかで、企業メセナも仲間として一緒にコラボレーションしながら活動できるか否か、方向性を検討しているので、何かよいヒントをいただけたらありがたいと思っています。(会社員)

吉本さんの回答

 2012年ロンドン大会の文化プログラムの企業スポンサーは、プレミア・パートナーがオリンピック公式スポンサーでもあるBP(英国石油)とブリティッシュ・テレコム(BT)の2社、サポーターがBMW、ユーロスター、フレッシュフィールズ法律事務所、パナソニック、サムスンの5社でした。

 BPは2008〜11年にかけて毎年1回、英国全土で多彩な文化イベントを行った「Open Weekend」やロイヤルオペラハウスと共同で過去の五輪展示を行った「Olympic Journey」を、BTは国立ポートレートギャラリーと共同で、オリンピック参加を目指すアスリートやコーチの写真、映像を撮影した「Road to 2012」を支援しました。

 企業の特色を活かしたといえるのはパナソニックの「Film Nation」とBMWの「Art Drive!」でしょう。前者は、14〜25歳の青少年を対象とした短編映画のコンペティションで、受賞作品はオリンピック・パラリンピック期間中に上映されました。英国全土で映画監督やプロデューサーによる無料ワークショップも開催され、将来の映画産業の担い手を育成するねらいもありました。
 後者は、1975年からAlexander Calder、David Hockney、Jenny Holzer、加山又造、Jeff Koons、Roy Lichtenstein、Robert Rauschenberg、Andy Warholなど、そうそうたるアーティストに、自社の車をペイントしてもらったアートカーの展示でした。
 両者とも映像機器と自動車という自社製品を活用したメセナ的な取り組みですが、英国を代表する芸術機関が企画に関わっていた点も見逃せません。「Film Nation」は、映画やTV、デジタルメディア分野の斬新なアイディアや人材育成、ビジネスを支援するクリエイティブ・イングランドという組織と共同で実施されたもので、ワークショップには全国の映像専門機関が協力しました。「Art Drive!」は現代美術や映像作品の企画・展示で定評のあるICA(現代芸術研究所、Institute of Contemporary Art)の企画で、ロンドン東部の古びた立体駐車場での展示が実現しました。

 ロンドン五輪の文化プログラムの40%は何らかの形でデジタル技術を活用したもので、いわゆる創造産業の中小企業とコラボレーションが行われた例も少なくありません。例えば、エジンバラで行われた「Speed of Light」というプロジェクトでは、LEDを埋め込んだオリジナルスーツが開発されました。夜間、数十人のパフォーマーがアーサーズシートという小高い丘でパフォーマンスを行って大きな話題となり、12年秋の横浜のスマート・イルミネーションに招へいされました。

 また、「人生で一回限り(once-in-a-lifetime)」というスローガンに基づいたアーティストの斬新なアイディアを実現するため、英国では膨大な数の文化プログラムによって、3,000社を超えるビジネスパートナーが誕生したそうです。スポンサー企業として資金提供をするだけでなく、自社の技術開発やイノベーションにもつながるような支援。2020年五輪の文化プログラムでは、民間企業とアーティストの間にぜひそんなパートナーシップが誕生してほしいものです。

(2014年4月17日)

特別編 目次

1
2020年オリンピック・パラリンピックに文化の祭典を
~新たな成熟先進国のモデルを世界に提示するために
2
Q&A その1
東京オリンピックの文化プログラムが東京以外の地域を巻き込む場合の課題とは?
3
Q&A その2
東京オリンピックに企業が協賛という立場以外で、主体的にかかわれる可能性とは?
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