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Q&A その1

東京オリンピックの文化プログラムが東京以外の地域を巻き込む場合の課題とは?


 前回告知した受付フォームにさまざまな質問をいただきました。皆さまありがとうございました。その中から2つの質問に対して、今回と次回にわたりそれぞれ吉本光宏さんからの回答を掲載します。

Q1:カルチュラル・オリンピアード2012はロンドンの文化都市としてのイメージを国際的に高めただけでなく、地方都市の再生にも貢献しました。東京オリンピックの文化プログラムが開催地東京だけでなく、地域も巻き込んでいく場合の課題はなんですか? (学生)

吉本さんの回答

 2020年のオリンピック・パラリンピックが、開催地東京だけでなく、全国各地にどんな効果をもたらすことができるのか――。こと文化プログラムに限らず、これは大きな課題だと考えられます。 聖火リレーやサッカーの予選などを除いて、五輪大会はほとんど東京で開催されるはずです。だとすれば、文化プログラムをいかに全国展開できるかが、2020年の東京五輪の成功を左右すると言っても過言ではありません。

 2012年のロンドンでは、アーツカウンシルが大会4年前のカルチュラル・オリンピアードの開始にあわせて、いくつかの中核となる文化事業を立ち上げました。その中には、英国各地の隠れた歴史遺産の発見を促した「Discovering Places」や、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドそれぞれからアーティストにロンドン五輪を祝福するための斬新なアイディアを求めた「Artists Taking the Lead」など、全国を対象としたものが含まれていました。
 英国のアーツカウンシルには地域事務所があり、各地の主体性や独自性を尊重する考え方が定着しています。ロンドンの文化プログラムでは、全国を13の地域に分け、それぞれにクリエイティブ・プログラマーという専門家を配して、地方都市とコラボレーションを促進する体制を構築しました。

 こうした英国の取り組みも参考になると思いますが、2020年に日本で文化プログラムの全国展開を実現するためには、まず、オリンピック・パラリンピックが芸術や文化にとって大きなチャンスであることを、全国の一人でも多くの文化関係者が認識すること。それが第一歩となるような気がします。
 組織委員会あるいは文化庁や東京都が、地方公共団体や地方都市に呼びかけて、積極的な連携を促すことも重要でしょう。でもそれ以上に効果があると思われるのは、2020年に文化プログラムを実施したいと思う各地の芸術団体や文化施設、アートNPO、都道府県や市町村などが、自ら声をあげることではないでしょうか。

 各地で開催されているトリエンナーレやフェスティバルも、2020年をターゲットにしたプログラムを組み立てる。あるいは各地の文化資源を再発見し、カルチュラル・ツーリズムにつなげる。そんな可能性もあるでしょう。国や組織委員会には、全国一律ではなく、ぜひ、やる気のある都市や地域との連携や支援を望みたいと思います。

 そうしたプロセスを通じて、芸術活動の東京への一極集中が緩和され、各地で芸術の担い手が育成され、活躍の場が形成されること、そして2020年を一過性のイベントで終わることなく、それを継続、発展させる仕組みを作り上げていくこと。つまり、関係者が協力し合って、文化プログラムのレガシーを全国規模で構築するといった戦略も視野に入れてこれから準備を進めたいところです。

(2014年4月7日)

特別編 目次

1
2020年オリンピック・パラリンピックに文化の祭典を
~新たな成熟先進国のモデルを世界に提示するために
2
Q&A その1
東京オリンピックの文化プログラムが東京以外の地域を巻き込む場合の課題とは?
3
Q&A その2
東京オリンピックに企業が協賛という立場以外で、主体的にかかわれる可能性とは?
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