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 さて、指定管理者制度のこの記事も、今回で最後になります。最初に、指定管理者制度は、それなりに可能性を秘めたものであるということを述べました。本当にそうなのでしょうか。公の施設の管理を民間を含めて多様な主体に拓いたという意味では間違いなく可能性は広がったといえます。ただ、文化施設について、いきなり文化団体が施設管理に乗り出すのには難しい側面もあります。そもそも指定管理者制度が導入されたときに、総務省の担当部局が説明したことについて思い出してみましょう。いくつかの制度導入理由として、公共サービスを担える民間事業者が増えてきたことをあげていました。たとえば、体育施設などは典型的な事例といえます。県によっては、ゴルフ場を整備しているところがありますが、ゴルフ場自体は民間でも運営が行われており、民間のサービスの方が質が上回っていることが想像できます。また、観光施設であるホテルなどについても、わかりやすい事例かと思います。

 それでは文化施設はどうでしょうか。文化施設を通じてサービスを提供する民間企業は限られてきました。そのような民間企業であっても、そのサービスに限定して見た場合に営利的に成功しているかどうかはわかりません。民間で文化施設を経営している場合も、文化的・芸術的評価を得ようという意気込みは強くとも、企業的に運営することは一般に難しい分野です。しかしながら、民間企業であっても、非営利的にしか回していけないさまざまな芸術団体であっても、展示や、公演等を企画制作する技術や能力は間違いなくあります。ただ、それらがあたるかあたらないか(という書き方が適切かどうかはわかりませんが)は、やってみなければわからない。したがって、先に述べた民間企業であって公共サービスの提供を担える民間事業者が成長してきた分野であるかどうかという時に、似たようなサービスを提供できるけれども、公共施設があるその地域や地方自治体の人が、あたるかあたらないかも含めて楽しむのが文化活動なのだということを受け入れているかどうかということが問題になってくるということになります。これは相当に地域差がありそうな部分です。実はそのような地域差を解消していくことは文化政策の目標かと思いますが、あまりそのことを認識されているようには思えません。

 そういう領域であることを考えたときに、そのような領域を公共の文化施設に持ち込めるかどうかと考えたときに、私自身はそここそ公共でやってほしいと思うわけですが、地方自治体は残念ながら弱腰のところが多いようです。そうすると、とにかく施設だけ管理維持していてくれればいいという発想に向くわけであり、最低限の費用でビルメンテナンスだけをしてもらうところを指定管理者にするということになります。しかしながら、私が知っているビルメンテナンス会社も、問題意識を持っています。ただ施設の管理維持をするだけでは、文化施設として住民の期待にこたえているとは思えないところが出てきています。そのことを最初からわかっている施設管理系の会社は、やはりソフト面の充実をどのように図るかということで、共同する相手を探しています。大型でこれまでに既存の文化振興財団によってそれなりの成果を生み出してきた施設については、なかなか難しさがあるかと思いますが、小さな小規模施設などを視野に入れてみると、新しい運営の可能性が広がります。そこには新しい管理者の参入が可能になるということになります。

 たとえば、北海道富良野市の富良野演劇工場という文化施設は、「富良野を演劇のまちにしたい」という気持ちで成立したNPO法人ふらの演劇工房(NPO法人認証全国第1号)が指定管理者になっています。福岡市にある「ぽんプラザホール」「ゆめアール大橋」などの音楽、演劇練習場施設は、NPO法人福岡パフォーミングアーツプロジェクト(FPAP)が指定管理者です。FPAPは、その設立のミッションに「福岡・九州演劇舞台芸術文化活性化及び振興に関する活動を行い、以て広く公益に貢献すること」となっています。「広く公益」などというと、腰が引けてしまうかもしれませんが、「私たちのお客さん」以外の人(潜在的な観客や利用者?)も視野に入れるということかと思います。山中湖情報創造館は、NPO法人地域資料デジタル化研究会が指定管理者になっています。

 どこのNPOも公共サービスの提供という新しい分野に乗り出している分、さまざまな苦労があります。行政のやり方と自分たちのやり方に戸惑うことも多々あるかと思いますが、指定管理者に最初に応募した企業は皆そうであったはずです。指定管理者になると、行政と契約をすることになりますから、受ける側の責任も重要ですが、行政側も指定管理料を払います。もちろん自分たちのミッションと、公共サービスを提供するということとが、あまりにかけ離れている場合は、問題外ですが、そもそも芸術文化活動は、観客や他者あっての活動であり、ヨーロッパなどでは演劇やクラシック音楽、美術などの芸術分野が公共サービスとして提供されていることを考え合わせると、それほど相性の悪いものでもなさそうに思います。それでは、共同する相手を見つけるためにはどうすればいいか。とりあえず指定管理者の公募の説明会というのを聞きに行くことをお勧めします。誰かがあなたたちを探しているかもしれません。紙面に限りがあるので、このような分野を扱う地方自治体のあり方や、参入するかもしれない皆さんが官尊民卑的発想が強い地方自治体と対等にわたりあっていく方法なども重要なところなのですが、またの機会といたしましょう。

(2013年5月8日)

指定管理者制度入門 目次

1
指定管理者制度とは
2
指定管理者制度導入の背景
~規制緩和と地方分権
3
文化施設の運営の問題点
4
指定管理者の運用について
5
次のステップへ
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