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指定管理者の運用について



 これまでに制度導入の背景について述べてきました。それでは、指定管理者制度では、どのような管理者が選ばれているのでしょうか。また各地方自治体でどのように導入されているのでしょうか。具体的にみてみましょう。次の表を見てください。この表は、横浜市が設置した文化施設で、指定管理者制度を導入して管理運営させている施設の一覧表から抜粋してきたものです。左から施設名、そして指定期間、指定管理者の名称があります。指定管理者制度では、期間を定めて、管理者を決めることになっています。横浜市の場合、文化施設についてはこれまでおおむね5年を標準としてきており、大規模な医療施設については10年から30年を指定期間としてきました。ちなみに、現在東京都の文化施設を管理している指定管理者は平成21年から8年間となっています。他のところでは3年というところもあります。このように期間もそれぞれの地方自治体の実情等にあわせて自由に設定ができます。したがって横浜市の事例に戻すと、すでに表に掲げた施設は、指定管理者制度が導入されてから1回目の指定期間を終了していることがわかり、1回目と2回目で指定管理者が異なっているところがあることもわかります。
 また指定管理者は、一つの団体の場合もありますが、複数の団体が「共同事業体」を結成している場合もあります。また、その組み合わせも、地域の文化振興を担うために地方自治体によって設立された公益財団法人と株式会社、またNPO同士など(大倉山記念館)という形式のものから、その業種は広告代理店、ビルマネジメント会社、イベント企画会社、舞台照明会社までさまざまです。あらためて文化施設がさまざまな業種の複合体で運営されることがわかります。また、このさまざまな指定管理者を見るにつけ、文化施設で提供するサービスが一様ではないこともわかります。さて、それでは地方自治体はこれらの施設の指定管理者をどのように選ぶのでしょうか。

表1.横浜市の文化施設(指定管理者一覧から抜粋)
施設名指定期間指定管理者
開始終了
横浜みなとみらいホール 18.4.1 19.3.31 (財)横浜市芸術文化振興財団
19.4.1 24.3.31 (公財)横浜市芸術文化振興財団・東急グループ・(株)東京舞台照明共同事業体(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団・株式会社東急エージェンシー・株式会社東急コミュニティー・株式会社東京舞台照明)
横浜美術館 18.4.1 20.3.31 (財)横浜市芸術文化振興財団
20.4.1 25.3.31 横浜市芸術文化振興財団・相鉄エイジェンシー・三菱地所ビルマネジメント共同事業体
大倉山記念館
(大倉山公園集会施設)
18.4.1 23.3.31 アートネットワーク・ジャパンと大倉山水曜コンサート
23.4.1 28.3.31 相鉄エージェンシー・相鉄企業共同事業体
久良岐能舞台 18.9.1 23.3.31 (株)シグマコミュニケーション
23.4.1 28.3.31 (株)シグマコミュニケーション

 横浜市の場合、指定管理者の選定においては、「民間企業等を含む幅広い団体の参入を促すために原則として公募」で行っています。したがって、各施設に関して、公募要領が作成され、十分な周知期間を設けて公募を行うとしています。公募に関する説明会も行っており、応募を考えている団体が集まります。この公募要領において、横浜市が、指定管理者にどのような公共サービスの代行を依頼したいと考えているかが明確になっている必要があります。横浜市は平成18年3月に「横浜市の文化芸術政策に関する中期的方針」で、5つの基本方針を明らかにしています。このうちの「5. 魅力ある地域資源を活かした文化基盤を整備します」が文化施設の整備・運営に関するものであり、指定管理者を公募する際にも重要になってきます。それぞれの文化施設のミッションは設置条例に規定されていますが、公募を行うにあたって具体化したとのことです。設置条例というのは、地方自治体が公共施設を設置した場合につくられる法令のことで、そこには必ずこの施設の目的が記されています。ただし、条例では大まかな内容しか示されていない場合がほとんどです。たとえば文化施設で最も一般的なものは「地域文化の振興」をうたっているものですが、これは解釈の仕方もさまざまです。横浜市の場合は、それをもう少し具体化したということになります。

  1. 創造の場と機会を充実し、都市としての個性を創出し、世界に発信します
  2. 魅力ある都市空間の形成と創造的産業の集積を図り、都市の活力を高めます
  3. 文化芸術における市民との協働を促進し、新たな地域社会を形成します
  4. 創造の担い手づくりに投資します
  5. 魅力ある地域資源を活かした文化基盤を整備します

 このような文化芸術政策に関する方針を明確に掲げたうえで、できるだけ適切な管理者を選ぼうと努力していることがわかります。指定管理者に応募しようとする団体は、その方針をどのように具体的に実現できるかを示して、応募することになります。政令市である横浜市の場合、多くの文化施設を有していることも特徴です。文化芸術のジャンルによって施設が明確に分化しているうえ、神奈川県内における横浜市というだけではなく、日本におけるそれぞれの文化芸術ジャンルにおいて横浜市の施設が担う役割が高度に期待されている施設ともいえます。それぞれ専門性を有した文化施設を文化芸術政策という枠組みの中で役割を明確にしていくことは、ばらばらになりがちな専門施設を政策実現という観点から効果的に運営していくうえで、市が運営の政策方針を明確にすることが重要であることは間違いありません。しかしながら、これほどまでに文化芸術政策のことを考えて、指定管理者を選ぼうとしているところはむしろまれだといっても過言ではありません。後に記しますが、横浜市は、文化芸術施設にとってもあるべき指定管理者制度の運用方法も検討してきていますが、これはそれまでに横浜市が文化芸術を市の中の重要政策と位置づけていることのあらわれということができます。
 指定管理者制度が導入された当初、やはり横浜市が文化芸術の特性に配慮をしたプロポーザル方式を採用したことが話題になりました。ただ、公募制を採用しているところもあれば、非公募制のところもあります。具体的には、指定管理者制度へと移行したものの、それまでに管理運営を行っていた財団等をそのまま指定するという場合もあります。最終的には、その地方自治体の議会で承認されればよいわけですから、最も適切な管理者を選定するプロセスが公募であるか、非公募であるかを問わないということになるわけです。ただ非公募ということになると、新しい団体が参入する可能性を奪ってしまうことにもなりますので、それが適切な方法かどうかはわかりません。さらに、公募をしても、応募がない(応募する団体がいない)という場合もあります。施設の立地条件、規模、性格もさまざまです。また、同じような仕様の文化施設であっても、それが地方自治体の中でどのような施設と位置づけられているかによって、指定管理者に求めるものも異なります。財政状況が厳しい地方自治体においては、とにかく安く、建物の維持管理(メンテナンスと清掃?)だけをしてくれればいいと考えるところもあります。また、文化施設と一口にいっても自主事業を積極的に行っているところもあれば、住民に使用料を払ってもらって貸し出すだけの施設もあります。また、自主事業ではあるが、民間のプロモーターがやっているのと変わらない活動をしているところもあり、実に多種多様です。したがって、地方自治体の文化芸術政策の立案能力や財政力によって、選定の基準も、経済性や効率性ばかりが要求されることも多いということがいえます。

(2013年4月10日)

指定管理者制度入門 目次

1
指定管理者制度とは
2
指定管理者制度導入の背景
~規制緩和と地方分権
3
文化施設の運営の問題点
4
指定管理者の運用について
5
次のステップへ
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