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「アートと法律」に関するQ&A



前回まで4回にわたり連載してきた「アートに関する法律入門」。
最終回の今回は、ネットTAMユーザーから寄せられた質問への回答です。

Q1 「ワークショップ」といわれるものの著作権はあるのか?

このご質問につきましては、ワークショップの形態によってまったく異なってしまうため、今回のお答えの中では「ワークショップの中で、さまざまな著作物が作られる可能性がある」という指摘にとどめたいと思います。より詳しくは、『こどものためのワークショップその知財は誰のもの?』(ワークショップ知財研究会編、アム・プロモーション刊)という本が今年の春に発売されております。アーティスト、学芸員、研究者、教師、学生、プランナー等の多様な立場から、ワークショップと著作権を含む知的財産権の事例が挙げられていますので、ぜひ一読されることをお勧めします。

Q2 小学校でワークショップを実施した場合の、写真撮影とその掲載(一般公表用/内部資料用)について。現在は小学校の校長先生に了承を得ているが、本当は全員の保護者に許可を得るべきものなのか?

「本当は」ということはありません。校長先生から了承を得ているということ自体がマイナスに働くことはありませんから、基本的にはそれでよいと思います。もし仮に保護者がクレームをつけてきた場合に、校長先生から了承を得ているということで納得していただけないのであれば、その時に改めて対応を考えればよいし、そうするしかないと思われます。逆にすべての保護者に了承を得ていたとしても、その後クレームをつけられることはありえますから。

Q3 「トヨタ・アートマネジメントフォーラム」の新聞掲載記事を、ネットTAMに画像としてアップしても問題ないのか? 出稿された新聞の名前と日付を書いても、著作権に触れるか?

まず、著作権法上「引用」は無断でできます。ただし、記事自体を画像としてアップする場合、記事の量にもよりますが、全文のアップは「引用」といえるかどうか微妙な場合もあると思われます。さらに一緒に写真が掲載されていた場合は問題がやや複雑になります。写真については、著作権法上無断でできる「引用」と、許可が必要な「使用」の区別がよりいっそう曖昧なうえ、写真家は権利関係に敏感な場合が多いため、問題になる可能性が高いといえます。事前に新聞社に問い合わせをしておくのが安全だと思われます。

Q4 出版物に掲載するイラストを費用を払った上で描いてもらった。別の冊子やチラシに、そのイラストを転載することは可能か?→挿絵の著作権は、イラストレーターにあるのか、出版物の発行元にあるのか?

これは、「職務著作物」に当たるかどうかという判断になります。職務著作物に当たるかどうかはケースバイケースですので、ご質問からだけでは判断しきれませんが、職務著作物にあたるものだとすれば、著作権は発行元にあるため、転載は無断でできます。しかし、転載して使用する可能性がまったくないようにイラストレーターに伝えていた場合は、トラブルになった場合に不利になり得ます。

Q5 アート分野の活動にかかわる「保険」は、法律と何か関係はありますか? 絵画を借りるときにかける保険、ボランティア保険...など。(「入らねばならない」という決まりのある保険はあるのか?)

法律上で強制されている保険はありません。ただし、当事者同士の契約で保険をかけることが条項として入っていた場合、それを守らないのは契約違反となりえます。

Q6 文化庁の助成で出版物を作ったが、著作権は文化庁にあるとのこと。助成を受けると、すべての成果物や作品の著作権を失うのか。

この場合は、著作物を何にどう使用するかという点と、著作権のすべてを文化庁に帰属するという内容の契約かどうか、がまず問題となります。場合によっては、出版権のみが文化庁に譲渡され、その他の著作権は残っていると判断できる場合も、あるかもしれないです。しかし、基本的には契約遵守が安全であるのはいうまでもありません。
一度結んだ契約でも、当事者の合意があれば内容を変更することは自由です。具体的に何に使用したいか、といった話があれば、あとは個別に協議することもできますし、その交渉を経て、例えば文化庁側が「著作権を作者に返還するほうが合理的である」という判断にいたる可能性もありえます。
ですので、公募や助成などで、著作権が公募する側・助成する側に帰属されると明記されている場合でも、必ずしもネガティブ一辺倒に捉える必要はないと思います。「著作権」という言葉はどうしても一人歩きしがちですが、すべての契約はあとから当事者の交渉次第で変更しうるものだということも頭に入れておかれるといいと思います。

Q7 文化芸術振興基本法(PDF:560KB)において、国として取り組むべき指針が提示されたが、なかなか実行に移されなくても、問題ないのか。こういった法律は、どの程度の強制力があるものなのか?

法律的/政治的には問題がありますが、実際にそれを私たちがどのように不服申し立てをするかというと、これが非常に難しいのです。いわゆる「ザル法」というものです。結局、選挙で文化芸術振興基本法を実行に移すという公約を掲げた政党なり政治家に票を入れる程度のことしかできません

Q8 アート系のWEBを運営する場合、「免責事項」ではどの程度の内容をカバーしておくべきか。免責事項で書いておきさえすれば、本当に訴えられても大丈夫なものなのか。

申し訳ありませんが、完全にケースバイケースなので答えられません。

Q9 「個人情報保護法」について、アートの分野で何か問題が発生した事例はあるか? また、この法律についてアート関係者が気をつけねばならないことは?

私の知る限りでは、問題が発生した事例はありません。一番気をつけるべきは、アート関係者以外の場合と同じく、個人情報が入ったパソコンをウイルスに感染させないことです。
とはいえ、最近は個人情報保護に過敏になるあまり、アートプロジェクトの参加アーティストに対して、そのプロジェクト中に得た芳名帳などの個人情報を1年で破棄するように求めるといった例もあるようです。しかし、私見では、アーティストがアートのサポーターの個人情報をわざわざ破棄するというのはナンセンスだと思います。個人情報保護法は個人情報を安易に流出させる危険を回避する法律であり、そこで個人情報を保持しておくことに法律的な問題は一切ないと断言できます。さらに言えば、アートの公的な役割を考えれば、そうした発想が出てくること自体が不思議なことだと私は思います

Q10 最近「著作権」についての議論がかなり盛り上がっているが、議論の焦点を知りたい。どこが私たちと関係あるポイントなのか、どのポイントに注目していればよいのかわからない。

詳しくは「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」にまとめられていますが、著作権の延長が却って流通を妨げたり新たな創作を妨げているという主張と、著作権を延長することの権利の絶対性をその相続者にまで末永く守るという主張が、どうにも交差しない点で議論がすれ違っています。保護期間延長問題については海外に足並みを揃えるべきという議論が根強いですが、海外で保護期間の延長を決めた国でも、アメリカ以外ではいまだに批判が強いということも指摘しておきたいと思います。

Q11 絵画を購入した。作家はまだ生きているが、著作権は作家と所有者と、どちらにあるのか?所有者が、印刷物にその絵画の写真を自由に掲載してよいのか?

基本的には著作権は作家にあります。また、一般公開されたことがない作品であれば、その作品の展示権も作家にある場合があります。出版権についても、通常の場合はいまだに作者にあると考えるべきでしょう。このように、著作権はたくさんの種類の権利をまとめたものであるので、どの権利が誰にあり、あるいは消尽しているのか、注意が必要です。

(2007年11月15日)

アートに関する法律入門 目次

1
イントロダクション/「法」とか「法律」とか「憲法」ってなんだろう?
2
法知識はアート関係者にとっての護身用「伝家の宝刀」/「表現の自由」と「表現の萎縮・改変」
3
「著作権」の歴史的背景と今日の問題
4
「契約」、「許可」、「肖像権」について
5
「アートと法律」に関するQ&A
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