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日本の寄付に必要な5つのこと

 日本で寄付が進むには何が必要でしょう。ここでは5つのポイントをあげます。

1.寄付税制の拡充

 「税金が減るから寄付をする」という人はあまりいません。日本ファンドレイジング協会の『寄付白書2010』(経団連出版)でも、「寄付先を選ぶ際に重視すること」に「税の優遇措置があるから」と答えた人は複数回答でも2%しかいません。しかし、2011年に寄付税制が大幅に改正されたことで、これは少し変わるかもしれません。
 これまでは、NPO法人のうち寄付税制優遇の対象となる認定NPO法人になることは米国などに比べて極めてハードルが高いものでしたが、「新しい公共」の実現に向けてその基準も緩和されました。
 これまで所得控除しか認められていなかったのが、税額控除も認められるようになりました。ここでは細かな計算方法は省きますが、これまでは所得控除だったため、500万円位の所得の人だと10万円寄付をしても1万円に満たない程度しか返ってきませんでした。これが税額控除を選べるようになり5万円ほどが返ってくることになりました。
 こうなると、税金を収めるよりも寄付をしようという考えの人が増えるのかもしれません。残る課題は寄付控除も年末調整で受けられるようになればいいということです。NPO側からの改正要望は出されていますが実現していません。源泉徴収の制度がある以上、こちらも実現することが望まれます。

2.寄付教育

 日本ではボランティア教育は行われていても寄付に関する教育はほとんど行われていません。未来の寄付者を育てること...重要です。日本ファンドレイジング協会では、公立小中学校での「寄付の教室」を始めました。すでに25教室を実施していますが、いつも児童・生徒の皆さんは熱心に寄付について考えてくれています。こうした授業が全国で実施することが望まれます。

3.NPOのファンドレイジング力の向上

 支援を集める側にも努力が必要です。日本ファンドレイジング協会の設立記念シンポジウムに来賓として来られた米国のファンドレイジング協会(Association of Fundraising Professionals [AFP])前会長のポーレット・マエハラ氏は、「ファンドレイジングの基本は"Ask"と"Thanks"だ」とおっしゃいました。そのどちらにおいても、ただやみくもに行っていては支援者の拡大にはつながりません。人材、予算などの資源に限りのあるNPOだからこそ、効率よくファンドレイジングを行う必要があり、そのためのノウハウやツールの活用を熟知していなければなりません。

4.NPOの信頼性の向上

 寄付とは、自分の大事なお金をNPOに託すものですから、そのNPOを信頼していなければできません。そこで、NPO自身の情報開示の姿勢が問われます。寄付金の使途をきちんと報告する、団体の事業・会計報告をきちんと行い、それを適切な方法でわかりやすく公開するといった努力が必要です。
 また、「団体の顔が見えない」というのも不安になります。機関誌だけではなく、ホームページなどで職員の活動風景やメッセージなどをできるだけ公開していくことで「顔の見える団体」になることが大事でしょう。

5.寄付市場の可視化とルール化

 株式市場をイメージしてください。株式市場にはルールがあって、それにあった銘柄だけが取引されます。また、刻一刻と変化する株価は個別にも全体的な指標としても公開され、新聞やテレビで誰もが知り得るものです。そうした環境があるから、アマチュアの個人投資家も株式投資をしてみようかと思いいたるわけです。寄付を「未来への投資」だと考えたら、また経済活動の1つだと考えたら、その市場には可視化とルール化が必要です。
 日本ファンドレイジング協会では、「寄付者の権利」「ファンドレイジング行動基準」を策定しました。そうしたルールを守っていただくことでファンドレイジングへの信頼性も高まることが期待されます。
 可視化については、これまで日本には寄付についての継続的な統計データがありませんでした。そこで日本ファンドレイジング協会では、毎年、『寄付白書』を発行しています。「日本人が、どこに、いくら寄付をしているのか」を継続的に統計調査することで、寄付市場の可視化に取り組んでいます。

 では、NPOはどういうポイントを押さえてファンドレイジングをしたらよいのか...、次回はそれを考えてみましょう。

(2012年2月15日)

おすすめの1冊

『寄付白書〈2011〉―GIVING JAPAN2011』 日本ファンドレイジング協会編
日本経団連出版
2011年

『寄付白書2010』の続編となる『寄付白書2011』が1月16日出版されました。
今回は、震災寄付と高齢者寄付という2つの特集を組み、昨年度版から引き続き、個人寄付・法人寄付、ボランティア、政策・制度、寄付ニュース2010なども最新情報としてアップデートしました。

ファンドレイジング入門 目次

1
さあ、はじめようファンドレイジング!
2
日本に寄付文化はない!?
3
日本の寄付に必要な5つのこと
4
ファンドレイジングの5つのポイント
5
アートの世界のファンドレイジング
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