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助成プログラムをめぐって



助成プログラムとプログラム・オフィサー

助成は「制度的」だと第1回でお話しました。ですから基本的な枠組みが最初に決まっているのがふつうです。具体的には、

  • 助成の目的(地域の芸術活動を盛んにする、人材を育てる、よい作品を生み出す、芸術を通じた交流を促す、・・・)
  • 対象となる地域(特定の地域限定、日本国内、世界中、・・・)
  • 対象となるジャンル等(特定の芸術ジャンル、伝統/現代、・・・)
  • 対象となる者(個人、団体、年齢やキャリアによる制限、・・・)
  • 対象となる活動(公演・展覧会活動、団体運営、研修活動、・・・)
  • 助成の期間
  • 助成の方法(助成金の交付、稽古場、楽器などの貸与、・・・)
  • 助成の規模(金額、件数、・・・)
  • 助成先の選定方法(公募、非公募、・・・)

などです。これらひとかたまりの枠組みを「助成プログラム」といいます。
 助成プログラムは、最初に掲げた「助成の目的」に沿って、いろいろな条件(経済的、法的制約など)を勘案して組み立てます。こういった企画をし、またこれらがちゃんと意図したとおりの効果をあげているかを検証するのがプログラム・オフィサーという専門職です。
 もうお気づきのように、助成プログラムとは小さいけれどもひとつの「政策」なのです。「政策」をつくるには基礎となるデータが要ります。ですからプログラム・オフィサーは、まず「何がいま必要なのか」を調査することになります。
 ただ、データといっても数字によって表されるものだけではありません。現場を見たり、さまざまな声を聞いたりするなかで浮かび上がってくるニーズを、丹念に分析することが、なにより重要でしょう。また単にそれをそのままプログラムに落とし込むのではなく、「本来こうあるべきではないか」という理念をきちんと持ち、「こういう助成がむしろ有効ではないのか」といった仮説をたてていくことも大切です。そのためには、海外も含めて現在ある他の助成プログラムが何を意図し、どういう成果をあげているかについても目配りをしておかなくてはなりません。
 このように考えただけでも、プログラム・オフィサーの仕事はなかなか奥の深いものであることがわかると思います。

アートを助成するのはなぜか

 さてここで、助成の目的についてもう少し考えてみましょう。政府にしろ民間にしろ、アートに助成するのは、それが何らかの形で社会に貢献することを期待しているからです。単に「アーティストがお金に困っているから」というわけではありません。助成する側は、助成先の肩越しに社会を見ているのです。
 では、助成する側は、アートにどういう形で社会に貢献してもらいたいのでしょうか? その答えは、それぞれの助成プログラムに書かれているはずです。あるプログラムでは、アート活動に地域を活性化する役割を期待しているでしょうし、またあるプログラムでは、日本文化のすばらしさを海外に発信する役割を期待しているはずです。子どもの心を豊かにしたり、コミュニケーション能力を高めたりする役割を、アートに期待するプログラムもあるでしょう。
 このようにいうと、「自分たちはよい作品を創りたいだけなのだけれど、それだけではダメなのですか?」という声が聞こえてきそうです。もちろんこれも立派な社会貢献たりえます。なにしろ、とてつもないアーティストや作品がまずないことには、いま言ったような貢献もできないのですから。私の財団などは、どちらかといえばそういう考えでプログラムを作っています。ただしその場合でも、なるべくその活動や作品を社会に広めていくような努力はしてほしいと思います。
 ところで、アートには、商業的に成り立たせることができるものも多くあります。たとえば音楽でいえば、J-POPなどは営利目的のビジネスとして成立する世界です。一方でオーケストラなどは、商業としては成り立たない世界に属しているといえます。これはオーケストラの努力が足りないからではなく、構造的な理由によるのです。もちろんよい音楽を聴き手に提供しようという気持ちはどちらも同じでしょう。どちらの世界のアートが上だとか下だとかいうことではありませんし、ひとりのアーティストが両方の世界で活動することも珍しくありません。
 ただ、商業的なアートの世界しか認めないとすると、利益を出せないアート活動は失敗者として市場から出て行くほかなくなります。もしそこに社会的価値を持った作品や活動があっても、資金的に行き詰って存続することができません。そこで、非営利で公益的なアートの世界があることをまず認めたうえで、これらについては寄付や助成で支え、発展させていこうというのが、多くの先進国でとられている基本的な考え方なのです。

(2010年2月15日)

※本シリーズは全4回の連載です。次回は「だれがどんな助成をしているか?」(2010年3月15日掲載予定)です。

おすすめの1冊

『プログラム・オフィサー ―助成金配分と社会的価値の創出』 牧田東一編著
学陽書房
2007年
『助成という仕事 ―社会変革におけるプログラム・オフィサーの役割』 ジョエル・J・オロズ著
明石書店
2005年

芸術文化助成入門 目次

1
助成とは何か?
2
助成プログラムをめぐって
3
だれがどんな助成をしているか?
4
芸術助成をめぐる問題点
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