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寄付税制とは

~個人が寄付をした場合の優遇措置


はじめに

 寄付税制とは、寄付をすることで社会に貢献したいと考えている人の活動を後押しするために、一定の法人に寄付をした人に税制上の優遇を与える制度です。

 税制上の優遇措置は、具体的には

(1)個人が寄付をした場合の税制上の優遇措置
(2)法人が寄付をした場合の税制上の優遇措置
(3)相続人が相続により取得した財産を寄付した場合の優遇措置

 の3つからなっています。

 第1回と第2回では税制上の優遇措置の内容を、第3回と第4回では、税制上の優遇措置を受けることができる法人として、認定NPO法人になるための要件を見ていくことにします。

 まず、第1回は、個人が寄付をした場合の具体例として、ある作曲家が、被災地のために楽曲を提供し、その著作権収入の全額を被災地のアート系のNPOへ寄付するという例で、個人が寄付をした場合の税制上の優遇措置を考えてみましょう。

1.税制上の優遇措置がない場合

<例1>
 ある作曲家が被災地に楽曲を提供し、その楽曲の提供により得た所得の全額を被災地のアート系のNPOへ寄付をすることにしました。
 楽曲の提供による所得金額は100万円で、その全額を被災地のNPO法人甲(認定NPO法人ではない)へ寄付をしました。

 この作曲家は、楽曲提供により得た所得金額の全額を寄付していますので、手もとにはお金が残りません。しかし、その寄付先が認定NPO法人や一般社団法人、一般財団法人、任意団体など税制上の優遇措置がない団体の場合には100万円に対して所得税や住民税が課税されます。これでは、寄付をしようという気にはなりません。そこで、一定の要件を満たしている法人に寄付をした場合に、税制上の優遇を与えて、寄付を後押ししようというのです。

2.個人が寄付をした場合の税制上の優遇措置(概要)

 個人が、国や地方公共団体、特定公益増進法人(公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人等税制上の優遇を受ける法人の総称)や認定NPO法人等に寄付をした場合には、寄付金控除を受けることができます。寄付金控除の対象となる金額は、「寄付をした金額 − 2,000円」です(ただし、総所得金額等の40%が限度)。この「寄付金控除」は、従来は、「所得控除」の方式しか認められませんでしたが、平成23年度の税制改正で、「税額控除」による方式も認められることになり、いずれか有利な方法を選択することができるようになりました(ただし、税額控除が受けられるのは、認定NPO法人、一定の証明を受けた特定公益増進法人に限られます)。

3.所得控除方式

「所得控除」による方式は、この金額が、医療費控除や配偶者控除のように、所得金額から控除されます。所得税は、これに税率をかけて計算しますので、所得控除方式の寄付金控除は、税率が高い人(高額所得者)であればあるほど効果が高くなります。

<例2>
 ある作曲家が被災地に楽曲を提供し、その楽曲の提供により得た所得の全額を被災地のアート系のNPOへ寄付をすることにしました。
 楽曲の提供による所得金額は100万円で、その全額を被災地の認定NPO法人乙へ寄付をしています。
 この楽曲の提供による所得以外の所得金額は1000万円、所得控除は100万円、寄付金控除は所得控除方式で受けるものとします。

 例2では、税制上の優遇措置がある認定NPO法人乙に寄付をしていますので、100万円から2,000円を引いた99万8千円が所得金額から控除されます。つまり、寄付をした金額が、必要経費のような扱いができるということです。楽曲の提供による所得金額が100万円あっても、寄付をした金額が必要経費のように所得金額から控除できますので、楽曲から生じる所得部分は課税の対象になりません(正確には2千円だけ課税の対象になります)。

例1(寄付税制なし)例2(所得控除)
I 所得金額
楽曲: 100万円
その他: 1,000万円
合計: 1,100万円
  楽曲: 100万円
  その他: 1,000万円
  合計: 1,100万円
II 所得控除 100万円
寄付金控除: 99万8千円
その他: 100万円
合計: 199万8千円
III 課税所得金額
(I − II)
1,000万円 900万2千円
IV 所得税額
III × 33% − 1,536,000円
1,764,000円 1,434,600円

 寄付金控除があることによって、最終的にこの作曲家が納める税金は、1,764,000円 − 1,434,600円=329,400円違ってきます。この329,400円はどのような金額かというと、寄付金控除の99万8千円 × 33%(この作曲家の所得税の税率)になります(端数処理の関係で少しずれます)。つまり、所得控除方式の寄付金控除は、その人の税率によって、最終的に所得金額に影響する効果が違ってきます。例2のように税率の高い場合には、所得控除方式でも効果が高いですが、税率が低い場合には効果が薄いと言えます。そこで、新たに導入されたのが、「税額控除方式」です。

4.税額控除方式

 「税額控除」では、寄付金控除の対象となる金額が、その人の支払う所得税から直接控除されますので、その人の税率(所得金額)に基本的に影響されません。ただし、全額控除ができるわけではなく、「寄付をした金額 − 2,000円」の40%、あるいは、所得税額の25%に限られています。
 また、認定NPO法人等のうち都道府県または市町村が条例で指定した法人に寄付をした場合に、住民税でも寄付金控除が受けられます。住民税では、都道府県民税と市町村民税で合計10%の税額控除が受けられますので、税額控除方式を選択した場合には、最大で50%の控除を受けることができます。

<例3>
 ある作曲家が被災地に楽曲を提供し、その楽曲の提供による所得金額の全額を被災地のアート系のNPOへ寄付をすることにしました。
 楽曲の提供による所得金額は100万円で、その全額を被災地の認定NPO法人乙へ寄付をしています。
 この楽曲の提供による所得以外の所得金額は1,000万円、所得控除は100万円、寄付金控除は税額控除方式で受けるものとします。

 例3では、100万円から2,000円を引いた99万8千円の40%である399,200円が所得税額から控除されます。所得税額から控除できる金額は、本来支払うべき所得税額の25%が限度です。例3の場合には、本来支払うべき所得金額は1,764,000円ですので、その25%は441,000円で、399,200円よりも多くなりますので、399,200円を所得税額から控除することができます。
 所得控除を選ぶか、税額控除を選ぶかは、寄付者の自由です。例2、3では、最終的な所得税額が所得控除では1,434,600円、税額控除では1,364,800円で、税額控除のほうが有利になりますので、税額控除を選択することになると思われます。

例1(寄付税制なし)例2(所得控除)例3(税額控除)
I 所得金額
楽曲: 100万円
その他: 1,000万円
合計: 1,100万円
楽曲: 100万円
その他: 1,000万円
合計: 1,100万円
  楽曲: 100万円
  その他: 1,000万円
  合計: 1,100万円
II 所得控除 100万円
寄付金控除: 99万8千円
その他: 100万円
合計: 199万8千円
100万円
III 課税所得金額
(I − II)
1,000万円 900万2千円 1,000万円
IV 所得税額
(税額控除前)
III × 20% − 427,500円
1,764,000円 1,434,600円 1,764,000円
Ⅴ 税額控除 998,000円 × 40%
=399,200円
IV 所得税額
(税額控除後)
1,764,000円 1,434,600円 1,364,800円

個人が寄付をした場合の税制上の優遇措置のまとめ

控除方式控除される金額特色
所得控除 (寄付金の額※ − 2,000円)を所得金額から控除する。 税率が高い人(高額所得者)ほど効果が高い。
税額控除 (寄付金の額※ − 2,000円) × 40%を所得税額から控除する。ただし、その年分の所得税額の25%を限度とする。 所得金額にかかわらず基本的に効果が一定。

※総所得金額等の40%が限度。ただし、震災関連寄附金は総所得金額等の80%が限度

(2012年9月11日)

寄付税制入門 目次

1
寄付税制とは
~個人が寄付をした場合の優遇措置
2
寄付税制 その2
~法人、相続人が寄付をした場合の優遇措置
3
認定NPO法人の要件 その1:パブリックサポートテスト
4
認定NPO法人の要件 その2:その他の要件
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