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《想像力と、芸術と。》



 昨年7月、大雨で駅前の山が崩れ、数日間にわたってJR小出駅を含めた交通の要衝が立入禁止。逃げた逃げた。その土砂もどけないうちに10月中越地震で震度6×3回、震度5×2回。揺れた揺れた。こんなところに断層ってあったの? その一週間後に町村合併で小出という地名がなくなり魚沼市へ。そして混乱に拍車をかけた19年ぶりの豪雪3メートル超...。盆と正月が一緒に来るという話の例えはあっても、大雨と地震と大雪と町村合併が一緒に来るなんて聞いたことがない。世界の歴史は2001.9.11.によって区切られたという歴史観があるけれど、新潟県中越地方に住む私たちにとっては、2004年の以前と以後ではまったく違う世界になってしまったという思いが、今も確かにある。

04-01.jpg 地震:ホール周囲も地盤が沈下。本格復旧は今年5月以降になる見込み。

04-02.jpg 大雪:積雪はホールの玄関前で3m、市内の多いところでは4.5mに達した。


 でも、前回のリレーコラムで熊倉さんがお書きのように「文化施設炎上中」とならなかったのは幸いなことだった。次々にいただくお見舞い、メッセージ、応援の数々・・・本震のわずか4日前、当ホールで満場のお客様を輝かしいフルートの音色で圧倒したエマニュエル・パユさんは、「小出郷の皆さんの温かいご歓待を受け、その後あのひどい地震で皆さんの中に家を失ったり損害を受けておられる方があることを知り、ショックを受けています。」とメッセージを送ってくれた。共演した名ピアニスト、エリック・ル・サージュさんもまた、「小出郷文化会館での公演は、私たちのツアーの中で最も良かった演奏の一つでした。テレビでひどい映像を見たときは、とても悲しく思いました。」とその悲しみを共有してくれた。神奈川、石川、島根、茨城、東京、北海道、福岡など各地で小出郷文化会館ゆかりの皆様がチャリティ・コンサートを開き、「心のケアのために芸術面からのアプローチを」と寄せられた義援金は約500万円に達した。

 いただくばかりではない。1月末に当ホールでCDレコーディングを行い、急遽230人を集めてチャリティ・コンサートを行ったアメリカ人ヴァイオリニスト、ジョセフ・リンは、ステージの上から語りかけた。

04-03.jpg ジョセフ・リン:チャリティ・コンサートで熱演。(撮影:相田憲克)


 「年末にアジアで悲惨な災害が発生しました。今日のコンサートの収益金は全額魚沼市復興のために贈られますが、本日お集まりの皆様のご厚志を、NPO法人ピース ウィンズ・ジャパンを通じてインドネシアの復旧のために贈りたい。どうかご協力をお願いします。」

 するとロビーに置かれた募金箱に、次々に千円札が投げ込まれたのです。地震は目に見えなかった断層を地表に露にしましたが、目に見えなかった心のつながりもまた、明らかにしたのでした。

 今日の平穏が明日に続く保証は、何一つありません。でも痛みを分かち合うことができれば、私たちは決して孤独ではない。21世紀の世界に送るべきは、武器ではなく、痛みを分かち合うための想像力なのだと思います。

 想像力...これって、芸術の得意分野でしたよね、確か。

(2005年3月13日)

今後の予定

2005年5~7月
サロン・コンサート6回、学校訪問コンサート14回。
出演予定:古典四重奏団、福本信太郎、河村典子、白土文雄、ワルター・ギーガー、アリス=紗良・オット、稲岡千架、宝井琴梅、森下滋、池上英樹 他


■魚沼市小出郷文化会館主催公演

9/27(火)
《男+男+男が贈る愛の歌》
オペラティック・ナイト
出演:佐野成宏・堀内康雄・R.コルテージ

10/25(火)
《荘厳華麗なピアノの調べ》
アルフレッド・パール ピアノ・リサイタル

11/6(日)
《しなやかに、清新に。》
オフェリー・ガイヤール チェロ・リサイタル

11/27(日)
《指揮者なし、16人のソリストたち。》
アンサンブルBMV2001 ヨハネ受難曲

関連リンク

次回執筆者

バトンタッチメッセージ

[さまざまなシンポ等で市村さんを存じ上げておりますが、市村さんは私をほとんど
ご存じないと思われますので、なんだか気恥ずかしいのですが。あこがれの君に遠く
から送る手紙のようで(ちょっと違うか)]


市村様

市村さんの関係していらっしゃる北九州芸術劇場といえば、東アジアの中心。(東京
なんて、辺境ですよね。)
南からの春の便りを、首をながーくしてお待ちしております。
首を長くしておかないと、3メートルの雪で窒息してしまうものですから・・・。

魚沼市小出郷文化会館
榎本広樹 拝
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