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ネットTAMブログ特別企画
「トヨタ・エイブルアート・フォーラム その後の10年」
~エイブルアートの歩みと未来~(3)


【トヨタ・エイブルアート・フォーラム その後の10年】(3)
「つながる思い、ひろがる活動。」
 トヨタ・エイブルアート・フォーラムがスタートした当初、講師になった方々は、障がいのある人たちのアート活動の支援を自らの施設で始め、さらに広げようとしていった人たちです。障がいのある人たちや障がいのある子どもをもつお母さんなどが、社会に受け入れられなかった時代に、彼らの表現活動を支援したい、施設の環境を変えたいと、寝る間を惜しんで議論していました。これを第一世代というならば、その姿を見ながらシンポジウムやワークショップに参加していたのが第二世代です。この世代は、第一世代の情熱を受けながらも、エイブルアート・カンパニーのように異なる方法で事業を展開し、現在NPOの事務局長などを務め、各地域で次の世代となる若い人たちを後押ししています。第三世代は、土壌がある程度整ったところで参加していますが、活動を切り拓いていくというよりは、同じフィールドで一緒に歩み、学んでいる印象を受けます。時代によって障がい者そのものの様子や受け止められ方は変わるので、これからは、新しい課題に向けて新しい取り組みをしていくと思います。とはいえ、第一世代の諸先輩方の思い、障がいのある人たちの生み出す表現に対する深い愛情は並々ならぬものがあります。私たちも大事なところは同じように向き合いたいと思います。
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1996年東京シンポジウム(第1回)
次回から、トヨタ・エイブルアート・フォーラムをきっかけに、花開いていった各地の活動について、4地域4団体のキーパーソンが登場します。おたのしみに!
柴崎さんの語りとともに、次回から登場する人たちをご紹介します。
<静岡県浜松市>
【NPO法人クリエイティブサポートレッツ】 理事長 久保田翠さん
 久保田さんは、素晴らしいマネジメント力で、いまや静岡にはなくてはならない存在になっています。アートが社会とどうかかわれるのか、社会がどういうニーズを持っているか、絶えず社会の流れをよみ、アートの力を通じたまちづくり、政策提言をしながらソーシャル・インクルージョンの視点から事業を実行していらっしゃいます。
■団体概要:あらゆる『ちがい』を乗り越えて、すべての人たちが互いに理解しあい、共生できる寛容性のある社会づくりを目的に、2000年より活動を開始、2004年にNPO法人化。2008年より、個人の熱意、やりたいことをアート的な手法を通してサポートを行うたけし文化センター事業をスタート。2010年から、障害福祉施設アルスノヴァを設立。障害のある人、子どもが毎日通う場と、様々な人たちの居場所づくりに取り組んでいる。
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2001年浜松シンポジウム
<滋賀県甲賀市>
【やまなみ工房】 施設長 山下完和さん
山下さんは施設長という立場ながら、自ら作品をのせて車で全国各地をまわり、展覧会をしているという、とてもアグレッシブな方です。「エイブル・アート界の兄貴」のような存在で、ネットワーク化や次世代の支援者育成に力を入れています。アートの専門家に頼らず、人間としてスタッフが障害のある人の人生に向きあったときに花開く、創造性の素晴らしさを現場からまざまざと見せてくれます。
■団体概要:やまなみ工房に通う60名の人達にはそれぞれに「これをすることで私は幸せである。」があります。やまなみ工房の"日常の中のある日"を覗いてみると、一人一人がそれぞれの方法で"特別な自分"を毎日表現しています。
 描きたいように描いてみよう。つくりたいようにつくってみよう。君は君らしく生きてみよう。誰かに言われるがままではなく、自分のために。あるがままの自分が認められ存在できる場所で、自由に自分の可能性に向かう事が出来ればどんなに嬉しい事でしょう。自分らしく過ごす日常の中で生まれた僕の色、私のカタチ。やまなみ工房は、様々な表現から感じる個々の本質を大切に、感性とは何か、豊かさとは何かを考え、それぞれの可能性、そしてHAPPYが無限に広がる事を目指しています。
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2003年総合セッション「アートは社会の未来への投資」
 
<高知県高知市>
【アートセンター画楽】 代表 上田祐嗣さん
 上田さんは、人間の創造力を探求するという信念をもって、障がいのある子どもたちの創造性の問題に常に向き合っています。デザイン事務所の社長という本業があるのですが、その仕事に多くの実りをもたらすとして、障がいのある人たちが表現する現場「アートセンター画楽」をつくってしまった、という方です。国内でもユニークなスタンスだと思います。
■団体概要:アートセンター画楽は、高知県のおへそといえる日本3大がっかり名所の一つ「はりまや橋」から歩いて5分ほどの場所にあります。トヨタ・エイブルアート・フォーラムin高知の3年の活動を経て障害者アートの拠点として常設されるアトリエを確保するため平成16年に開設しました。現在、小学生から最高齢62歳まで約90名がメンバーとして登録。幅広いアーティストが通って思いおもいに創作活動を楽しんでいます。
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2001年高知シンポジウム
<福岡県福岡市>
【NPO法人まる】 設立者 吉田修一さん、代表理事 樋口龍二さん
福岡のNPO法人まるは、いまやエイブル・アートのムーブメントのけん引役のような存在です。地域全体が豊かにならないと、障がいのある人たちにとっての生きやすさ、幸福というのは得られないと、トヨタ・エイブルアート・フォーラム福岡の実行委員を引き受け、以後、九州地域のアーティストや支援者の掘り起しをしています。障がいのある人も自分たちの地域の当たり前の友人として、共に幸せに生きられる土壌をつくるために、行政や企業と連動し、さまざまなプログラムを実施しています。
団体概要:1997年に福祉作業所「工房まる」を開所し、障害のある人と社会をつなぐツールとして、「人が豊かに生きること」を創造し、自立のあり方を考えることを目的に創作/表現活動をはじめる。2007年にNPO法人化と同時にソーシャル・インクルージョンの理念をもとに、新たなコミュニティの創造を目指した対外的事業「コミュニケーション創造事業『maru lab.』」を本格始動し従来の施設運営と2つの事業を行う。
対話や経験を繰り返すための「時間」、人が集いそれぞれの可能性を広げる「空間」、考えやおもいを共有し刺激しあえる「仲間」という3つの「間」づくりをコンセプトとして社会に新たな価値を創造し続けている。
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2000年福岡ワークショップ
柴崎由美子(しばさき・ゆみこ)さん
NPO法人エイブル・アート・ジャパン事務局長

1997年より奈良・たんぽぽの家で障害のある人たちの表現活動にかかわる。障害のある人とコミュニティのための「たんぽぽの家アートセンターHANA」(奈良)のディレクター(20044月~093月)を経て、障害のある人のアートを社会に発信し仕事につなげる「エイブルアート・カンパニー」本部事務局(2007年~)。NPO法人エイブル・アート・ジャパン事務局長(2012年~)。

・取材日:2013年10月22日
・取材地:NPO法人エイブルアート・ジャパン事務局(3331 Arts Chiyoda内)
・取材先:NPO法人エイブルアート・ジャパン 事務局長 柴崎由美子
・取材者:トヨタ自動車株式会社 社会貢献推進部 山本真由美、ネットTAM運営事務局(公益社団法人企業メセナ協議会 松木まどか、佐藤華名子)