ネットTAM

ネットTAMブログ特別企画
「トヨタ・エイブルアート・フォーラム その後の10年」
~エイブルアートの歩みと未来~(1)


芸術環境KAIZENファイルFileで取材した、エイブルアート・カンパニーによる「アート×福祉×ビジネス」では、障がいをもつ人の可能性をアートによって大きく広げる仕組みをご紹介しました。取材を通じて、アートと福祉を取り巻く環境がこの20年の間に大きく変化し、障がい者アートの活躍の場は格段に広がりを見せているように感じています。このような活動が活発化してきた背景には、障がいのある人のアート活動を支える人たちや団体の存在が欠かせず、そのネットワーク構築の基礎を築いたのが「トヨタ・エイブルアート・フォーラム」です。1996年から7年間にわたり34都市において63回プログラムを実施しました。

今回TAMブログ特別企画として、"障がい者アートを支える人"のネットワークが各地にできるモトとなった、「トヨタ・エイブルアート・フォーラム」にスポットを当てて、障がい者アートのうつろいと、そこから花開いたさまざまな活動を事務局ブログで連載します!

1回は、芸術環境KAIZENファイルFile4にもご登場いただいたNPO法人エイブル・アート・ジャパンの柴崎さんに、トヨタ・エイブルアート・フォーラムについて、当時の社会的背景も交えてお話しいただきました。

【トヨタ・エイブルアート・フォーラム その後の10年】(1)

「トヨタ・エイブルアート・フォーラムとは?当時の社会背景とともに」

1995年に生まれたエイブル・アート・ジャパンは、障がいのある人たちのアートを軸に活動することで、人間を幸福にするというミッションを持っています。提唱者である播磨靖夫氏(※1言葉を借りれば、「アートには人を幸福にし、人が生きるのを助ける力がある」という考えがベースにあります。1995年は阪神・淡路大震災やオウム真理教のサリン事件があり、心が不安な時代でした。経済成長の時代が終わり、人が自分にとって本当に大切なものや人生の質について、関心を持ち始めたときでもありました。播磨は、「人が幸福であることを問い続けるNPOとして、障がいのある人たち自身の力や彼らが生んだアートを通じて、社会に新しい芸術運動と風を起こさなければならない」と、強く感じたそうです。東日本大震災後の現状を考えると、社会状況は当時と似ている気がします。

こうした時代だったからこそ、障がいのある人たちのアートを軸にした新しい芸術運動が必要とされ、それを応援する追い風もあったのではと感じています。1995年にエイブル・アート展が大阪で開催されたとき、多くの企業の皆様がエイブルアート・ムーブメントのミッションに共感してくださって、たくさんのご協力をいただきました。翌96年に、その協賛団体の1つであったトヨタ自動車と、このような活動を全国に広めるためにフォーラムを開催していきましょうというお話が生まれ、トヨタ・エイブルアート・フォーラムを実施することになりました。

ワークショップ2.pngのサムネール画像

トヨタ・エイブルアート・フォーラムは、地域ごとに実行委員会を組織し、3年間を1つのプログラムとして継続的な支援を行う仕組みになっていました。1年目は100200名ほどの規模でシンポジウムを開催し、障がいのある人たちのアートや、それを通した社会の変化や動きについて、現地の方たちのニーズを一緒に掘り起こしていきました。2年目は、障がいのある人たちのアート活動をサポートすることに関心のある人を対象に、絵を描いたり展示の方法を学ぶワークショップを実施しました。障がいのある人たちのアート活動を自立させるためには、その周辺の方たちのかかわりや、支援への関心を促すことが重要だということを体験してもらうためです。3年目は、地域の土壌を耕していくためのプログラムを現地の実行委員会に企画・実践してもらい、それに対して支援をしました。こうして1年で5か所程巡回し、7年間で34都市、合計63回のプログラムを実施しました。地域ごとに実行委員会をつくることで、障がいを持つ人のアートを支える人が各地域に生まれ、その地域でのネットワークづくりも形成されていきました。

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私は、ムーブメントの発信源であるたんぽぽの家に97年から所属していますが、どの方をカウンターパートとして実行委員会をつくればその地域に必要なプログラムになるか、フォーラムごとに入念に準備していたことをよく覚えています。カウンターパートとなる方と実際に会い、その地域での課題や夢や希望を話し合い、その方の背中を押し、困ったときには駆けつけるなど、直接的なフォーラム運営以外のこうしたことを、とても丁寧に進めていました。

このインタビューのあとに寄稿していただく方々は、そうしたつながりが深い方たちです。トヨタ・エイブルアート・フォーラムをきっかけに、各地で新たな活動を起こし、今では、地域や現場の若い人たちを育てています。確実に世代をつなぎながら、障がいのある人たちのアートを軸にした活動や、活躍の現場を切り拓いていこうとしています。華々しくはないけれども、大切な活動だと思います。(次回へつづく)



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柴崎由美子(しばさき・ゆみこ)さん
NPO法人エイブル・アート・ジャパン事務局長
1997年より奈良・たんぽぽの家で障害のある人たちの表現活動にかかわる。障害のある人とコミュニティのための「たんぽぽの家アートセンターHANA」(奈良)のディレクター(20044月~093月)を経て、障害のある人のアートを社会に発信し仕事につなげる「エイブルアート・カンパニー」本部事務局(2007年~)。NPO法人エイブル・アート・ジャパン事務局長(2012年~)。


※ 1:播磨 靖夫(はりま・やすお)氏
財団法人たんぽぽの家理事長。新聞記者を経てフリージャーナリストに。障害のある人たちの生きる場「たんぽぽの家」づくりを市民運動として展開。アートと社会の新しい関係をつくる「エイブル・アート・ムーブメント(可能性の芸術運動)」を提唱。「ケアする人のケア」「アートミーツケア学会」など、ケアの文化の創造にも取り組んでいる。平成21年度 芸術選奨 文部科学大臣賞(芸術振興部門)受賞。



★ヘンテコかわいい?!エイブルアート・カンパニー期間限定ショップHUMORA巡回★
12
5日(木)〜25日(水)※@東京 A/A gallery
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001900/木〜日・祝のみ限定開催
122425日は特別営業いたします。
http://www.ableartcom.jp/

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15日(日)~1217日(火)@宮城・せんだいメディアテーク
10
002000/17日のみ1600まで
http://goodjobproject.com/