ネットTAM

「鳴子温泉"生きる"博覧会」に行きました

先週末、宮城県大崎市の鳴子温泉で開催されていた「アートが私にチカラをくれる【鳴子温泉"生きる"博覧会】」に参加した。
「トヨタ・子どもとアーティストの出会い2009in仙台・宮城」も同時開催されており、その担当でもあるトヨタU野に誘われて。ちらり説明を読んだ「朗読遠足」というプログラムはなんだか魅力的だったし、前から気になっていた「農とアート」がテーマのプログラムもあるらしいし、何より温泉は魅力的!即、鳴子行きの誘いにのった。
013.jpg公式サイト

生きる。生活する。生き抜く。生き続ける。生命。再生。チカラ。誕生。アートを通して 生きることのさまざまをこの土地で見つめよう。ゆたかに生きるって どんなことなのか、ここで考えよう。九つの泉質のお湯が、そこかしこから噴き出す鳴子温泉郷。きびしくやさしい自然と、弱くて強い人間たち。 だから、ここで"生きる"博覧会。 (「鳴子温泉"生きる"博覧会」パンフレットより)


実は、当日現地でプログラムパンフを開くまで、この博覧会の全体像のことはよくつかめていなかったのだが、今回参加できて本当によかった。この土地の魅力がぎゅっとつまった、すばらしい企画だった。

9日の「朗読温泉:鳴子に生きる女たち」は、鳴子の5つの温泉地で生きる5人の女性の物語を聞く、朗読プログラム。鳴子5湯にある、復活した廃校や、温泉の山荘、公共温泉が会場だ。朗読家・渡辺祥子さんの語りに、作曲家・大場陽子さんの音楽。5人の女性にインタビューを重ねて物語(朗読台本)を綴ったのは、博覧会プロデューサーの吉川由美さん。

uoo.JPG
再生した鬼首山学校で

aadhaaao.JPG
早稲田湯で

aiiaoiuacaan.JPG
東鳴子・旅館大沼山荘で
鳴子に根をはって生きてきた女性たちの人生模様が温かく細やかに語られ深く心に響いた。ある土地に暮らす、ごく一般の方の生きざまが、こんなにも鮮やかに心に残るなんて。会場にはその女性たちもいらしていて、朗読後に紹介され、涙を誘った。一人ひとりの"生きる"があって、鳴子という地域が脈々と続いているんだなあと実感。同時代アートの醍醐味と、地域に根ざしたアートプロジェクトの可能性を感じた。

iuacai.JPG
旅館大沼の女将さん


10日は「LIFE CAFE 野菜ソムリエ 真夏の茶事」でお昼をいただく。東京で勉強後、鳴子温泉川渡に帰郷した野菜ソムリエ大澤恵里子さんのプロデュース。生きる、心が元気になる、健康になる、をテーマにした、地元の食材を使った見た目も美しい料理の数々を堪能した。

10日午後は、「鳴子の米プロジェクトmeetsアート 農家と語る"よく生きる"」。鳴子の鬼首(おにこうべ)地区が4年前から取り組んできた鳴子の米プロジェクト(耕作放棄地が激増する中で、山間地で米作りを続けていくための仕組みづくり)を題材に、「よく生きる」とは何か、コミュニティーとは何か、これからの日本、アートが地域にもたらすことなどを、農家の方含む地元の方々やアート関係者、農作業実習に来ていた中央大経済学部の学生さんたちなど、みんなで考えるひと時となった。

caemeetsycye.JPG


忘れられないのが、パネリストであり米プロジェクトのプロデューサーでもある民俗学者の結城登美雄さんが語った日本の農業の現状。農家の時給を計算すると179円なこと。もし日本が100人の村だったら農家はそのうちたった3人なこと。それは70代、60代、40代後半の3人なこと。10年後には3人が1人になる、つまり99人の食料を1人の農家が支える状態になること。

こうした問題を、一人ひとりがどのように受けとめていくか、どういうことが「よりよく生きる」ことなのかを、降りしきる大雨の音を聞きながら、考えることとなった。生きるか死ぬかの問題を前に、アートはどのようにいられるのか、アートの本気も試されるという、司会の吉川さんの問いかけもドシっときた。そんな話の後に食べた、会場で配られた鳴子のお米のおにぎりは、忘れられない味となった。

aiaiiyyeyeaeao.JPG
ゆきむすび


狭い世界のことしか知らず、世の中の大事なことをほとんど知らない筆者にとっては、こうしてアートをきっかけにいろんな土地に行き、地域のことを通して、世の中のこともちょっとずつ見えてくる気がしている。ほんとうにありがたい。メセ協の仕事で文化の領域からの地域再生「ニュー・コンパクト」に取り組んでいるが、もっともっと多くの地域を実感しないとな、と思いながら鳴子を後にした。

もちろん、温泉も堪能しました!
鳴子の皆さん、博覧会関係者の皆さん、事務局スタッフ&ボランティアの皆さん、すばらしい企画、お疲れ様でした!

         021.jpg
今回は中身に集中してしまい、写真を取らずじまい...。唯一「トヨタ・子どもとアーティストの出会い」ワークショップの完成作品「目浴」のみパチリ。ガラス作家の村上耕二さん、お世話になりました。  ※8/21註:いただいた写真を追加掲載しました。

【おまけ】
こんなお土産をいただきました。「こけしマッチ」。鳴子はこけしのまち。いいなあ。一部U野のひよこマッチと交換。楽しい。
        03.jpg

この記事をシェアする: