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夏休みの読書に>『僕と演劇と夢の遊眠社』(高萩宏著)

夏休みまっただ中の方へ。
のんびり休みの読書におススメの1冊をご紹介します(おもしろくて一気に読めてしまいますが)。
去る7月23日に刊行された、高萩宏さんの著書『僕と演劇と夢の遊眠社』(日本経済新聞社)です。スタジオジブリの『熱風』に連載されていたときから楽しみに読んでいた方もいるかと思いますが、このたびその連載が大幅加筆改稿されて出版されました。

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先日出版を祝う会が開かれたのですが、以下、その時のご案内より。

高萩さんは現在、東京芸術劇場の副館長を務めておられますが、演劇人としての仕事の始まりは学生時代に劇団「夢の遊眠社」を野田秀樹さんらと立ち上げられたところにさかのぼります。
「夢の遊眠社」の活動と発展は八十年代の伝説となりました。九十年代はじめの衝撃的な解散に至るまでのその急速な拡大の歴史を 制作者としての視点から高萩さんが綴られたのが本書です。
その後高萩さんは、国際フェスティバルの運営、米国留学を経て、東京グローブ座、世田谷パブリックシアターを拠点に国内外にわたって幅広く活躍なさり、現職に至るわけですが、高萩さんが、その活動の原点ともいえる「夢の遊眠社」を語る本書は多くの演劇関係者にとって示唆に富み、励ましに満ちたものであると思います。


80年代の遊眠社の熱気をオンタイムで知らず、ご著者についても「世田パブの高萩さん」から始まっている私にとっては、本書で綴られていく遊眠社の発展--地底深くにエネルギーを蓄えていたマグマが一気に爆発していくような感じ--や、高萩さんの仕事の軌跡に、「そうだったんだ!」と裏側を知るおもしろさを感じっぱなしでした。

遊眠社のことだけでなく、商業演劇と非商業演劇のこと、演劇界と公的助成、日本の現代演劇と海外ツアー、企業スポンサー、芸能界との距離感、鑑賞者開拓、IT化以前の制作の仕事の様子など、演劇の制作・マネジメントについていろいろ考えさせられる内容が満載。
「ああ、こういう流れで来て、今こういうことになっているんだなあ」と、今あることの"背景"を知ることができました。

演劇とは少し離れたところにいる方にこそ、読んでほしいなあと思いました。舞台をつくる、役者さん以外の人たちの存在が見えてくるはず。

...それにしても、高萩さんの詳細な記録には驚きました。細かい数字をきっちり残しておられることに、たぶん多くの方がびっくりされるのでは。

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